第56話 よ~ろれいっひ~

 アルプスの山々。スイスの雄大な自然。大きなもみの木。

 空から伸びる長いブランコに乗る少女。6秒周期で計算するとブランコの長さは27m、動画の静止画像から角度は70度と考えて、一番振れている時の高さ18m、最高速度は68㎞/h、それでも笑顔のハイジすげえ!


 じゃない、そういう話じゃない。


 話を戻して、彼女はその後ブランコから勢いもそのままに飛び降りて、近くを流れてくる雲(恐らく高積雲)にお腹からダイブ、しかもその雲のサイズは彼女よりギリギリ一回り大きい程度のオーダーメイドサイズ。

 そこにブランコの周期を合わせてダイブ、一歩間違ったらアルプスの山々から見下ろす尖塔(恐らく教会の鐘楼)に串刺しになるかもしれないリスクをガン無視して、堂々両手を開いて飛び込む様子はまさに圧巻、ハイジすげえ!


 だからそういう話じゃない。これは『だってクラシックファンなんだもん!』であって『科学部!』ではない(しかも『科学部!』完結してる)。


 アルプスの山々をバックに整然と並んだアルペンホルン奏者たち。

 白いシャツにサスペンダーで吊るした膝丈ズボン、白いハイソックス、チロリアン模様の刺繍が施されたベストを羽織って、頭には羽のついた帽子。


 アルペンホルン、金管楽器です。スライドもピストンもないので、倍音しか出せません。

 金管楽器ですけど本体は松などの木で出来てます。サックスの本体が金属なのに木管楽器であるのと同じ理屈ですね。


 さて、アルペンホルンが出てくるとどうしても一緒に出てくるのがヨーデルです。地声と裏声を短時間に繰り返して切り替える発声法で歌うという、めちゃくちゃに難易度の高い歌です。

 大抵は♬よ~ろれいっひ~……みたいな感じです。

 最初の彼女で言うと、「おじいさん」と「アルムのもみの木」に「おし~えて~」と指導を請うた直後に出てきます。


 ♪よ~れろ~れろひほ~ よ~れろ~れろひほ~ 


 実際はなんて言ってるか全然わかりません。そもそもこれに意味があるのかどうかもわかりません。もしかすると日本民謡で言うところの「あ、そーれ」「あ、よいしょ」みたいなものかもしれませんが私は知りません。本当にひどいエッセイです。



 さてみなさん、一つ前の55話、覚えていますでしょうか?


♪グーチョキパーで グーチョキパーで

♪なに作ろう なに作ろう


 ……の『フレール・ジャック』の話でした。これを短調に編曲して交響曲に組み込んだのがマーラー。交響曲第一番『巨人』第三楽章。

 なんとこの曲にヨーデルが入っているのです!


(短調で辛気臭くまったりと)

♪グーチョキパーで グーチョキパーで

♪なに作ろう なに作ろう

♪右手がチョキで 左手がグーで

♪かたつむりー かたつむりー


 ……の直後、♪よーろれっひっほ~、ってのが入ります!

 大袈裟に騒ぐほどの話でもないですね、結構有名な話です。



 だってクラシックファンなんだもん!

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