お狐ばけーしょん

磁中

白崎志月(仮名)より。敬愛するお狐さまへ。




 白崎志月しらざきしづき、十六歳。もうすぐ十七歳になる高校二年生。趣味は音楽ゲームと読書。ライトノベルという定義のあやふやな小説を愛したい中二病患者である。

 堂々と胸を晴れるわけではないが、小説を書くことを中学一年生の頃から続けている。一番長く続いた趣味だ。


 週に一度の登校日ですら行かないただの常識知らずが、一人のお狐さまを知った話。

 ただ、それだけ。





 ただただ寒いだけで苦手な十二月。とある小説家の方とのコラボ配信で僕はお狐さまに出会った。

 美少女と美少女が並ぶ画面。流れるコメント。挙動にあわせて揺れて、動く少女たち。メガネとヘッドフォン。そしてメガネと獣耳。

 本山らのを初めて知ったのはその時だった。

 アルバイトのためにリアルタイム視聴は叶わず、アーカイブを見返した僕。はじめはその小説家の方が目当てだった。その方が作る世界が好きで、ゲームが好きで、キャラクターたちの勝ち方が好きだった。だから作者に興味を持って、配信を見た。

 多分、一番は声。次いでその声で紡がれる言葉が好きになった。"好き"か"どうでもいい"かの二択しか持たない僕は、とても単純に本山らのを推しにしていた。

 ツイッターフォロバかえってきたときは二度見したしスクショしてツイートして喜んだしLINEでも友人に自慢した。


 らのちゃんはお狐さまで、人間に化けてライトノベルを布教している。


 僕は、それが本当の事だと信じている。

 そのほうが面白いから。


 人間界にやってきたお狐さま。人の姿に化けてまで好きなものを広めたいと言うその気持ち。ただ一人の女性となって、好きなものを好きだと語るその姿。

 もっとはやくその存在を知り、応援したかったと思う。過ぎたことを悔いても意味はないのだけれど。

 それでも、そう思ってしまうほどにらのちゃんは視聴者と仲良しなのだと感じた。

 配信のチャット欄。画面に流れるコメントと、ユーザー名。違う日の配信を見ても流れる同じ名前に、ただ安っぽく「すごいな」と思った。


 そして僕は、『らのちゃんとお話がしたい』という目的のために、小説を書く時間を増やした。その目的があれば、僕がほしいものがかける気がした。

 "今"の僕の原動力は、本山らのなのだ。


 出会ったその日から、活動を応援してその中で僕好みのライトノベルを見つけられるのが楽しくて、嬉しい。らのちゃんの語るえもえもポイントに共感したくて仕方がなくて、ライトノベルを買い漁る。その時間ですら楽しい。

 僕にとってらのちゃんは、幸せな時間をくれるお狐さまなのだ。


 お狐さまがらのちゃんになって一年。僕がらの担になってから約五ヶ月。

 これまでも、これからも、らのちゃんの活躍に期待しながら過ごしていくのだろう。


 お狐さまでも避けられない風邪などの体調不良には無理をせずにいてほしい。活動を楽しむらのちゃんが見たい。


 多くの中の、一人のらの担として、これからも応援させてください。お狐さま。



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