第2話 意外と知らないSTD(性行為感染症)

 一話が衝撃的だったため、二話は少しおとなしめの話題で行きたいと思って……いたのですが。


 ゆきのさんがぶっ込んで来た話題はSTD(Sexually Transmitted Diseases)。

 つまり性感染症でした!



 いきなりシモネタかい!?



 でも確かに最近の若い人、知らない人多いんですよね。

 夜の救急外来に若い女性が来て「お腹が痛いんです」と。

 なんか悪くなった生ものでも食べたのかと思って消化器内科でカルテを作ろうとすると、頑なに婦人科を希望する。

 夜の婦人科は、産科当直が片手間に見る程度なのです。

 で、うちの病院は大きなNICUを抱えているので、それに伴って産科ももれなく忙しい。

 しかも帝王切開とかで手術室に入ってたらいつ出てくるか分からない。


 それでも婦人科がいい理由を聞くと、彼氏がSTDだった、とか。

 ちょっと症状はあったけど、酷くなかったから様子を見ていたとか。


 結局夜の救急外来では、婦人科の診察は出来ない事もあるのですが、代わりに研修医が痛み止めを処方して翌日近所のクリニックに行ってもらうことが多いんです。

 STDは数時間処置が遅れても命には関わりませんのでこう言うことになります。


 まっ直ぐに歩けない程に痛みを訴える人もいます。


 ほっとくと、ホントに怖いんですよ!!

 女性は不妊の原因になったりします。




 そして以下。

 ゆきのさんのお話。例によって→は朝樹の突っ込みです(笑)




 私はゆきの。

 スタローンに憧れていると言ったら「もうなっています」と言ってもらえて嬉しい普通の女の子。よく聞かれるのですが前世は船坂弘らしいです。


 ↑前回の話を読んでスタローンでは無かったらあなたは何者ですか。

  そしてそう言って喜ぶ女性は、彼のヨシ○サオリ選手くらいではないのでしょうか?



 あるとき、もうすぐ結婚!というお友達とガールズトークをしていました。(ギャグではありません)


 ↑前回も突っ込もうかどうしようか悩んだんだけど、あえて今回は突っ込みます。

  「ガールズ」トークなのか? 

  普通の「女の子」なんですか?! いや「普通の」にも突っ込ませてくれ――!! 


 そのとき半分冗談で


「いま梅毒とか何気に流行ってて超怖いし、結婚前にいちおう検査受けとけー」

とお友達(以下Aちゃん)に話したら……。


「バイドクってなに?」   ←結構こう言う人は多い。マジ。


 私の時が止まりました。


「え、梅毒は梅毒だよ……聞いたことあるっしょ?」


「ない。なにそれ」


 再び私の時が止まりました。


 え、成人済み、もうすぐ結婚する人で梅毒を知らない人がいるの?!

 嘘でしょ?!


「ほらあの体にぶつぶつができる病気」 ←それだけじゃない。いろいろある。

「知らない」

「初期症状がジベルバラ色粃糠疹いべるばらいろひこうしんとそっくりだから、ジベルバラ色粃糠疹の人が悲観して病院に飛び込んできてほっとして帰る病気」


 ↑むしろジベルバラ色粃糠疹を一般の人が知ってることに驚きだよ。

 ※関係ありませんが、ジベルバラ色粃糠疹は炎症を起こしバラ色でうろこ状のかさつきを伴う小さい皮疹ひしんが皮膚に多数できる軽度の病気。



「もっと知らない。ななっちは病気になりすぎ」


「いや私もジベルバラ色粃糠疹も梅毒もなったことないよ」


「じゃあいいじゃん」


 よくない!!


 それから、Aちゃんに梅毒のことをとくとくとご説明いたしました。

 このあたりは本職の朝樹さんにぶん投げるとして……。


 ↑ はーい。病気の説明は最後にまとめてやります。


「で、それ治るの?」


「治る。抗生物質で簡単に」


「じゃあやっぱいいじゃん」


「でも一生『私は梅毒にかかりました』って証明してくれるワッセルマン氏反応、通称ワ氏反応ってのが血液に出るよ。今はインプラント入れる時も梅毒からHIVまで持ってないか検査されるし、妊娠したら 絶 対 検査されるよ。

 で、梅毒って性病だから、そこでうっかり旦那にばれたら……」


「なにそれ、マジ?!」


「マジです。ちなみにC型肝炎も治っても抗体反応が出るから注意ね。C型肝炎は輸血とか手術でうつる人の方が多いからそれで話は終わるけど」


「梅毒」


「性病」


「……検査行くわ」


「保健所なら基本、匿名、無料で梅毒、C型肝炎、エイズ、全部やってくれるから保健所おすすめ」(注:自治体によります) ←まず電話で確認をお勧めします。


「病院は?」


「自覚症状がないと自費。病院にもよるけど1つの病気持ってるかの検査で7,000円くらい?強制じゃないけど、普通は連絡先も必要かな」


 ↑ 全く自覚症状がないと言うと自費になるので、かゆみがあるとかちょっと症状を言うと診断名を入れてくれる。

 全くの自費で検査全部しようと思ったら一万以上することもあるので注意。大きな病院に行ってしまうと初診料だけで五千円とか取られます。(うちは紹介状がないと五千円。クリニックは安いはず)


