第15話 ゴブリンキングを倒せ

 待ち伏せされてました。しかもご丁寧に回り込んで逃げ場をなくしてきました。

「仕方がありませんが戦うしかないようですね」

 そんなメルさんのつぶやきを聞きながら俺は冷静に相手の数を確認することにした。

 敵はゴブリンキングにその取り巻きのゴブリンナイトが十数体、回復役のゴブリンソーサラーが数体で遠距離攻撃のゴブリンアーチャーにゴブリンマジシャンが十体ずつ、そして有象無象の普通のゴブリンがわんさかといた。

 そんな感じで観察していると姫姉が声をかけてきた。

「優君あれ見て」

 俺は姫姉の指さす方向に目を向けた。

 そこには縛られて運ばれている女の人が数人確認出来た。

「あの、メルさんあれって」

「はい、想像の通りですよ。苗床として連れ去られたようですね。胸糞悪いです」

 はぁ、これで俺たちが逃げればあの人たちはゴブリンに代わる代わる犯されてしまうんだろうな。また一つ逃げられない口実が増えてしまった。

 最初から逃げるつもりも無かったけどさ。

「仕方がない。ここは腹を決めてゴブリンキングと殺し合いますか」

「しょうがないよね。おんなじ女性としてはこれは見過ごせないよ」

「騎士としてこの場は見過ごせません。お二人とも力をお借りしても良いですか」

「「もちろん!」」

 俺と姫姉はもとより戦うつもりだ。

 それにあんな胸糞悪い物を見せられて俺たちは助ける気満々だしな。

「では私はキングとその取り巻きを叩きます。お二人は出来る限り女性たちを助けるのを最優先に動いて下さい」

 メルさんはそう言うとゴブリンキングたちに向かっていった。

「さあ姫姉久しぶりに本気を超えた全力でやれるよ」

「そうだね優君。こんなのお祖父ちゃんと死合をするとき以来だよ」

 俺と姫姉は腰に差した刀を抜き一瞬の内にゴブリンたちの包囲網の中を蹂躙していく。

 俺たちは最短距離で最速のスピードで捕らわれている女性たちのところまでゴブリンたちを蹴散らしていった。

 そこからは一方的な戦闘になって行った。

 俺はユニークスキルの透視とスティールを使いゴブリンから心臓ともいうべき魔石を奪い盗り、姫姉は透明化インビジブル影移動シャドウムーブを使いゴブリンたちの影から影へ移動しその首を刈り取って行った。

 そんな戦い方でゴブリンたちを蹂躙していればすぐに敵は居なくなり、残りはメルさんが相手をしていたゴブリンキングとその取り巻きだけとなっていた。

「メルさんこっちは終わりました。助太刀します」

 俺はキングたちを相手に拮抗状態のメルさんの元に駆け寄り助太刀に行った。

「さすがですね、あれほどの数をお二人で倒してしまうとは」

 メルさんは少し驚きながらも安堵した表情を見せた。

「メルさんキングは俺が倒すので取り巻きどもを少しお願いしますね」

「待ちなさいっ、キングは討伐ランクBの魔物です!いくらユーマ様が強くてもそれは危険です!」

「大丈夫ですよ、俺のユニークスキルは殺しに置いては逸品ですよ、透視からのスティール!」

 俺は透視をしてゴブリンキングの核である魔石を見つけるとそのままスティールを使った。

 結果俺の手には拳位の大きさの魔石が握られていた。

「ほらね、これでキングはもう死にましたよ。さあ後は取り巻き共も同じように倒してしまいましょう」

「まさかそんな方法であのゴブリンキングを倒してしまうなんて」

 あまりの衝撃的な状況にメルさんは棒立ちになってしまった。

「仕方がない、俺が全部倒してしまいますよ」

 そう言い残し俺は残ったゴブリンナイトたちを一方的に屠って行った。

 ゴブリンナイトを倒し終わり昂ぶった気分を落ち着かせながらゴブリンに捕まって気絶している女性たちを介抱している姫姉の元にむかった。

「優君、これどうしよっか」

「ほんとにどうしよう」

 最終的に倒したゴブリンは二百体近くいて惨状が広がっていた。

「仕方がありません、西門まで行って事情を説明して兵士を派遣してもらいます。お二人はここで捕らわれていた女性たちを介抱してください」

 メルさんはそう告げると何かを呟き空に浮くと飛んで行ってしまった。

「「空飛べるんだ」」

 意図せず俺と姫姉は同じ言葉を呟いた。

 それから十分ほど待ちつつ捕まっていた女性たちを介抱していると、空からメルさんが飛んで戻って来た。

「お待たせしました。騎士を派遣して貰えることになりましたので後は向こうの騎士たちに任せて本日は王城の方へ帰りましょう。ギルドへの報告はこちらで行っておきますのでこのまま王城に向かいます」

「はい、疲れましたしそれでお願いします」

「私もそれでいいです」

「それでは馬車を用意いたしましたのであちらにお乗りください。少し揺れますが歩くより断然早く街に着きますので」

 俺と姫姉はメルさんに言われるがまま馬車に乗り街に帰って行くのであった。




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