その圧倒的センスで選んだ道は『冒険者』

うゆ

やらかし夫婦

 赤ん坊が目を覚ます。

 それをいとおしそうに見つめる夫婦が1組。

 赤ん坊が手を動かし笑顔になる。それに釣られるようにまた夫婦も笑顔になる。

 そんな一時ひとときもあっという間に過ぎて行き夫は仕事へと戻っていった。


 そんな円満な夫婦は辺境の貴族という地位を得ている。

 その夫婦は元Sランク冒険者。過去の栄光を讃え冒険者人生の引退に伴い王より領地を与えられ貴族となったのだ。

 また、使用人などはほんの僅かな人数しかおらず、「家のことなんだから自分たちもやる」という貴族のなかでも珍しい考え方なのだ。

 その夫婦を「リーヴェン夫婦」という。

 この王都でその名の者を尋ねられると皆、口を揃えて「やらかし夫婦」と答えるだろう。

 なぜやらかし夫婦などと呼ばれているのか、それを知るには地位譲渡の謁見を行った時まで遡る──


 リーヴェン夫婦は冒険者。

 そんな冒険者の大半は平民だ。平民は普通に生活していれば王への謁見などないのだ。それ故に謁見の作法など学ぶ機会がない。

 ...ここまで話せば粗方わかるだろう。そう、故意ではないのだが無礼を働いてしまったのだ。故意的ではないとはいえ無礼は無礼、しかも王に対してだ。どうなるかは魔物でもわかるだろう。即刻待機していた騎士団に捕ま...おっと、皆さん「やらかし夫婦」という呼ばれるほどの者はここで留まることなどないのです。

 今は少々落ち着いているが当時は血気盛んな冒険者、殺意などの類いには非常に敏感なのだ。

 さらに、作法を知らないリーヴェン夫婦はあろうことか

 

 のだ。

 騎士たちも流石に王との謁見時に武器を携帯する奴はいないだろうと油断していたのだろう、厳密に確認せず通してしまったのである。

 その騎士たちは後程みっちりしごかれたとさ.........

 さて話をリーヴェン夫婦が騎士団に囲まれているところへ戻そう。リーヴェン夫婦はタッグでSランクへと登り詰めた超実力者だ。個々でステータスが違うというのにも関わらず息の合った実力者たちの華麗な連携は対峙している騎士団たちおも魅了させるほどだった。

 そんな一瞬の気の緩みは実力者の前でしてはいけない。なぜなら格好のかっこうのまとになるからだ。そんな的たちは瞬く間に薙ぎ倒されてゆく。

 残るは騎士団長のみとなった。だが、流石は騎士団長といったところか、騎士団長は両手を挙げ「降参」の意を示す。相手の実力を測らず突っ込むことはしない。

 ここで戦いは一段落、だがその後ろでへっぴり腰になっている王が一人...この時王はこの感覚を二度も味わうことになるとは知らないであろう。騎士団長はへっぴり腰の王へと近づき手を取り椅子へと案内した。

 ここで話は地位譲渡へと戻されそのあとはなにもなく無事に終わった。まあ王が機嫌を損なわないよう必死に対応したからであるのだが.........

 まあこういったことがあったから「やらかし夫婦」と呼ばれているのだ。そして私は知っている...おばちゃんの噂好きは尋常じゃないと...

 さて、話は冒頭へと戻る。

 そんな規格外なやらかし夫婦の息子はこんな回想をしている間にすやすやと寝息をたてており、母親は魔法で洗濯をし、父親はせっせと書類を片付けている。

 さて、これから一体どのような物語が繰り広げられるのだろうか──

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