第23話 遊園地デート

「いててててて」


「蓮地さんまた見てましたよ」


電車を乗り継いで8時半頃に遊園地に着き、1日入場券を購入して現在は遊園地。

ここの遊園地はエリアが五つに別れていて

最初に入るエントランスエリア、

そこから右に行くと砂漠の中にある街をテーマにしたエリア、

左に行くと白亜紀をテーマにしたエリアがあって、砂漠エリアから奥に行くとガラッと変わってワンダーランドをテーマにしたエリア。

白亜期から奥に行くと氷河期をテーマにしたエリアとなっているそうです。


僕達はその一つのエントランスエリアにいます。

花見翌日に今度は花見デート。

江菜さん結構ストロングスタイル?


とそれはそれとして僕は今、頬を江菜さんに抓られて引っ張られています。

引かないでね。


理由は………遊園地にいる彼氏彼女らしき人達に目が度々行ってしまっているからです。

すいません。

当然江菜さんはご立腹。自重しようと頑張ってはいるんですけどね。

すいません。


「今更ですけど仕方なくないですか!?ついこの前まで自分の恋愛感情をどうにかしようなんて思わなかったんですからぁらららら」


ただ言い訳です。すいません(二回目)。

因みに入って間もないです。


そりゃ怒るわ!アホォ~!


