嫌われ者で学校一の美少女と俺の下僕生活

依澄 伊織

第1話こいつ何言ってんだ



俺ーー神尾 司ーーは中学時代根暗でボッチなアニメや漫画、ラノベが大好きな『オタク』だった(まぁ、今も大好きだが)。


高校ではボッチになることを避ける為、スポーツは才能が無いと分かっていたから、努力はしなかったが勉強は頑張った。漫画やラノベを買うのを我慢してファッション誌なんかも買った。そして、ファッションの勉強をした。


この努力の結果高校では頭が良くてセンスのあるイケメンという地位を築くことが出来たと言っても過言ではない。まぁ最後のイケメンは努力というか親に感謝だけど。


そして俺はこの地位を守るため『オタク』だということを隠していかないといけない。漫画ならまだ言い訳出来るかもしれないが、ラノベを買ってるところなんかは絶っっっ対に見られてはいけないのだ。

だから、いつもこの学校から遠くて俺の家の近くの本屋さんで買っている。


多くの生徒たちが待ちわびていた授業の終了を告げるチャイムが鳴った。

ほとんどの生徒の場合部活に行くか、帰るだろう。もちろん俺も帰ろうと教室を出ようとしたとき、俺は呼び止められた。


そんな訳で、俺は今、放課後の教室にいた。

今日は俺が好きなラノベの新刊の発売日だ早く買って読みたい、速攻で本屋に向かう筈だった。


だが、俺は俺の色恋沙汰に興味津々な友達に呼び止められていたのだ。

その俺の友達は俺の前の席に座っている男子と隣いる女子だ。


「聞いたよ、司くん。また告られたんだって?」


前の席にいる男。

こいつは俺の友達の橋本優吾だ。


なんでもかんでも首を突っ込んでくる、めんどくさい奴だがまあ根は、いい奴だ。


「ほんと、直しなさいよそのゲスな笑い。」


隣を向くとポニーテールの女の子。

俺がよく話をする女子の矢野ミエだ。


なかなか優吾に当たりが強いため、優吾とミエは仲が悪い。

俺と優吾、ミエは同じクラスだ。


「うるせえうるせえ」


コイツら、なんでこんなにケンカが悪いんだろう。

優吾は相当気になったんだろうか、しつこく聞いてくるので俺は答えた。


「振ったよ」

「マジか、今回も振ったのかよ。今月だけでもう4回だろ、告られたの」


贅沢な悩みだろうが、何回告られても告られるということに慣れない。

そう答えると隣にいるエミが口を開いた。


「司くんはさぁ、好きな人がいるの?」

「いや、いないけど。」

「じゃあ、何でオーケーしないの?俺だったら試しにオーケーしちゃうかなぁー」

「馬鹿ねぇ 、神尾くんにはアンタじゃ考えられないような事情があるのよ。」

「ああん、うるせぇぞこの野郎」


ホント、ケンカしないでほしい。優吾が睨んだら怖いんだよ。


それに付き合うと、俺が二次元が大好きなオタク野郎だといつかは知るだろ。その時イメージとの違いにガッカリするだろ!

ヤバイ考えただけでもイライラしてきた。


俺は心の中では優吾の質問に答えた。


「でもオーケーしないのが不思議っていうんなら、もう一人いるじゃない。オーケーしない人。」


俺たちは後ろを振り向くと巨乳で女優のようなスタイルに、目鼻立ちが整ったストレートロングの美少女が自分の席で本を読んでいた。


あ、今凄い大きなあくびをした。

毎日夜遅くまで勉強してんだろうなぁ。


彼女がもう一人のオーケーしない人。


この学校には俺と同じくらい目鼻立ちが整ったポテンシャルの高い、俺同様。そして頭も良い、確か毎回テストで上位10人に入っていた気がする、俺同様。そんな女子が一人いるそれが彼女、鷹宮亜矢だ。


だが、彼女はみんなから嫌われている、なぜなら、かなりツンツンしていて口が悪いからだ、それでも彼女は告られる、それほど彼女は可愛いのだ。


そこで優しそうなスキンヘッドのおじさん、山田が教室に入ってきた。


「神尾、今日の宿題を鷹宮と持ってきてくれないか」


そして、そんな面倒なことを押し付けてきた。

マジかー、鷹宮ってけっこう人に冷たいから嫌なんだよーなー。


「ごめん、遅くなりそうだから先に帰ってて」


俺がそう言って帰るよう促した。


「う、うん………気にしないで」


そうエミは頬をリンゴのように赤く染めて言った。


「じゃあまたねぇ司くん」「またね神尾くん」

「「被せんじゃねぇよ!」」

優吾とミエがハモった。ほんと、仲良くしてくれよ。


「うん、また明日」


俺は今回ばかりは満面の笑みでは笑えず引き攣った笑みで手を振りながら言った。


**********


空は日が落ちて、オレンジ色に染まっていた。外では部活も終了したのか校門から生徒が出ていた。


「山田ってさぁ、ハゲてるのを隠すためにスキンヘッドにしてると思うんだけど、鷹宮さんはどう思う?」

「あんなおじさんのことなんて、どうでもいいわ」


冷たい声でそう、返ってきた。

こいつ絶対会話する気ねぇだろ。そっちはいいかもしれないけどなぁ、こっち気まずくて、しょうがないんだよ!?


「あっ、鷹宮さんって凄いモテるよねぇ、昨日も告られてなかった?」

「あんな人達に告られても嬉しくとも、なんともないわ、もちろんあなたもよ、少し顔が良いからって調子に乗らない方がいいわ。」

「へっ、へーー」


なんだ、こいつムッチャ性格悪いじゃねぇか。このセリフを聞いて無性に腹が立ってきた。


いつもニコニコしていることを心がけている俺だが、この言葉には俺の笑顔も引き攣っただろう。


そこでちょうど目的の場所に着いた。二人っきりのこの状態に耐えきれず俺は用事を手早く済ませると


「あっ、あ、あの」

「じゃあ、さよなら」

「えっ、ちょっ」


と言って何か言いたげだった鷹宮を置いて俺はラノベを買いに家の近くの本屋に向かって行った。


*****


次の日の昼、俺は鷹宮に人通りの少ない屋上へ続く階段のところで呼び出された。


何か嫌な予感がするんだよなぁ。昨日も鷹宮何か言いたそうだったし。


優吾に昼食を誘われたが断って、鷹宮に呼び出されたところに向かった。


屋上に続く階段に着くと鷹宮は先にいた。

そして、鷹宮の顔は笑顔だが何か悪いことを考えているときの笑顔だった。


怖いハッキリ言って、ちょー怖い。

俺は息を呑んで鷹宮から喋り出すのを待った。

そしてその時がきた。


「あなた、私の下僕になりなさい」

「へっ?」


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