第8話 初デート!?
先日江菜さん、雪、樹達とショッピングモールに行った時、恋愛相談の行動を出して江菜さんをちょっと怒らせてしまいました。
デートで許していただけることになりました。
デート場所は前と同じショッピングモール。
実乃鐘高校の最寄り駅から二つ先の駅にあります。集合場所は駅入り口前で、約束の時間は午前十時。
デートでも、何にでも、集合場所には10分前到着を心掛けるのが相手に対して最低限度の配慮。
ということで少し早めに家を出て電車で向かっています。
実乃鐘高校の最寄り駅に一度停車して、制服姿、ジャージ姿の生徒が何人か降りていく。
日曜日に学校に行くのは部活生くらいです。
再び動きだし快速で駅を通過して目的の駅に到着。ホームへ降りて少し離れたで大きく深呼吸を二回する。
実際に自分でデートをするとなると少し緊張します。
アドバイス等はしたことはあっても実際に女子とデートするのは当然初めて。
ちなみに少しというのは初めてデートをするという好奇心が勝ってるからです。何となくですけど、分かります。
そしてこれが、今の僕の現状。
誰かとのデートではなくの嬉しさよりデートをした経験欲が強い。
デートを楽しむ事ができるか不安で仕方ないです。
落ち着いた所でホームの階段を上り、駅入り口前に向かいました。
◇◇◇
駅前の約束の時間は午前十時。
蒿田に車で向かってもらいながら車内で手鏡を片手に前髪がずれていないかを入念にチェック。
大丈夫だと思っていても違和感を覚えてまた前髪を軽く整える事をを何度も繰り返しております。
やはり、好きな男性それも彼氏となれば身嗜みが可笑しくないか気になって仕方ないものです。
前髪チェックも、もう何回しているかわかりません。
蒿田は時々、そんな私をミラーを通して見守ってくれています。
それから暫くして駅前に到着。私はようやく手鏡をしまうことができました。
その時一瞬だけ蒿田のホッとした表情がミラー越しから見えました。
心配をかけてしまいました。
「蒿田、時間は?」
「予定時間十分前です」
「予定通りの時間ですね」
安心しました。
十分前もしくは五分前集合を心掛ておくことは重要ですから。
ショルダーポーチを持ってリムジンからおりて、蓮地さんを待たせては行けないと駅入り口前へと駆け足で向かいました。
「はぁ…はぁ、着きました」
「着いた」
「「え?」」
声の方へ振り向き、視界に入った人影は、
「蓮地さん!」
「江菜さん!?」
驚いて一歩引いてしまいましたが、紛れもなく蓮地さんです。
まさか、同時に集合場所に到着して出会うとは、凄い確率です。
それからお互い、どう切り出そうかと見つめ合う状態が暫く続きました。
私は恥ずかしくなって時折顔を俯かせたりしました。
しかし、このままではいけません。気持ちを落ち着かせないと。
「ふぅ…蓮地さん」
「は、はい」
「今日の服なんですが。その…どうでしょうか」
私はクルっと一周して服を見せます。
白のノースリーブブラウスに青のプリーツスカートの組み合わせて、そこに明るめ色のショルダーポーチ、ノースリーブなので色っぽさも出ていると思うのですが。
蓮地さんはどう思っているのでしょうか。
あと、気づいてくれるでしょうか今日のコーデのこと。
「似合ってますよ。でもそれって」
案の定気付いていただけました。
緊張感はコーデに気づいてくれた嬉しさで消えていきました。
私も単純ですね。
「はい、これは昨日最後に試着をしたものです」
以前入店したファッション店サンローズの店長さんが仕立ててくださった中で蓮地さんが一番反応の良かった物を購入して現在着ているのです。
