帰り道

森乃 梟

Case1 オレの場合

 学校の帰り道、

「お前、オレのコト、何とも思ってないだろ?」

唐突に訊いたオレの失敗。

返事は

「うーーーん。」


 大失敗! 自分のコトを気に掛けて欲しいからこその質問だった。しかし、白とも黒ともつかない返事は、なんと解釈すれば良いのか判らない。


いっそ、

「オレのコト、嫌いだろ?」

とでも訊けば良かったか? 

いや、待て。

「うん!」

と即答なんかされたら、ダメージがでかい。


それなら、

「オレのコト、好きか?」

…なんて、訊けるわけねぇよな。


「なぁに、黙り込んでるの?」

「え? いや、だからあの…。」

「変なのぉ。」


 唇をとがらせて言うなよなぁ。


「ねえねえ、私のコト、好きでしょ?」

「うん。」


しまった! 即答しちまった!


「うんうん。よしよしっ!」


 あーあ、バレちまった。

なんで返事しちまったんだ?

これで弱味を握られ…?


「あんたって、素直だから好きヨ。」


 えええっ?

「それは一般的な《好き》だろっ。」

「違うんだなあ。」


 段差をぴょんと飛び降りて、鞄を持ち直すと彼女は言った。

「特別の《好き》ヨ。」


 人差し指を立てて唇に当て、しぃっと言う仕草をした後、小さな声で

「二人だけの ヒ・ミ・ツ ね。」


 それだけ言うと、彼女はオレを置いて駆けて行ってしまった。



        終わり

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