「蓮地さんはもう少しご自身の恋愛感情の無さに意識を向けるべきです」


江菜さんは不機嫌に頬を膨らませながら言いました。

その通りです、と、僕は同意するように頷きました。

当然抓りは強くなります。


「頷いておりますがあなたの事ですよ。彼氏さん!」


「は、はひ、しゅびばせん」


「もう……それで蓮地さんは乗りたいアトラクションはございますか?」


頬を抓る手を離して不機嫌状態のまま江菜さんは目を細そくしてじーっと見つめながら言います。


「ここは一つ定番のジェットコースター!と行きたいところですけど…」


そこで僕は言葉を一度切った。

江菜さんは普段黒ストッキングを履いているのに今日は何故か黒のニーハイそれもオーバー。更に丈の短いスカート。

乗ればスタートの間自然なチラリズムが生まれてしまうでしょう。

そう考えながらチラッとスカートに視線を落としました。

視線に気づいて江菜さんは隠すようにスカートを抑えます。


「江菜さん一応言っておきますけど、やらしい方面で見ていませんよ。そのスカートだと乗れないなと思って見ただけです」


「わ、分かっております!…ですが、スカートを履いている方も普通に乗られてますよ」


再び頬を膨らませて不貞腐れながら意地になっている江菜さんはエントランスエリアにあるジェットコースター乗り場を差して言いました。

見てみると確かにスカートの人が普通に乗っていました。

ですが見える限りでは丈が長めの人ばかり。


本当なら遊園地デートでスカートはNG、他の乗り物に乗れなくなるので。


あと、人にもよりますけど、気を使わないといけくて面倒だと思う男性もいるので気を付けてください。

でも、今回江菜さんの場合は急な予定でしたから仕方ないですね。


だとしても、それとこれはべつ。


「万が一の事があったら」


「ぅぅぅ…なら…蓮地さん!」


「はい!」


「上着を貸してください!」


必死?なお願いに僕は紺のネルシャツを脱いで渡すとスリットのようにして巻き付けくるっと回って僕に見せた。


「これなら大丈夫ですよね」


「確かにそれなら安心して乗れますね」


見た目は少し不恰好になってしまってますけど、もう乗りたい優先で気にしない模様…


「では蓮地さん乗る前にもう一度貸してくださいね」


ではなく江菜さんはしっかり気にしていました。


そして、僕達はジェットコースター乗り場に向かいました。

乗り場の入場口には既に多くのお客さんが並んでいました。


この並んでる時の注意事項として男女ともに待ち時間でイライラしたり、愚痴る事は避けましょう。

どちらも引かれる可能性ありなんで。


それから並んで一時間程してようやく順番が次に回って来るところまできました。

注意事項のアナウンスやお客さんの声で聞き取り面いですけど、江菜さんが小さく祈り手を作って何かを呟いていました。

気になって口元に耳を近づけると


「蓮地さんと一緒蓮地さんと一緒…」


と繰り返し良い続けています。

確かに回転率をあげるためにごく稀に一緒に並んでた人と別れることがありますからね。

僕も助っ人やってた時その依頼人と相手が別れて、失敗した!ってなりました。

で、別の絶叫系アトラクションで順番が来た時どうして貰ったかとというと


「…!?…れ、蓮地さん!」


その時実は賭けだったんですよね、手を握って貰うの。

まあ、一応成功しましたけど、二度とさせまさんよ。


それを今回やったわけですけど、僕の場合は江菜さんが神頼み状態なので。

これなら確実とはいきませんけど気を使ってくれるのは、実証済み。

そして、次々とスタッフさんの案内に従って

席番号の列のほうへ向かっていき、僕達の順番が来ると一瞬スタッフさんが視線を落として空き二人分の列に笑顔で案内してくれました。


しかもギリギリ。


「…あの…蓮地さん、先程から呼び掛けて、いるのですが」


「すいません。どうしたんですか?」


江菜さんは少し俯き顔を赤く染め、握っていない手は軽く握りこぶしを作って胸にあてています。

まさか、恥ずかしいとか?


いやいや、モールデートの時に大胆にも腕に抱きついた江菜さんが手を握られて恥ずかしいと思うはずが……本当に?


「江菜さん。手、離した方がいいですか?」


江菜さんはふるふると頭を横に振って否定しました。

何かしおらしい江菜さん新鮮。


「その…に、握るなら…恋人つなぎで」


しおらしいけど江菜さんはお願いはそうでもありません。

否定する理由は微塵も無いので僕は握っていた手を離して江菜さんの指と指の間に僕の指を絡めて恋人つなぎにチェンジしました。

すると江菜さんは繋いだ手をじっと嬉しそうに微笑みながら見ていました


そして、このタイミングで僕はスカート対策の事を思いだしました。

僕は手を繋ぐのをやめて上着を脱ぎます。


「江菜さん、うわ…ぎ」


「………」


何も言わずに手を離した事で嬉しそうだった表情は物凄い衝撃を受けたような落ち込みようで目頭に涙が少したまっていました。


了承したのに突然拒否されたら落ち込みますよね。

駄目駄目だ僕。よく恋愛の助っ人が出来ましよね。


「江菜さん、すいま…!」


ぐっと眉を寄せて涙を堪える表情でキッ!と睨み付けるように僕を見ながら江菜さんは腕に抱きつきました。

そのせいで江菜さんから漂う甘い香りが鼻腔をくすぐります。

ヤバイです。本当に抱きつかれるのだけは駄目です。抱きつかれるとどうしてもドキドキする。


「ジェットコースターは怖いですからこれで乗ります」


「はい、それは良いですけど、上着を」


「……蓮地さんはご自身が恋愛するとポンコツです」


「うっ…」


「上着ありがとうございます」


怒りながらもお礼。江菜さんは喧嘩したとしても確り区別はつける人なんだ。

大胆で、攻められるのにはウブでちょっと意固地で、一途で物凄く女の子。


守ってあげたくなって答えてあげたくなるなぁ江菜さんって。


僕は抱く腕から僕の手の方に伸びている江菜さんの手を取り恋人つなぎを改めてしました。


「…!…蓮地さん」


「はい」


「愛してますよ」


「ありがとうございます」


「即答。少しはドキッとしても良いところでは?」


「まだまだってことです」


「ふふ…そうですね。まだまだ時間はあります」


いつの間にかお互い見つあっていてクスクス笑っているとジェットコースターの列車が戻ってきたので乗り込みました。

そこで気付いたのですが、何人かの乗客から殺気のような視線が向けられていました。

イチャイチャはしてないですよね。

そう思ってさっきまでの始終を振り返ってみると……うん、他人から見たらイチャイチャしてるようにしか見えないですね。

でも今は気にしません。

今は物凄く江菜さんになるべく答えてあげたいから。

勿論、ハメを外し過ぎない節度を守った範囲という意味ですよ。

守ります。


なんて考えている間にレールは徐々に昇っていってるんですけど何処まで行くんですか?


