月宮雫のSS
月宮雫
プロローグ 雫のショートショート
「戯曲」を書くのが趣味。
そう、確かに言った。
言ってしまった以上、台本が書けないといけない。
物語みたいにするする読める、すっごい面白い台本。
それが「戯曲」なのだから。
でも……台本って何?
セリフが書いてあるだけのもの?
ト書きが必要? 心理描写はしちゃだめ?
え!? 「~と言った」とか書いちゃいけないの!?
段落? 表記の統一? 語尾合わせ!? 繰り返しにならないように!???
きちんと書こうと思えば思うほど、何が正しいのか、分からなくなる。
自分の決めた「ルール」に縛られて、がんじがらめになっていく。
頭の中で奏でられるストーリーは、一向に陽の目を見ず、ただ、
どうやったら『戯曲』っていうフォーマットに合わせられるか。
そんなことだけを考えて……
物語は、儚い夢の如く、消えていった。
そうだ! これは夢なんだ。
書き方なんてどうでもいいから、少しでも速く、沢山。
零れて消えてなくなる前に、書いて残さなきゃいけないんだ!
そう思うようになって、ようやく、気づいた。
たとえ内容が、ネットのラノベっぽくても、
掲示板にアップされているSSっぽくても、書き方がむちゃくちゃでも。
台本じゃ無いところで作者の言い訳をはじめちゃっても。それでいいって。
書くことに意味がある。
そもそも、戯曲って、「名作」っていうのと同じで、
自分から言うものじゃないって。気づいた。
それでも「戯曲」っていいたい年ごろなんだよ!
月宮雫は、一話完結のショートショートを、ここに書いていきます。
「ああ、これが、未来の黒歴史ノートになるんだろうな」
なんていう不安を、頭の隅っこに押し込めながら。
今の私を、未来に残すために――
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