ただ、もしかしたら蓮地さんは素直に誉める気持ちと恋愛相談でファッションについても多少は勉強している筈なので客観的にご覧になって誉めた可能性があります。
ですが、蓮地さんはこの服だけは一瞬だけ少し頬を赤くしたのです。
なので、購入しました。
「良かったです。蓮地さんもそのカジュアルな服装がお似合いですよ」
黒のチェックのホワイトの襟シャツにグレーカーディガンと黒ジャケット、下はブルーのスキニーデニムと大人びたコーデです。
「そうですか?」
今日も誉められて頬を赤くする蓮地さん。
とても可愛いです。
口にしてしまうと引っ込めてしまいそうなので伏せておきます。
「はい。それでは早速参りましょう」
「は、え、江菜さん!?」
蓮地さんの右腕にしがみつくと、蓮地さんがドキドキしているのを感じました。
そのドキドキしている心臓の音が心地良く安心します。
それにしても、ドキドキはするのですね。
という事は昨日赤くしたのも…ふふ、そうですか、そうですか。
「ふふ」
「江菜さんどうかしました?」
「いえ、何でもありませんよ。ではエスコートお願い致しますね、蓮地さん♪」
「は、はい」
意識していらっしゃいますね。やっぱりドキドキしているのですね。流石の蓮地さんも頬が真っ赤です。
エスコートと言えば、この状態をやめるわけにはいかないでしょうからもう少し堪能させていただきます。
「っ!」
すると、突然蓮地さんは体を縮込めました。
でも、「大丈夫です」と仰られましたし、私も気にしないことにしました。
ただ不思議に思い、しばらく周囲を警戒して見ることにを致します。
◇◇◇
蓮地と江菜がモールに向かって歩き出した頃、その後ろ姿を監視する二人の影。
双眼鏡で蓮地達を覗き見ているのは木更弓月。
「目標移動開始、追跡を開始する。なぁんて。あれがお兄さんの彼女さんかぁ。美人だな。めちゃくちゃ目立ってる。………なーちゃん大丈夫?」
弓月が双眼鏡から顔を離して下に俯いた先に広場の植木を今にも折ってしまいそうな雰囲気を出している蓮地の妹、春咲鈴奈が、いた。
二人はバレないように金髪のカツラをつけていた。
しかし、周りからは不振な行動と合わさり怪しまれている。こういうのには関わりたくないという空気で誰も手を出そうとしない。
その為怪しまれはしても通報などは今のところ無かった。
「んぐぐぐ。お兄ちゃんにしがみつくなんてぇ100年早い!」
「うぉっと!待ったなーちゃん」
飛び出そうとした鈴奈を弓月が両肩を引っ張り抑えて止まるよう声をかけた。
まだ冷静さはあったようで弓月の一言で鈴奈はすぐに大人した。
只、蓮地達は二人が追跡しているなど当然知らないので横断歩道を一つ渡った先にあるショッピングモールに向かうために信号前で待っていた。
「早くしないと見失うよ」
「分かってますとも。でも今回はお兄さんのデートを追跡して彼女さんの真意を知ること、でしょ。突っ込んだらおじゃん。K?」
鈴奈の目的は江菜が本当に彼女足る人物か蓮地が猫を命を省みず助けた行動だけで本当に好きになったのか知る為にいる。
それを弓月に言われて更に冷静になった。
「うん。じゃあ、その落ち着いて行こう」
「そうこなくっちゃ」
蓮地と江菜追跡タッグとして追跡を再開した。
◇◇◇
モール到着時には江菜さんは僕の腕から離れていました。
心臓が持たなかったので助かった。
それにしてもしがみついてきた江菜さんの柔らかな部分。
男よ、あれは嬉しいものだけどまた恐ろしいものでもあります。これ考えてること少しヤバイかな?
