五 それはとても歪な形をしていて、
私は物を作るのが好きだ。幼稚園児だった頃は、よく土や粘土で遊んでいた。今も、身近にある物を素材にして自分の気持ちを表現したりしている。美術の成績はそこそこ良い。
けれど、そんなことにばかり時間を使っていられなくなった。将来のために、私は受験勉強をしなければならない。
「少しは息抜きも必要だからね。この庭にいる時くらいは、好きなものを作ればいいよ」
彼は私の気を楽にしてくれる。
私は、幼い頃のように土で形を作ってみることにした。
木が生えていない場所の土を掘り返し、柔らかくほぐし、こねていく。
いつの間にか、土は私の背と同じくらいの高さにまで盛り上がっていた。それはとても歪な形をしていて、何処にどのくらい枝を伸ばせばいいのか迷っている木のようだった。
私はスコップを握り、できあがった作品を殴りつけた。醜い木のような何かは、跡形もなくただの柔らかい土になった。
「すっきりしたかい?」
「うん」
受験勉強の鬱憤が少しだけ晴れたような気がした。
深呼吸をすると、さっきまで木だった土から本物の小さな草の芽がたくさん生えた。
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