「……献血してくる」


「それだけはやめろ。

 そういう人が増えたせいで輸血後の感染症の有無を教えてくれることはなくなった。感染してても黙って血が捨てられるだけです。だいたいね、検査でもウイルスや菌が検出されないブラインド期ってのがあるんだから、献血は検査がわりには 絶 対 使うな!」(現在はウイルス型の白血病のキャリアのみ、根絶のために連絡が来ます)


「ちょ、意味わかんない!」


「病気にかかったばっかのときの血だと検査をすり抜けて、菌とかウイルスの入った血をばらまいちゃうことがあるの。だから献血の人もそれだけはやめてー!って言ってる。

 保健所ならタダだし匿名なんだから、頼むから保健所行ってね」


「わかった。でも本当に匿名?」


「うん。一回検査結果を間違えて教えちゃったけど、匿名で連絡先がわからないから、心当たりがある人は頼むから保健所に連絡してください、と新聞の一面にのるくらい匿名」


「アホかよ!でも納得した。行ってくる」




                   ※※※




 後日、友人は


「大丈夫だった!」

「周りの子みんな知らなかったから教えてあげた!」


 と笑顔で連絡をくれました。


 よかったけど……あー、だから、性感染症が戦後第二の爆発期に入ってるんだなーって納得しました。


 ちなみに淋病は局部以外に目や喉にも感染します。性感染症は治っても女性に妊娠しづらくなる、という後遺症を残すこともあります。


 ↑妊娠しづらくなる、程度じゃ済まないよ……


 だから、みんな、恋人ができたらレッツ保健所!






 と、言うことでございました。


 結構怖いんですよ、STD.


 では各論。

 詳しい病気の解説です。



①梅毒は最早メジャーです。江戸時代の遊郭の話では外せないエピソードですよね。

 ドラマの「仁」なんかでも出てきました。

 今は抗生剤で治ります。数も減っています。


 感染してから症状が出るまで:3週間~3ヶ月程度 治療期間:2~3ヶ月程度

 第1期は性器に痛みをともなわない硬いしこりができ、第2期になると全身(特に手足)に小さな斑点が多数出てきます。

 男女とも症状が出ないタイプがあり、この場合は専用の血液検査で判明することが多いようです。


 ちなみに自分だけ治療しても、パートナーが未治療だった場合、自分もまた感染します。これをピンポン感染といいます。(大マジ)


 治療は二人で行きましょう!  ←フォント大




②クラミジア(咽頭の感染も含む。咽喉も含むんだよ!)

 これが今結構増えています。十代・二十代で全体の六十%位を占めています。三十代まで入れると八十%だよ。予防しようよ! 怖いのはエイズだけじゃないんだよ!!


 感染してから症状が出るまで:1~4週間程度 治療期間:最低2週間

 感染する可能性が非常に高い性感染症(STD)です。

 感染すると、男性は尿道にむずがゆさをおぼえるようになります。

 女性は帯下が増えて腹痛を起こしやすくなるものの、感染に気づかないケースが多いようです。そのため、早期に発見することが重要になります。

 ほっとくと男性だと副睾丸(精巣上体)、女性だと子宮や卵管がおかされて、妊娠できなくなったりします。

 ちなみに痛いらしいです。歩けない程痛みを訴えてくる人は、この可能性が高いんです。



③淋病(咽頭の感染も含む)

 これも若い人に増えているSTDです。全体の半分弱位が十代・二十代。


 感染してから症状が出るまで:2~7日程度 治療期間:最低1週間

 オーラルセックスによってうつることが多い性感染症(STD)です。

 感染すると、男性は排尿の際に痛みが走り、濃い黄色の膿が出ます。

 女性はおりものが多くなるものの、通常は痛みを感じることがありません。感染に気がつきにくいため、注意が必要です。

 ほっといたら男性だと副睾丸(精巣上体)、女性だと子宮や卵管がおかされて、妊娠できなくなったりします。



④尖圭コンジローム

 この辺になって来ると、若い人の割合は少し減ってきます。それでも十代・二十代で全体の四十五%。……あれ?あんまり減ってない?


 感染してから症状が出るまで:1ヶ月~1年程度 治療期間:症状によって異なる

 尖圭コンジロームは、性器や肛門のまわりにイボができる性感染症(STD)です。

 自覚症状がない場合が多いのですが、性器にかゆみや痛みを感じることもあるようです。

 電気メスなどによる焼却や、抗癌剤軟膏の塗布などによって治療します。



⑤性器ヘルペス

 割合的にはだいぶ減ってきます。十代・二十代で全体の25%位ですが、これは総数が多いので気をつけなければいけないことには変わりありません。

 ちなみに痛い病気です。


 潜伏期間:3日~1週間程度 治療期間:症状によって異なる(何度でも再発の可能性あり)

 ヘルペスの病変部と接触することにより発症する性感染症(STD)です。

 男女とも性器に小さな水泡が多数でき、痛みとかゆみが続きます。

 ヘルペスに一度感染してしまうと、その後はウイルスを死滅させることができません。ただし、再発を抑える治療を行うことは可能となっています。


 年代別%の数字は厚労省の平成23年度の資料から、

http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/seikansenshou/dl/leaf01.pdf 「モテ期にこそ(予防)スル男」より。



 代表的なSTDはこの位でしょうか?

