第13話 女子の火花は車内で

放課後、下駄箱まで蓮地ぼく樹が女子二人を挟む形で二階の連絡橋を渡り三年生エリアから下駄箱まで向かいます。

何処から降りても結局は同じでむしろ遠回りです。

けどそれには理由があります。


「やっぱり来ないね」


「それでいいんだ」


ある存在が来ないことに安堵している樹に

何の話かと思った江菜さんが質問をしました。


「それでよい、とは?」


「樹のファンガールズのこと」


樹は単語を耳にした瞬間青ざめた表情になりました。

本当に女子がトラウマみたいな幼馴染。

因みに呼び名は僕らが勝手にいってるだけ。


「見てて面白いよね」


「「面白くない!」」


「え?蓮まで!」


「僕は中学の頃(高校とは別の女子)から樹が逃げたら何度も似たような被害を受けてたんだよ。楽しくない、樹の反応は少し楽しいけど」


「おい、こら」


樹が好きなら何故と女子達に疑問を抱いた江菜さんが聞いた。


「ではそのファンガールズの皆さんはなぜ放課後に現れないのですか」


「それは俺も謎」


少し前、樹ファンガールズは創立した。

彼女達は一目見ようと朝のホームルームと昼休みだけ訪れ五分前には身を引きます。

他の休み時間は短い為現れず、放課後はプライベートは極力侵さないといった花の掟というルールが決められています。

対立する女性が結託するのは目的が一致したときです。

妙に恐ろしいですけど。

何で知ってるのかと言われれば…まあね。


靴を履き替え正面玄関を出てすぐの正門広場で樹、雪とは別れた。

外は既に陽が落ち始めて夕日となって学校を綺麗な朱色に染め上げていました。


樹達は部活の為、別方向へ夕焼けの道を歩いていき向かう先にある部室棟へ向かう。

と言っても運動部の更衣室としてしか機能していないらしく文化系の部活は空き教室や顧問の先生が受け持つ何処かの準備室が部室となっているそうです。

色々自由にできて万々歳と声が上がって特に問題はないそうです。

因みに生徒会も校内で仕事中とご苦労様です。


そんな青春の一ページを送っている部活組の一方で家に直行、帰宅途中で寄り道をしたりする下校組が下駄箱の辺りから江菜さんに視線を注いでいます。

というかずっと、お昼休み終わりからずっとです。

五時間目の休み時間からは僕も雪と一緒にBG《ボディーガード》的な事をすることになりました。


「やっぱり目立ってますね」


「こういうのは慣れても好きません」


それにしては大胆な事したり頬をつねったり

してたけど。……もしかしたら


「江菜さんってのは慣れててものは慣れてないんですか?」


「…そ、そんな事はありません」


「……江菜」


江菜さんは頬から赤くして徐々に顔全体まで染まられせながら俯いていきました。


「冗談ですよ」


「…覚悟」


「うっ…」


代償として一発良いのくらいました。

前に呼んで欲しいって言っていたのに。いきなりは準備してなくて駄目な、ようでした。


「当然の報いです」


「じゃ、じゃあ学校から早く出ましょうか」


「走ると余計目立ちます」


「…大丈夫です。こっち来てください」


手を掴んで引っ張ると後々面倒な事がまた来週起きるので正門広場を左に曲がった少し奥にある場所についてきてもらうことにしました。


「蓮地さんここって自転車置き場ですよね」


「はい」


そのまま自転車置き場奥を進んでいくと専用口と書かれた立て札が掛けられている場所を出るとすぐ左隣に止まっている青色の車に僕が見えないよう壁になり江菜さんに乗ってもらいました。


