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 この作品は、ぼくの中では非常によくできた短編であったように思う。ぼくの考え得る限りの好きな要素を全力で詰め込んだ結果、「空アンソロジー」に並べられる世界観のひとつとして、空に浮かぶ架空のコロニーを作り、独特の世界観の中である種の管理社会を描いた。その補完として「幻石」に兄弟作が存在している。どちらの主人公も、管理社会に迎合しがたい出自を持っていながら、仕方なく社会に迎合せざるを得ない生活を送っているという点が共通している。主人公となるキャラクターの設定に関して、ぼくには一定のくせがあることをここで認めなくてはならない。すなわち、社会に迎合しがたい属性を持っていながら、粛々と社会生活を送っているという肖像を持つ主人公が極端に多い。特に、近年ではその傾向が強くでている。それを図らずも象徴した二篇であった。これは創作に対する姿勢からも、ある種仕方のない部分でもある。ぼくは主に社会に対する強い感情をぶつける、というものを描きがちである。逆に言えば、それが個々人の関係性に向くというものは非常に少ない。それが、多くの書き手と異なっている部分ではないかと思う。

 これら非現実的な要素の強い作品群の中でもっとも完成度が高いと自負しているのが「V ~requiem~」である。この作品は大学時代の先輩がとあるライトノベルレーベルの新人賞に応募した作品を下読みしながら思いついたプロットを元に、師匠、たる咲祈氏の作品をいくつか読んだことが発端となって書き上げられた。ゆえに、その世界観に独特の寂寥が出ており、特に終盤に待ち受ける主人公たちの運命はそれを強固にする作用がたしかにあった。しかしながら、ぼくの作品としては非常に珍しくプロットをすべてそろえてから書き始めたため、「結論」ありきの小説になってしまっている部分が否めない。中途の場面描写にそれがよく現れている。復帰した暁には、同じ世界線の物語の刊行に併せてリライトを試みたいと考えている。

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