第17話 王様ゲームは幼馴染の独壇場
つい最近メンテナンスをして丁度昨日返ってきた母さんの現役時代に乗っていたDT-Rを試運転兼ねた走行で風や体に染み渡るエンジンの響く音を感じながら俺の○ーンとか5○'s的な事をしながら花見を会場へと走らせています。
テッテレレ〜テレ テレレレ〜
通話をオンにしてバイク専用のヘッドセットから聞こえてきたのは江菜さんの声でした。
話を聞くとどうやら鈴が別々になる事を我慢していたらしくて別れた時に白く燃え果てるように元気を無くしてしまったらしいので電話したそうです。
拗らせ過ぎな鈴が僕には可笑しく可愛く思えてつい笑ってしまった。
落ち込んで無いと思う程に声は明るかった。
でも鈴ですから。本当にさっきまで落ち込んでたと思う。
ので。中間試験まで二ヶ月ある。このくらいからいつも備えてる。
埋め合わせになるかはわからないけど「1日くらいなんだぁ」の精神で。
「近い内に二人で何処か遊びに行こ」
「良いの?」
そういえば兄妹だけで何処かに遊びに行くの久しぶりでした。
「何処に行くかは楽しみしといてな」
『うん、分かった♪』
元気を取り戻した様なので切ろうとした瞬間慌てて鈴が呼び止めました。
『あのね、その。雪さんにも埋め合わせしてあげて』
「!…そうだね。ありがとう鈴」
鈴は『お兄ちゃんに干渉する者は皆敵』みたいな感じです。
友達の弓月ちゃんを外しせば心を開いているのは雪くらいなんです。そう驚く事ではない。
江菜さんの事もやっと認め始めてる感じです。もう認めてるのかな?
妹は「大好き」と切る前に言ってから一方的に切った。
僕は早く到着するように高速道路に切り替えて向かっているときに父さんから電話が掛かってきました。
「もしもし父さん。今どこ?…………分かった。合流したら皆に言っておくよ」
その後一時間弱で駅前に到着しました。
大切にされてますな。
◇◇◇
一般道路から高速道路に切り替えたことで先に駅前に到着したらしく二十分程してから四人が駅から出てきた。
「お兄ちゃ〜ん」
ほんの数時間離れただけで首を絞める勢いで抱きつかれたら流石に恐怖を感じる。
ポンポンと頭を叩いて危うい状態と気づいて直ぐ離れてくれた。
「ごめんお兄ちゃん」
しゅんとしている鈴を撫でていると不穏な空気が漂ってきた。しかも一人だと思ってた空気は二人でした。
何で雪迄不機嫌になってるんや。
意外で何故か大阪弁になった。
「雪さん?」
「何かな蓮君」
『君』だけなのに何か怖い。今までこんなこと無かったのに。
もしかして落ち込みから怒りへ転身したのですか。
「さっきは本当にごめん、雪」
「え?いや」
「あ、はい」
「あ!…違う違う。駄目って意味じゃないから。『いやもう怒ってないよ』って言おうとしたの」
紛らわしいよ、雪さん。
「変わりにね、その、埋め合わせして」
「う、うん。勿論」
人差し指の両先をツンツンとしたり指を絡めたりと恥ずかしがる雪の姿が普段とのギャップでドキッとしてしまいました。
でも、何でも埋め合わせするって方向で良いのかな?
傷つけてしまったのを治すのは無理。
でもそれを嬉しい事で埋めるのは間違ってない、筈。
「……」
「蓮?」
「あっ!ごめん」
「…呆けてる罰として今日埋め合わせしてもらおっかな」
「早くないですか?」
それに罰で今日埋め合わせって何か違うような。納得していない僕の考えを察してか「納得しておくの。それに早い方が蓮もいいでしょ?」と言われて渋々引き下がりました。
江菜さん、雪、樹、鈴。僕は四人に心配かけすぎて駄目だな。
本当に他人の恋愛に目を向けてばかりじゃ駄目です。
「では早速」
そう言って雪が突然腕に体を密着させてきた。
「うおっ!」
唐突な大胆な雪の行動とむにゅという効果音があっても可笑しくない位三人の中で特別大きい雪のが当たって変な声をあげてしまいました。
「雪さんやバイクが押しにくくなるのだよ」
「若いんだからそれくらい頑張ってよ」
それだけじゃないです
江菜さんだっているのに。雪でも流石にこれ、は!