「蓮地さん知ってますか?このジェットコースター、スタートダッシュの頂点到達高度が日本で二番目に高いのですよ」


江菜さんはニコニコとワクワクした表情で語りました。


「へぇ、凄いぃ~~~~!」


感心した瞬間、ジェットコースターは急加速してレールを物凄い速度で落ちていった。

ハイテンションで絶叫レベルの声を上げて楽しんでいる乗客が多数。

僕もその一人です。

けど江菜さんは


「凄いです、蓮地さん、後でもう一度乗りましょう!」


次も乗ることを決めるほどに余裕で、ジェットコースターからの景色を楽しんでいました。


「楽しかったですね。ずっとジェットコースターでも良いですけど、他のアトラクションも楽しんでみたいので終わりにしましょう」


そうしてください。あれから一時間程掛けて二回続けて乗りました。

僕も絶叫系は好きですけど流石に限界です。


「蓮地さん休憩しましょう」


時間も三回連続ジェットコースターでお昼頃だったので、昼食も兼ねて僕は江菜さんの言葉に甘えて休憩を取ることにしました。


◇◇◇


私達はエントランスエリアから場所を移して現在は砂漠の中にある街をテーマにしたエリア、『オアシスと発展した街』の一つの飲食店の中にいます。


「蓮地さんタピオカオアシスグリーンティーというのがありますよ」


「砂漠なのにタピオカグリーンティーってありなんですかね」


蓮地さんご意見は最もです。

タピオカは流行っていますから頼まれる人はいます。

その証拠としてこの店に来店している方々の大半がタピオカオアシスグリーンティーです。


「蓮地さん、気にしたら敗けです」


「そうですね」


「それに何故グリーンティーなのかも気になるところです」


「そこですか!?」


「そこです」


という訳で店員の方に訊ねてみました。

結果、このグリーンティーは『濁ってしまったオアシスの水をろ過して飲め』というテーマで作られたメニューだそうで、タピオカはろ過装置の石を表現したという事です。

こだわりが強いですね。

ですがこれは私達のように訊ねて知らないと理解できませんよね。

メニューの何処かに簡単に説明文を書くべきですね。


「それで頼むんですか?」


「気になりますし、訊ねた以上は頼むべきです」


「ですね。タピオカオアシスグリーンティーを二つ」


「タピオカオアシスグリーンティーを二つですね」


「蓮地さんは他のメニューでも宜しいのですよ」


「味、僕も気になりますから」


蓮地さんは私に微笑みかけてそう仰いました。

優しいです。

元から優しい方だとは理解していますがジェットコースターに乗ってから一層優しい感じがするのです。

このエリアに来る道中人に強くぶつかりそうになったとき抱き寄せてくださって、更に歩きづらい筈なのに抱き寄せた状態でここまで連れてきてくださったのです。


嫉妬深くて欲深い事と自覚していますが他の恋人に現を抜かすのが許せなくて先程も頬を抓ったりしたのですが、あれから目もくれなくて一度見ようとしたのですがその時は……私を見てくださったのです!


雪が聞いたら羨ましく思うでしょうね。その前にこの遊園地デートを羨ましく思いますよね。


「…それじゃあ飲ませ合いしましょうか?」


「へ?」


蓮地さん、そそそそそそそそれって間接キス。

あ、いえ、そうです。蓮地さんはこれくらい気にしないのでした。

私は直ぐに冷静さを取り戻しました。

そして蓮地さんはドリンクに『貴重な蜂蜜酒風レモンティー』という物を注文してそれから私達はきな粉パンセットを注文しました。


私は先に席を確保するために探しにいくと丁度真ん中の席が空きましたので急いでその席へと座りました。


ほっと一息を吐きます。


そういえば昨日の朝はドキッとして顔を赤くしてくださった。

もしかして蓮地さん、ポニーテール好きなのでしょうか?


