第35話嘘の恋人と初デート1

「お兄ちゃん、デート行こ」


と、早朝ランニング中に鈴から誘いを受けました。5時からバイトがありますけど、それまでに戻れば問題無し。なんですけど、中間テストも近いのでテスト明けのゴールデンウィークならと言ったんですけど、「バイトして1日中勉強して、お兄ちゃんは紺を詰めすぎ」と圧倒されて鈴とのデートすることになりました。


待ち合わせは午前9時に駅前の時計台。

僕は江菜さんの時と変わらず10分前に到着して鈴を待っています。


それから数分後。


「おに蓮兄ぃー!」


僕を呼びながら手を振って、時計台に鈴がやって来ました。

おにが鬼に聞こえた人が一部いたようで、周囲が一瞬少しどよめきました。


「おに…待った?」


鬼は待ってないよ。と、くだらないツッコミは置いといて。

鈴は10分前に僕が出ることは知ってるけど、ここは敢えてご定番のセリフを言うべきだと思っていった。


「大丈夫、さっき着いたばかりだから」


「にへへ、恋人みたい」


鈴はにへら〜と嬉しさで緩んだ笑顔を浮かべます。


「恋人だよ」


一応ね。


「そうでした。…それで、蓮兄どうかな」


白の裾や襟、肩口にフリルのあしらわれた白のノースリーブブラウスに赤のショートパンツ。 セミロングの黒髪は今日は左にサイドテールにしてる。

印象としては活発な女の子。


頬をほんのり赤く、恥ずかしがる鈴に僕は感想を言いました。


「可愛い、良く似合ってるよ」


「蓮兄も似合ってる。それと、ちゃんとラフな服装にしてくれてありがと」


白のパーカーにジーンズ。本当にラフな格好です。服装を指定されたということはそれに合った場所に行くということ。

鈴も可愛い服装ではありますけど、靴はスニーカーでアクティブに動いても問題は無いものです。


「それで、どこに行くの?」


鈴はニヤリと笑って言いました。


「今日は暴れるよ」


◇◇◇


「よし、ストライクー!」


あの後、電車に乗り都市部へと向かい、鈴とスポーツやメダルゲーム等多種多様に出来るボウリング場、Field1《フィールドワン》にやって来ました。


只今、絶賛ボウリング中で、鈴は序盤からストライクを出してからターキー中。

僕は絶望的、序盤からガーター、右端のピン3本、ガーター。

笑うしかない。誰か一思いに笑って。


「蓮兄ってボウリング下手だっけ?私が小4の時にボウリング行った時、スペア出してたような」


「それ、確か鈴と一緒にやってたからだよ」


中々に絶望的な結果に鈴が『一緒にやろ!』と言ってくれて出来ただけなんだよね。


「おに…蓮兄、今回も私が教えよっか?」


ここはプライドとか捨てるべき。今度、今度来たとき上手くなってたら良いんです。


それに、これはこれで恋人の一面を知るという事でも良いですし。その場合、出来ないとかダサッとか思ったら駄目。

誰にだって向き不向きがあるんだから。


うん。鈴に僕は意外な駄目な一面を今日知られることになった。それで良いんです。


「是非ともお願いします」


「では、レクチャー開始」


鈴からフォームから投げ方、放るタイミングまでのレクチャーを一通り受けながら、僕達はボウリングを思い切り楽しみ、最後のファイナルラウンド。

僕はスペアをとって3回目は2本を残して終わりました。

計120点、これでも成長したと思います。


そして、鈴はというと自分自身でも驚く事をなそうとしています。


「こ、このまま行くとパ、パパパパーフェクトだよ!」


あれから、ハムボーム?、ヤッツィ?と4回5回と連続ストライクを決めていきパーフェクトに至ろうとしています。


だけど、パーフェクトできるかもという興奮と同時にその壁が緊張させて身体を強張らせています。このままだとパーフェクトは出来ない。

僕は出来なくても楽しかったので良いですけど、でもやっぱりここまで来たら取ってほしいです。


「鈴ちょっと良いかな」


「うん、何おにい…」


なので、僕はそっと鈴を抱き締めました。

すると、一層鈴の身体が硬直しました。見えませんけど、多分顔も真っ赤だと思います。

それに僕は小さく微笑。


あと、何かが吹き出す音が遠くから聞こえたり、殺気だった視線が一つ向けられました。


「鈴、今とパーフェクトどっちが緊張する?」


「…………こ、こっち」


だと思った。


「うん。じゃあ、大丈夫」


「……うん!」


自信に満ちた顔になりました。

そして、鈴はパーフェクトを取りました。

パーフェクトチャンレンジというのがあるらしいですけど、受けていなかったですけど、パーフェクト証明の写真は撮りました。


「ちょっと用事済ましてくる」


「うん」


ブーブー―――


《弓月》お兄さん、美雨ちゃん達三人が鼻血を多量に吹き出して倒れました。


《蓮地》大丈夫なの?


《弓月》スタッフさん達を呼んで、裏で休ませてもらってます。大事に至ってないので安心してください。そういえば、なんでなーちゃんを抱き締めたんですか? ――


《蓮地》見てたから分かると思うけど、鈴、パーフェクト取ったよね。


《弓月》はい。


《蓮地》その前、凄く緊張してたから、和らげようかって。


《弓月》成る程、それはそれは。では引き続き頑張ってください。―――


「お兄ちゃん?」


会話が終わった所で覗き込むようにして僕の正面に現れました。


「次、どこ行く?」


「もちろん、スポッツ」


ですよね。

鈴は知らない。僕が球技系が苦手だという事を。だからって嫌いというわけではないです。


でも行きます。鈴がキラキラ目を輝かせて、楽しみにしているので。

それに球技以外にも豊富にあるし大丈夫。


「じゃあ行こっか」


「うん、そういえば、七海さん達は?見かけないけど」


「鼻血出してスタッフに運ばれていったって、弓月ちゃんが」


「心配だから見に行く」


「鈴なら言うと思った」


「きーちゃんに頼んで尾行するようにしてもらってるけど…それとこれとは違うから」


「うん、じゃあ行こっか」


ブッブー


《江菜》抱き締めた、ご事情お教え願えますか?――


一体何処に!?

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