ヒーローズコンセプト 機械仕掛けの囚人達
アンギットゥ
プロローグ
「はぁ……はぁ……はぁ……」
息づかいが荒いことを自覚する。
立っているのも辛い。このままゆっくりと横になりたい。目を閉じれば、ぐっすりと眠れそうだ。微睡みのなかで永久に安らぐのも悪くはない――駄目だ! 休むわけにはいかない!
ブルーフォースは首を振るって、意識を保つ。
——どうして俺は立っている?
そんな自問に返す言葉は決まっている。
「大切な人を守るためだ!」
三ヶ月前、突如現れたザ・クロックと呼ばれる組織。オーバーテクノロジーのロボット兵士——クロックロイドを大量投入し、世界征服を企んだその組織に世界は蹂躙された。
ザ・クロックの攻撃で大勢の人が死に、傷つくのを目の前で見てきた。
家族、そして幼なじみ。
大切なひとたちが傷つく姿を想像したとき、戦わない選択はなかった。
——どうしてお前は戦える?
「iPoweredを身に纏っているからだ」
いまの自分はiPoweredという特殊なパワードスーツを身に纏っている。クロックロイドを圧倒し、人々を守ることが出来る。
iPoweredを渡してくれたのは謎の組織、インタグルド。
どの国にも属さない組織で、ザ・クロックに対抗できるただ一つの組織。それだけで十分だった。
インタグルドの仲間達とブルーフォースは戦った。
その仲間達はいま、ほとんど生きていない。
視界の片隅に映った、仲間達の骸。
ほんの三ヶ月の付き合いだ。
一緒に戦場で戦い、帰還して笑い合い、同じ釜の飯を食べただけの間柄だ。
だがこの三ヶ月は、人生で一番濃厚だったとはっきりと言える。
その濃厚な三ヶ月をともに過ごした仲間達は、ほとんど生きていない。
——なぜ生きていない?
「殺されたんだ、グランドコンプリケーションというクソ野郎にな!」
殺された、目の前にいる人物に。
その顔はわからない。
フルフェイスのヘルメットを被り、全身を戦闘用の強化パワードスーツで固めているからだ。その両手にはショーテルという湾曲の刃で構成された刀が握られていた。
名前はグランドコンプリケーションと呼ぶ。
ブルーフォースは右手に握ったロングソードに力を込め、宣言する。
「あんたを……倒す! 仲間の仇討ちをさせてもらう!」
「それはこちらの台詞だ……俺以外の部下は全滅だ。組織は終わりだ。せめて貴様だけでも道連れにしてやる!」
グランドコンプリケーションはショーテルを構える。
ブルーフォースも両手をだらりと下げているが、無業の位という構えだ。
「ロボット兵士のクロックロイドを使い、世界を征服しようなんて馬鹿げたことを実行しようとした時点でこうなる運命だったのさ!」
「貴様にはわからぬ! いま私が世界征服をしなければいけない理由が!」
「知りたくもねえよ!」
「私を倒しても、戦いは終わらない」
「人生は戦いだ! 終わりなんてないさ!」
「そういう意味ではない……私を倒しても、奴ら……! あやつらに、O学会に、この世界を明け渡すならば、私が支配したほうがどれだけいいか!」
「O学会?」
グランドコンプリケーションの声は震え、脅えていた。イレブンという単語から推察するに、学会という言葉は。
しかし『オー』とはなにを意味する?
「貴様にはわからぬ。知る必要すらない! いま私の手で打たれる貴様には!」
「なにを焦っている? あんたはなにを背負っているんだ?」
「お喋りはここまでだ! 貴様を殺す! 来い!」
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