「お待たせしました」


「あの、蓮地さんはポニーテールにドキッとくるのですか?」


私は注文したメニューを運んできてくださった蓮地さんに唐突な質問しました。

そのまま私は勢いに任せて続けます。


「え、何でですか?」


蓮地さんはキョトンと呆気にとられるような表情で疑問の一言を返します


「昨日の朝私のポニーテール姿にドキッときたのですよね」


「…まあそうですけど、ポニーテール好きではないですよ。突然どうしたんですか?」


「あの時だけ恥ずかしがっていらしたのに先程の飲み合いの発言やその前のデート等でもそうですが、恥ずかしがった様子が無いので」


ここははっきりと聞いておくべきそう思うのです。

蓮地さんの恋愛感情をどうにかするヒントになるかもしれませんから。


「そう言われても、昨日の朝何でドキッとしたかは僕でも分かりません。でも」


「でも?」


「色っぽいとは思いました」


「~~~~~~~~」


もう。だから蓮地さんは何でそういう事をさらっと。

私の表情は誉められた嬉しさのあまりにニヤニヤと口元が緩んでしまってますね。


「あの、江菜さん」


「えへへ、何でしょうか蓮地さん」


「一つ訂正です。僕だってドキッとしますし、ドキドキもします」


「顔に出ないだけでですか?」


いえ蓮地さんの場合、おそらく。


「「顔に出さないだけ」」


「ですよね」


「そうです」


どういう時にドキドキするのか知りたくて訊ねました。

ですが、蓮地さんは「それなら顔に出るくらいドキドキさせてみてください」だ、そうです。教えていただけませんでした。

絶対に顔に出させます。


「とりあえず他の方も並んでいますし食べた方が良いですね」


きな粉パンは見た目が砂漠にみたいだからだそうですが味は甘めのきな粉パンでした。

サラダはサボテンサラダでヌルヌルしたいて食べ物だとアロエや長芋擦って作るとろろが近いですかね。


「このサラダ、きな粉パンと合わない」


「はい、メニューから消すべきです」


「同意です」


蓮地さん共にきな粉パンを最後に残して早々に完食しましした。

そして、ドリンクを〆として私はタピオカドリンクの容器を手に持ちストローで掻き混ぜました。


「凄!」


「どうなってるのですか?」


掻き混ぜていくとグリーンティーは色が抹茶色から透明になっていきます。

本当にろ過していくみたいです。

人気な理由はタピオカドリンクという事だけではなく、この現象が映えるからなんですね。

そして、ストローに口をつけて初のタピオカドリンクに挑戦です。


ズッ。


「ん?んん、ん~~、ん!!…」


吸った瞬間詰まったので思いきり吸い込むとタピオカが口のなかを襲ってきました。

同時に透明なグリーンティーのほろ苦く甘い味が口に広がり何とも大変な飲み物です。

でも、これは好きです。


「江菜さんこっちも」


「では、いただきます」


「はい、という訳で飲ませ合いです」


「か、かかってこい、です」


「何で戦闘態勢なんですか?」


そう言ってクスクスと蓮地さんが笑い出しました。

私も私で自身の行動が可笑しく思えて笑ってしまいました。

そして、ドリンク容器をお互いの口元に持ってきて飲ませ合いました。

一つのドリンクを二人で一緒に飲むのが一般的と思ってましたがこういうあーん的な飲ませ合いも良いですね。

楽しいです。


「このレモンティー?美味しいですね」


ハチミツは甘いのですが懐かしくほっとする味で同時に口の中で広がるお酒のような風味は………ラムレーズンでしょうか?

それでお酒を再現しているのでしょう。

レモンと合わさって甘酸っぱく本当に美味しいです。

飲み合わせたり自分のドリンクを飲んだりを繰り返して楽しんでいるとスマホから着信音がなったのでショルダーポーチから取り出すと雪からメッセージがきていました。――――


《雪》ねぇ江菜。蓮何処に行ったか知らない

。水樹さんに聞いても行き先知らないって。

困りスタンプ


《江菜》ええ、知ってます。

ドヤ顔スタンプ―――


私は一度グリーンティーを飲むのをやめて蓮地さんに話し掛けます。


「蓮地さん飲み合いしてる写真撮っても宜しいですか?」


「…良いですよ」


蓮地さんと私はゼロ距離に近い所まで近づいて再度お互いの飲み物のストローに口をつけて上からシャッターを押しそのまま雪に写真を送りました。―――



《雪》うにゃああああ!江菜今何処なの?

行って私も交ざるぅぅぅ。


《江菜》教えろと言われて教える人はいないわ雪。

ドヤ顔スタンプ2


《雪》絶対探してやるぅぅぅ!鈴奈と協力して行ってやる!


《江菜》気を付けて来てくださいね―――


あの写真だけで分かりますかね?


ですが、この二人きりの時間を邪魔されたくはないので場所を判明させないでほしいです。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る