 後、感染経路がSTDだけではないのですが、気をつけなければいけない感染症です。



⑥B型肝炎

 これは感染したら洒落になりません。最悪劇症化すれば命にかかわります。


 感染してから症状が出るまで:1~6ヶ月程度 治療期間:2~3ヶ月程度

 B型肝炎ウイルスの感染によって発症します。ワクチンによって予防できる性感染症(STD)です。

 発病の初期は体がだるく、吐き気や頭痛、尿の色が濃くなるなどの症状が出ます。

 全身に黄疸が出るようであれば入院が必要で、尿は更に濃褐色になり、醤油のような色になります。



⑦HTLV-1

 あまり知られてはいないウイルスですが、これは白血病や神経系の病気を引き起こす怖いウイルスです。

 母乳を通じて子供にも感染します。


 感染してから症状が出るまで:数十年 普通の白血病より治療への反応が悪いです(つまり効きにくい)

 HTLV-1は感染しても、多くの場合、健康保菌者キャリアーになるだけで、発病することはありません。しかし、一部の方は発病し、半年から2年ほどで死に至ります。



⑧C型肝炎

 これも洒落にならない感染症の一つ。昔に比べて良い薬が出来て入るが、まだまだ厄介。


 感染してから症状が出るまで:2週間~3ヶ月程度 治療期間:半年~1年程度

 C型肝炎ウイルスの感染によって発症する性感染症(STD)です。性行為による感染は少なく、主に 血液を介して感染します。

 C型肝炎は、放置しておくと「肝硬変」や「肝臓癌」に移行する可能性があります。

 自覚症状が軽く、感染に気づいていないケースが多いため、注意が必要です




⑨AIDS

 言わずと知れたSTDで一番気になる感染症。


 感染してから症状が出るまで:3ヶ月~数年程度 治療期間:人によって異なる

 ヒト免疫不全ウイルス(HIV)が免疫細胞を破壊し、免疫不全を起こす病気です。

 HIVに感染してAIDSが発症するまでは、健康保菌者キャリアーになるだけで、外観上は健康な 状態と変わりません。

 しかし一度発症すると、急激な体重の減少、著しい寝汗、下痢などの症状が続き、数年で死に至ることもあります。

 発症を抑える薬の開発が進んでいます。検査して陽性反応が出れば発症を抑える薬があるので、検査はしましょう。保健所が匿名で無料でやってくれます。事前に電話して下さい。



 解説が長くなっちゃいました。

 結構種類があるんですよね。


 で、予防なのですが……


 『ヤらない』


 と言うのが一番だと思うのですが、これは却下ですよね(笑)


 せめて『特定のパートナーとしかヤらない』だったらどうですか? 


 無理? そうですか~……。


 と言うのはまぁ冗談として。

 推奨するのは、


『コンドームを着用する』


『出血のおそれがある性行為をしない』


 この二点ですかね。


 血液ってね、怖いんですよ。

 どんな感染症持ってるか分かんないんです。


 道で血を流した人が倒れていても、救急隊とか絶対素手では触りません。

 私達病院スタッフも一緒です。


 ちなみに私はいつ何があっても対応できるように、人工呼吸用のマスクと手袋はバックに入っています。

 その位手袋=感染予防って大事なんです。


 あとですね、早期発見も大事です。

 治療が遅れれば、それだけ症状が悪化していきます。


 逆にいえば、早めに治療すれば、そこまで酷くはなりにくいって事です。


 異常があったら、パートナーと二人……で早期に受診しましょう。


 ……それでパートナーの浮気が発覚しても、このエッセイでは一切責任はとれない事は明記しておきますm(_ _)m



 全くの余談ですが、アフターピルと言う物を御存知でしょうか?

 ヤッちまった後、72時間以内なら服用すれば妊娠しにくい、と言う薬があります。

 責任が取れないのにヤっちまった人は、翌日産科のクリニックに行って薬を貰いましょう。

 夜に大きな病院に言っても、そんな薬は置いてません。72時間猶予はあるので次の日で十分です。ただ、保険は聞きません。自由診療になるので値段はばらつきがあると言われています。事前に電話で確認するのも良いでしょう。ただ、これも100%ではありません。データにばらつきがあるのですが、一説には80%とも60%とも言われています。


 この話からも分かる通りです。


『コンドームを着用しましょう』

『コンドームを着用しましょう』

『コンドームを着用しましょう』


 ヤるなとは言ってません。


『コンドームを着用しましょう』




今回は以上です。


文責:朝樹




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