醜い果実の子

楠ノ葉みどろ

プロローグ

 路地裏に入り、何度も曲がった先に、私の秘密の庭がある。

 大人の人よりも少し背が高いくらいの木が何本も立っていて、それぞれが綺麗なオレンジ色の実を枝に垂らしている。

 でも、一つだけ腐ったような暗い色の実があった。なんだか自分を見ているようで、私はその実のことを気に入った。同時に、憎らしく思った。


 私と同じように、この実は誰からも必要とされず、誰からも認めてもらえない。


 いつかきっと、周りを見返せる。土俵が変われば、他のどんな果実よりもおいしくなれる。

 そんな夢をいつも見ている。夢を叶えるための努力をすればいいのに、私はただ時間を浪費して、頭の中を旅してばかりだ。

 このままでは、その夢が現実になる日はいつまで経っても訪れない。でも、種皮を突き破って芽を出すことが怖い。

 果肉の内側に、いつまでも閉じこもっている。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る