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 ふらっと、遠征がしたくなった。

 ぼくが文学フリマ京都にでようと思ったのは実のところそんな理由である。これが初めての遠征となり、その後文学フリマの開催されるすべての都市を訪れることとなるわけであるが、そんなことなど当時は露ほども考えていなかった。ただ、先述したとおり、「順列からの解放」の頒布実績が予想以上に弱く、これほどまでの出来のものをなぜ、と思ったこと、そして土地が変わればあるいは、という藁にもすがるような思いがなかったわけではない。とにかく、はっきりさせておきたいのは、ぼくは文学フリマ京都の第1回に参加した時点では、現在ほど自分の創作および広報のスタイルを確立できていなかったというところである。ただ、当時からシーズンレースは行っていた。それも、今のように確固たる意思というものはなく、ただ読んでいたものに評点を付けることによって、自分はなにが読みたいのか、どういう書き手を好きなのかというのが見たい、くらいの動機であったように思う。そう、ここまでのぼくは、創作界隈に毛ほども興味がなく、ただ自己の目的を達成するためにどうすればよいかというのをひたすら考えていた。そしてそれは自分の小説それ自体を磨くことであるとずっと考え続けていた。つまり、シーズンレースが「それだけでは足りないのではないか」と考える発端になり、またこの文学フリマ京都への遠征をきっかけに、「かれ」は書き手の界隈の存在とその地域性に気がついた。そういう意味では、この文学フリマ京都への遠征がなければ、こんにちのひざのうらはやおは存在し得なかったであろう。

 ということもあり、次の部分では文学フリマ京都で印象的であったことをいくつかつらつらと書いていこうと思う。

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