白い部屋。

久保香織

第1話 。 “ねぇさん”

あの、澄んだ、澄んだ、クリアでブラウンの瞳が焼き付いて離れない。


そして、彼女たちといた僅かな時間に喝采を。




キギィー、バタンッ。ガッチャン。カツンカツンカツン。


まだなにも知らぬまま、きっとあの頃はなにも変わらないんだと思っていた。

4つのベッドに私と、もうひとり。なんの意味もなかった。独り言のように消えかけそうな声ははっきりと言葉になった。


「ねー、ねぇさぁん。ついてっていー?」

ふふっと、“ねぇさん”は笑って「ついてこられるならねー」と言った。

それだけ、それだけが2つの点を線にした。

それから、それからが4人の枕を騒がせた。


始まりは、私と“ねぇさん”の冗談のようなきっかけと連鎖だった。


“ねぇさん”はいつも急いていた。低カロリーのカフェオレを食事代わりに持っては朝から少し離れたテラスへと向かいひとり優雅にお茶をする、のだと思いながらその姿をベランダから見てると座った瞬間飲み干してはまたダッシュで戻ってくる。そして私に向かって笑うのだ。「韓流、始まるよ?」と。悪いが私は好きではない。だけどなぜか二人ポチポチ携帯を触りながら午前中のテレビを終える。ダイエットかテーマの私と“ねぇさん”は昼食は食べずに庭園散歩に出掛ける。勿論、食べたふりをして。


退屈で、窮屈で、そしでも安らかな白い部屋。




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