夢知夢能の夢物語
上条海輝
第1話 プロローグ
天才とはなんだろう?
『さあっ! 始まりました! 今学期最初の武戦! 序列八位 三年「迅雷(じんらい)」二ノ宮信司VS序列一位 二年「深い夜に(ミットナイド)」神崎真矢の対戦です!』
人より勉強が出来る事だろうか?
人より運動が出来る事だろうか?
『さて、今回の注目は、Bランクの二ノ宮選手の「迅雷」! 二つ名ともなっている、電撃を光速で射出する「迅雷」は認識してから避けるのは不可能! 今回の戦いでは神崎選手はこの攻撃に苦戦させられることでしょう』
いや、違う。
天才とは人と違っていることだ。
『対する神崎選手はなんと世界でただ一人の『』(ノー)ランク! あまりにも神力が弱過ぎるゆえ能力が測定できず能力名が「無知(むち)無能(むのう)」と呼ばれております!』
人とは違い勉強ができたり、人とは違い運動ができたりする人を、天才と呼ぶのだ。
『しかし! 神崎選手は「無知無能」にも関わらず、武戦序列一位! 一年の時から無敗を誇る怪物! 今回も「迅雷」を打ち破り、不敗神話を継続できるのか!』
人より異彩を放ち、人より偉才であり、人と異なるが故の異才。
『おっと! 試合開始のゴングと共に、二ノ宮選手、必殺の「迅雷」を放ってきた!』
そんな天才と呼ばれる人に聞いてみたいことがある。
『当たらないッ! 神崎選手! 光速の「迅雷」を避けております!』
天才と呼ばれたあなたは
天才と呼ばれて──人と違っていて────幸せですか?
『神崎選手! 「迅雷」の雨をかい潜り、二ノ宮選手に元に!』
もし、天才が幸せだと言うのなら、無能は不幸なのだろうか?
『拳一閃、ふり下ろした! 神崎選手の拳が、二ノ宮選手の顔面に!』
そうだと言うのなら、神に選ばれなかった無能はどうすればいい?
『二ノ宮選手が勢いよく転がり倒れる! 立てるのでしょうか?』
────あがくしかない。
『立てないッ! 試合終了! 勝者は神崎真矢!』
険しい道になるだろ。
何度も心が折れそうになるだろう。
そもそも不可能かもしれない。
それでも夢を見たいならあがけ。
『強い! とても無能力だとは思えぬ強さッ!』
手始めに、無能を極めてみよう。
『この男こそ無能にして最強! 誠心高校序列一位! 「深い夜に」神崎真矢!』
マイナスとマイナスをかけるとプラスになる様に、何かが変わるかもしれない。
『さぁ! 今年は神崎選手を破る相手が現れるのでしょうか? それとも昨年同様、神崎選手が序列一位を死守するのか!』
最後まであがき続ければ、見えるかもしれない────夢の景色を。
『この試合をもって、誠心高校 第108期武戦の開幕です!』
オレの無能をこう呼ぼう。
夢を知り、夢を能とする――――「夢知夢能(むちむのう)」と。
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