「あの、この車は?」


「私の車」


助手席側の窓から顔を出したのは僕の母さん春咲水樹。

本当に元レディース総長って聞いた時は凄い母親を持ったと思ったけどお陰で色々助かった。


「蓮地、何か失礼な事考えてるな?」


全力否定、一部あってるけど。


「お久しぶりです、水樹さん」


「久しぶり、元気してた?」


「はい」


母さんも一週間音沙汰無いのは知ってます。

聞く気はないらしいのですが、制服姿を見て二回ほど頷いてから笑みを浮かべる。


「それで何故水樹さんが?」


「息子からメッセージがね」


そう言って江菜さんに内容の書かれCOMINEの会話画面を見せました。

別に困るような物でもないので止めはしません。

『放課後、江菜さんが困るかもしれないから迎えに来てください』

予想通り実乃鐘生徒の視線が江菜さんに集まりました。


ここにいても意味ないから移動すると言って

エンジンをかけ、車は学校から数分もしない内に距離を離していった。


「とりあえず、駅前で良いかな?」


「はい、お願いします。そこで蒿田も待っているので」


「あの執事さんね。でも結局リムジンで目立つでしょ」


「そうなんだけど。相手を認知してる視線は気になるし気まずいだろうから」


「そうですね。同じ学校の方だと気にとめてしまいます」


自分の日々に変化があって、その変化に目を引かれて、視線を向けて、目立っているものがあれば噂をする。

今ではごく普通で当たり前のことになってるけど、知らない人に勝手に噂されて見られる。

余り気分の良いものではない。


「水樹さん、ありがとうございます」


「良いの良いの。気にしないで。将来の嫁を助けるくらい」


「蓮地さんの、嫁!」


ぽわんと頬を赤くなって江菜さんはその頬を両手で隠して黙り混んだ。

僕にプロポーズした彼女ですよね。


「って、まだ将来でも嫁でもないよ」


「三分で芽生えろ」


僕の恋はインスタントじゃない。ラーメンは美味しいけど無茶。


「恋愛としては、無い。けど大切だとは思ってるから」


「…だそうですよ」


突然、助手席から聞き覚えのある声と共に一人の人影が現れました。


「鈴!…どうゆうこと?」


「…丁度向かおうとした時に『嫌な予感して早く帰ってきた』らしいのよ。出てくるなっていったのに」


多分、鈴奈すずにとって江菜さんの転入が嫌な予感なんでしょうね。女の勘は恐ろしい。

でも男の勘なんて鈍いね、だから朴念人がいるんですよ。


自分で言っておいてやかましいわ!!


「それで事情話したら行くって聞かなくてさ。しかも可愛い顔して頼まれたら逆らえない」


親馬鹿め。

鈴は不機嫌オーラをだしながら江菜さんを睨んでる。

動じてない江菜さんもまた凄い。


「まさかお兄ちゃんの学校に転入してくるなんて思いませんでしたよ。一週間も音沙汰無しだったのに」


「その件は既に済んでおります。ですから今蓮地さんは私といるのですよ」


「こんなことでお兄ちゃんの恋愛感情を芽生えさせれるんですかね?」


「少なくとも蓮地さんが大切に思っていると自覚して頂けた事は進歩だと思うのですが?」


「それなら私も大切にされてますし、その点なら私はですね」


「そうですね。


「「ふふふふふ」」


女子怖っ。

目と目で火花が散ってるのが見えそう。

どうにかしないと。でもこのまま見てみたいという気持ちが


「お兄ちゃん」

「蓮地さん」


「はい!」


「まさかとは思うけど」

「ご自身が関係することで」


「好奇心を抱いてない(よね。)ですよね」


思わず咄嗟に目を逸らしてしまいました。

まあでも、車内だからね。そう車内、だから。

今は…無いです。

助けを求めるように目線を母さんに変えると


「蓮地がどうなるかは後としてもうすぐ着くよ、江菜ちゃん」


「ありがとうございます!」


見捨てられた。


そういえば鈴奈すず。余り転入したことに首突っ込んで来ない。

モールで話し合った時に心境の変化があったのか「仕方ないですね」と納得してました。

兎に角


「良かった」


「反省してますか?」


「してます、してます」


「でしたらご自身の恋愛にもっと目を向けてください」


また逃げたくなるかもしれないし諦めたくもなるかもしれない。

いつか江菜さんを誰かを不幸にするかもしれない。

でも、恋愛はそういうものとは理解してる。


振られて傷付くのも、悲しくなるのも恋をするには避けて通れない道であり覚悟である。

それでも僕に実感が無いのが心苦しい。

けど、改めて惚れさせる宣言されたんだ今は逃げることはしない。


「努力します」


「今はそれだけで十分です。それで突然で申し訳ありません。よろしければ今日、家に泊めていただいても宜しいですか?」


「「「え!?」」」


















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