「どうかなさいました?」
「い、いえ」
「大丈夫ですよ。妬きはしますが今回は怒る事ではありませんので」
今回はですか。つまり埋め合わせでなければ怒ってますよって、遠回しに分かりやすく伝えてくれて優しいですね江菜さん。
いや正直怖いですよ。
でも一番怖いのはもう一人です。
病んでます。もう表情が。
何かをぶつぶつと後ろで鈴が唱えているのです。
許さないみたいな感じの雰囲気が恐ろしい。
「鈴奈さん、これは蓮地さんの為でもあります」
「……分かりました。仕方ないですね」
江菜さんが目と口を塞いで何か耳元で囁くと鈴は不貞腐れた表情になって『やみ』から上がってきました。
何を言ったのかは分かりませんが江菜さんありがとうございます。
「蓮どうかした?」
何でこうも何も知らない感じで動じてないの。
樹に救援の意味で視線を送ったら。受け入れろと両肩を竦められた。
「雪はやっぱり凄いよ」
「まあ鈴奈ちゃんにはたまにあの視線向けられるから」
流石長い付き合いです。僕の言った意図を正確に読み取った返答。
「気づいてて動じてないんだね」
「うん。ほら、早く行けぇ♪」
「…了解」
「? おーい樹も男なら早く来ーい!」
「ぅるっせぇ。…わかってる」
嘘みたいにとても楽しそうにしてる雪。
でもその雪に違和感を感じました。
それが何かは僕には分からないけど別れ際迄とは少し変わった気がする。
心当たりはありません。でも一つの予想が頭の中に浮かんだ。
雪は何で僕にあの表情を見せるのかそしてそれも何で今なんだろうと。
◇◇◇
公園駐車場に蓮がバイクを止めに行ってから中に入ると既に見えていた四月中旬なのに満開に近い桜の花は入園するとより一層多く咲かせていた。
この公園には様々な種類の桜が植えられてるので有名な場所らしくてBBQ可能エリアもある。
そして、今の時期は大変賑わってるそう。
証拠に今日も大勢の花見客で賑わってる。
私達はBBQはしないから火気類使用禁止エリアの方でする予定。
場所は執事の蒿田さんが確保してくれているらしい。
それはそれとして。
「父様は馬鹿ですかそれとも莫迦なんですか!」
「落ち着こうよ江菜」
「取り乱すのも無理ないんじゃないか、雪」
江菜がぷんぷんと怒ってる。可愛いなぁ
理由はここに来る途中に蓮から聞かされた季吹さんからの電話の内容。
この花見は挨拶も兼ねての互いの家族の交流という名目での予定だったらしい。
一週間前から蓮と江菜が一切会っていなかった。
両父はこのままでは花見が気まずい物になるのでは「これやばくね」だったらしい。
だけど友達だけでの花見なら、もしかしたら気軽に話し合う事が出来るだろうと考えたらしくて互いに仕事を入れてしまったそう。
馬鹿。
それを聞いて江菜は呆れました。
江菜ママの方は突然の仕事でこれなくなったそうです。
大人は水樹さん一人。
頼りになるから良いけどね。
「お父さん達はバカって事で」
そうこうして確保してくれている場所に到着するとそこには執事服ではなく私服姿の蒿田さんが立っていた。
「「はぁ……」」(蓮地、鈴)
「あぁ……」(雪)
「えぇ……」(樹)
江菜以外の私達四人は思わず溜め息を吐いてしまった。
理由は蒿田さんが執事姿じゃなくて明らかに私服姿だったから。
「なんかやるか」
「なんかってゲーム持ってきてない」
「蓮地ス○ッチ持ってたよな」
「忘れました」
「じゃあ王様ゲームでもやる?」
と樹は提案した。
「王様、ゲームですか?」
何でって思った。江菜と同意件かな?
