気まま旅?

勝利だギューちゃん

第1話

ある日、俺は旅に出た。

誰にも知らせていない。

ひっそりと旅に出た。


行き先は決めていない。


風の向くまま、気の向くまま、

気まぐれな旅。


誰にも邪魔させない。

誰にも迷惑かけない。

それがルール。


まずは、どこへ行こう。


列車に飛び乗った。


ボックス席。

空いている席に、腰を下ろした。


平日の昼間なのか、客は殆どいない。

これでいい。


人は嫌いだ。


「さてと、のんびり行きますか。

まずは、どこへ行こうか」

時刻表を広げる。


俺は辺りを見回した。


漫画やゲームだと、ここで若い女の子が、声をかけてくるのが定番だが・・・

きょきょろ

いないな


俺は安堵のため息をした。


改めて時刻表を見る。

「えーと、今いるのが、ここだから・・・

どこがいいかな・・・」


「ここの温泉は、穴場ですよ」

「そうなんですか?」

「ええ、意外と人が少ないんです。いい温泉なのに・・・」

「不思議ですね・・・って」

俺は横を向く。


思わず、のけぞった。


「やっほー、奇遇だね。お兄ちゃん」

「お兄ちゃんじゃないよ。なんで、お前がここに」

そこにいたのは、俺の妹の、桜。


「お兄ちゃん、私に隠しごと出来ると思う?」

「いつから、知ってた?」

「一週間前から」

「どうして?」

「お兄ちゃん、そわそわしてたもん。で、何かあると思ってね」

うかつだった。


「とにかく、帰りなさい。父さんや、母さんも心配している」

「それなら、大丈夫だよ」

「その心は?」

「ここにいるから」

すると、父さんと母さんが、顔を出した。


「いけないな。親に黙って行くなんて」

「父さん、母さん、仕事はいいのかよ」

「忘れてないか?父さんと母さんは、教師だ」

「だから」

「お前と同じで、夏休みだよ」

教師って、そうだったか?


「さあ、家族仲良く旅行だ」

「そんな、勝手に決めるな」

「嫌なのか?」

「ああ、俺のきままな旅の計画はどうなる?」

「もちろん、没だ。とにかく、この夏休みは、家族で旅行、いいな」

「勝手に決めるな」

「お金、続くのか?」

その言葉に、俺は従うしかなかった。


学生の辛いところだ。


「お願いします」


こうして、家族旅行になった。


まっ、いっか


ちなみに俺の名は、隼人。

父さんは、富士男。

母さんは、みずほ。

で、妹が桜。


かつての、ブルートレインだ。

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気まま旅? 勝利だギューちゃん @tetsumusuhaarisu

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