まあ、今の女性なら教えなくても知ってそうだし。もし聞かれても言わないでおこうと決めた。
「じゃあ予定通り一階で夏服見に行きましょう」
「そうですね。…あっ、!」
行きたい所があるようで聞いたけど、江菜さんは少し思案して「それは後で」と秘密のまま予定通り一階で夏服を見に行くことになりました。
「……」
「どうかしましたか?」
突然江菜さんは突然立ち止まり目を左右を見渡した後、僕に上目遣いで微笑み話しかけてきました。
思わず可愛いと思いドキッとしてしました。
「いえ、大したことじゃ」
実を言うと江菜さんを見る男女がさっきからちらほらいて 「あの子可愛いくない?」「隣の男子彼氏?」「付き添いでしょ?」等の声もあちこちから聞こえてきます。
まあ大抵がそんな反応と空気だからそれがどうかした程度なんですけどね僕は。
けど、江菜さんが可愛いのは同感です。
その江菜さんは気にしないという風に近づいてきました。
「本当ですか?顔が少し赤いですが」
「本当です。顔が赤いのは、その…近いから」
少し歯切れ悪く言う僕に至近距離まで来ていた江菜さんはポッと少し赤くなってすぐに距離を取ります。
さっきまで大胆に腕にしがみついていたのが嘘のようです。
「…行きましょう」
「そうですね」
しっかりしているけどちょっと抜けた所が可愛いという事がわかりました。
「江菜さん可愛い」
「え?」
「あ」
つい声に出してしまいました。
その時の江菜さんの顔は茹でタコのように赤くなっていた。
「蓮地さん。あ、あの店に参りましょう」
顔を赤くしたまま江菜さんは目的とする夏服のある店を見つけると早足で店に向かって行きました。
◇◇◇
心臓が張り裂けそうです。不意のあのお言葉の破壊力は恐ろしいものでした。
まさか可愛いと言ってくださるなんて。
それにしても、夏服が視界に入った店に勢いで入店してしまいました。
少しして蓮地さんもお店に到着しました。
「蓮地さん遅いですよ!」
「だって、いきなりこのお店に向かうんですから」
何も返す言葉がございません。
ですが蓮地さんが可愛いと突然仰るからです。
気を取り直して2、3店舗回っては服を手に取って鏡を介して服を合わせたり試着して、楽しいです。
蓮地さんは楽しいのでしょうか。
まだ先程の不意の言葉が頭中を巡り服を選ぶ所ではありませんでした。
今度埋め合わせしてもらわないといけませんね。
「江菜さん。モール内のフードコートかどこか休憩できる店探しましょう。時間もいい頃合いですし」
腕時計で確認した時刻はお昼近くを指していました。
そう言って手を握られた瞬間ポワポワと温かい気持ちが全身を巡っていきます。
「不問にしましょう」
「何か言いました?」
「い、いえ。気のせいかと」
平常心ですよ
蓮地さんは耳が大変良いみたいですね。小声でも迂闊に漏らさない方が良いです。
「それでは、蓮地さん。近くで休息できる場所を探しに参りましょう」
これもデートの一つとしては楽しくて仕方がないですね。
そして、蓮地さん自身の恋愛感情にも進展することを願って。
◇◇◇
僕と江菜さんはモール内マップで駅方面の入り口から奥に行った所にある少し高めの店に入りました。江菜さんは心配で両親が執事の蒿田さんを雇いリムジンで学校に登下校以外は普通の生活をしているとは言ってましたが多分違うよね。
「蓮地さん。このお店は高いのでは?」
「そうなんですけど」
喫茶店名はデセール。
確か、フランス語でデザートという意味で全国に数店舗あるらしく。
少し高価格であるものの行く価値ありと評判の喫茶店らしいです。
「蓮地さん。格好つけようだなんて思わないで蓮地さんらしくしてください。私が好きになったのはそんな貴方なんですから」
「……。何回も好きを言われると響かないですね」
「あら、蓮地さんはこれからではないですか!?」
どう返せばいいか分からずに黙ってしまったけどすぐに誤魔化しました。
どうやら上手くいったみたいだ。
「あはは、バレました。因みにデートの時にオシャレな店とかに行くよりは慣れたフード店に行った方が緊張せず気軽に会話も進むので行くなら……あっ」
「蓮地さぁん!」
つい意味もなく知識を話してしまい頬を
こんな事するとは思わなかったです。
でもこれくらいは…止めよ。
「ふふ……行きましょうか」
「…いてて、はい」
目の前に見えるモールの喫茶店デセールに向かいます。
でも突然、僕は自然に足は止めていた。
自分でも分からないそれに違和感もあった。
「蓮地さん?」
「すいません」
「大丈夫ですか?」
「大丈夫です」
苦しくもなければ、空虚な感覚もない妙な違和感を抱きながら江菜さんと入店した。
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