でも、割り箸丁度あるし。
うってつけなのかな。
結局皆、賛成して王様ゲームをやることになった。
でも只の王様ゲームっていうのも面白くないなぁ。
「ねぇ、王様になった人の命令権、継続するってのはどう?」
でも、誰かと何かをするっていうのは今日1日だけという特別ルールを追加した。
「鬼ですか雪さん」
否定するか、まあ別に良いよ。でも、これ鈴奈ちゃんにとっても悪い話じゃないのになぁ。
だから囁いたみた。
「良いの?女王になったら蓮を1日好き放題」
「やります」
即答、チョロいぜ。
江菜にも振ったらあっさり賛成。
「てなわけで女子三人賛成という訳で良いよね?男子二人」
「「既に拒否権ないので、意義無しでお願い致します」」
相変わらず何か諦めたときのシンクロ率は100%だね。
ルールは以下省略で説明。只し今回は指定有りと付け加えた。
そして、王様ゲームは開始された。
「王様だーれだ!?」(五人一同)
「やったぁ!私だぁ」
幸先良し。
「雪か」
「まっ、雪ならな。大丈夫」
「ですね」
「油断大敵」
え?何私そんなに信頼性あるの!?一人油断してないけど。
嬉しい…けど、それって当てられても別に大した命令出せないと言われてるみたいで少し腹立つ。
分かってるけどね。皆そう思ってないのは。
でもなんかいいよね。こういうほのぼのしたの。
でもこの後私が告白したら蓮とはどうなるだろう。
ううん。これは後。それより今は色々楽しみたい。
コホン…という訳で王様もとい女王様となった私は命令を下す。
まじまじと見られながら私が命令したのは。
「じゃあ、江菜」
「はい!」
「電車ないでも言いたかったこと。これからもう少し砕けた口調で話して」
「わかりま…分かった、わ、雪」
うんうん。口調変わるだけで違う可愛さ。
暫くは慣れないだろうからその感じをこれから暫く楽しませていただくぞ。
「次は私が。そしてお兄ちゃんと…」
吹っ掛けたのは良いけど蓮に悪いことしたかな?
そう思いながらやるとまたしても私。
次も私とそのあと二回行って全部私が女王と無双するという結果になった。
まさか私には女王様になれる秘められた素質が?
とまあ冗談半分はここまでで少し戻って、二回目に指定したのは、
「次は…樹」
「いつでも良いぞ」
「何が?…うーん、樹はね。女子と少しずつ向き合おっか」
「困難だ、無茶だ!」
今にも、「抗議する」って言われそうな勢いで言われた。
「私と蓮がフォローするよ」
「え?僕はそれ」
「ち〜が〜いますぅ。これはおまけ」
一回に指定一人なのに次も私って確信したような言葉の影響かな?実際三回目も私になった。
その三回目の指定は鈴奈ちゃん。今日の事には介入するつもりないみたい。
けど油断大敵なのはこちらも同じ。
「鈴奈ちゃんは家まで蓮との接触禁止。思考も禁止」
「あ、ぅ、お兄ちゃぁぁぁん!」
「鈴、今は諦めて。限定兄離れしよ」
「う、うぅ……江菜ざぁぁぁぁん」
「蓮地さんは酷い方ですね~」
「僕ですか!?」
鈴奈ちゃんが蓮以外にすがるの初めてみたかも。ちょっと悔しいなぁ。
言ったの私だけど。
最後は蓮だね。
「蓮」
「はい」
「蓮は後で埋め合わせの続きをする時話そうかな」
「あ、うん。わかった」
よし、これから花見、といきたいけど、樹は怯えて、鈴奈ちゃんは泣きじゃくって。やり過ぎた?どうしよう。
「皆ごめんねぇ、お待たせしちゃってさ……どうしたの?」
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