第46話 鈴奈の決意。
「………あれ?ライバル増やしちゃった?」
「増やしましたよ」
雪さんの呟きに、私は笑顔で答えた。
すると雪さんは、あっ!と口を両手で塞いだ。
多分の当の本人さんは心の内で呟いていただと思う。まあ、本音を隠せない雪さんだし、偶然心の声が漏れたとしても可笑しくない。
うん。
雪さんがやってしまったと頭を抱える。
でも、顔は嬉しそう。
「あは、ははは……ライバル増えて嬉しがるってどうなの」
「何で笑う、笑うなぁ!」
「だって、体は後悔して本人は嬉しそうで……ふふ」
「もぉ〜!兄妹揃って私を
まあ、でも私も人のことは言えないんだけどね。
私が悟ってからだけど、小三辺りに雪さんがお兄ちゃんのこと好きなのは知ってたのに、苦しくなるものと温かいものを感じた。
それが嫉妬なのに同じ人が好きな事が嬉しいと分かったのはその一年後。
嬉しいのはきっと、好きな人の魅力を分かってくれてるんだって感じたからだと思う。
外見だけで好きだったら違った。
雪さんがちゃんと内面も含めて好きなんだって分かったから嬉しかったんだって確信もって言える。
好きだけど、人を愛せないと分かってからネガティブ思考を滅茶苦茶持つようになって、それを分かってても雪さんは受け入れている。
江菜さんの場合は何か企んでる節があったから認められなかったけど、知ってからは素直に江菜さんの事が好きだし、認めてる。
お兄ちゃんがそんなことしてるなんて驚きだったな。私もまだまだだ。
雪さんもお姉ちゃんならとは思うけど、ちょっぴり江菜さんの方がお姉ちゃんなら良いなぁなんて思ってたりしてた。
そこに、今さっき雪さんのお陰でそこに譲れないものが 雪さんの焚き付けられた火で私に燃え移った。
でも、サポートしたい気持ちが消えたわけじゃない。
『なら両方やろ』(素直)
『難しいと思うんだけど』(私)
『私はどうでも…良いけど、お兄ちゃんを取られるのは嫌』(ツン)
『なら、色仕掛けで……』(セクシー)
『『『『やめろ!』』』』(鈴奈達)
『両方ではありませんが、共にありたいなら、方法がありますよ』(堅実)
『ほんと!』(私)
『ええ、しかも条件は満たしてます』(堅実)
『なら、それやろう』(素直)
『それを決めんのは、素直じゃねぇし』(ツン)
『そうねぇ、それは本人が決めないとぉ』(セクシー)
『私が?』(私)
『当然ですね。何せ脳内に鈴奈が五人いてもオリジナルは貴女なのですから』(堅実)
『そうだね……ちなみに愛じ…』(私)
『ではないです。お兄様を貶めるの?』(堅実)
『だよねぇ』(素直)
『なら、やってみたい』(私)
『決まりですね。では頑張って下さい』(堅実)
『…え!?内容は?』(私)
『私なんですから、考えくらい分かるでしょ』(堅実)
そうだった。
脳内会議に色んな私と話してても結局私なんだから考え知ろうと思えば知れるんだ。
……そっか。恋人とかは無理だけど、一緒にずっと側にいたい願いと二人のどちらかとくっつけたい思いは叶えられる。
そんなためにはやっぱりお兄ちゃんにも頑張ってもらわないといけないけど。
そこはサポートするし、うん。
「頑張りましょう、雪さん」
「え?うん」
「じゃあ雪さん一旦お帰りください」
「何で!?」
「お兄ちゃんがそろそろ来ると思うので」
根拠はないけど、体がこう、抱きつきたい欲望に駆られる。
これはお兄ちゃんが近くにいる証拠だ。
もうお兄ちゃんを見失わない。
たとえ見失ってもお兄ちゃんに付いていく。
「分かった。じゃあ一応仲直りの報告はしてよ」
「はい」
「じゃあ、また明日」
雪さんはやや駆け足で歩行者信号前に向かって丁度青だった歩道を渡っていった。
そして、
「鈴!」
後ろから声がした。
愛しの男子の声が。
私は振り返る。
そして、目に移ったお兄ちゃんは息を切らして汗だくだった。
汗だくで、ひどく辛そうな雰囲気が微かにあって、でも何か決めて吹っ切れたような表情をしてる。
前者はここに来るまでの名残かな。
今なら少し分かる。
「お兄ちゃん、話があるの」
「……はぁ。僕も話がある」
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