第3話 ○○はいきなりでした

ピピピッ、ピピピッ


設定していた6時半という少し早い時間にしていたアラームがなって起きました。

それでも眠いのであと5分だけと思って目を瞑り眠りに入ろうとしたらバサッと布団を剥ぎ取られました。


「ううっ…。寒い、んむ」


半目で見てみると


「おら!蓮地起きろ」


いつ入ってきたのか僕の部屋にいたのは母さんでした。


「あと、あと5分」


「もう。朝起きるの本当に弱いわね。……だからと言って見逃すわけないでしょ!」


「痛っ!」


ベッドからパジャマの首元後ろを持って引きずり下ろされたあげくそのまま引きずられていきます。

ん?でも、ここは二階。外を出た先は階段、階段を下りるもの。


「か、母さん起きた!今ので起きたから引っ張らないでこのままだと引きずられて階段下っちゃうよ‼」


「そっ、まだ寝ぼけてたらそうしたのに」


恐ろしい事をさらっと言って母さんは手を離してくれました。

頭がはっきりした僕は周りをよく見渡すと部屋の扉間近 で階段は右に曲がって歩いてすぐ。

危なかった。


「じゃあ早く歯を磨いて、着替えておきなさい。今日は高校入学式なんだから」


「ん、はーい」


◇◇◇


春です。

ピカピカの小学一年生誕生、新たな門出の季節で桜の季節、恋の甘い季節でもあります。

そして、僕も今日から高校一年生です。


歯も磨いて部屋でネクタイを締めブレザーを左腕にかけ学校指定鞄を右手で持って1階リビングに向かいます。


カチャ


「おはよう」


「おはよう蓮地。また母さんのオコ起こしか?」


「起きようとは思うんだけどね。父さんあと微妙だよそのギャグ」


「そうか」


微妙と言われてリビングのダイニングテーブルで椅子に座り朝食を食べながらしょんぼりとしている男性が僕の父さん春咲季吹はるさききすい。ギャグが好きな人なんですけど、言うもの全部微妙。

そんな父さんはリーフリンクというゲーム制作会社で世界でも有名ところのAD《アートディレクター》と以外に凄い人です。


「ほら、蓮地ととっと座って早く食べる」


「う、うん」


言われるままダイニングテーブルに向かって椅子に座りました。

そして、さっき僕を引きずり起こしたのが母さん、春咲水樹はるさきみずき

これが胸を張れる程の美人なんだよねぇ。

だけど、たまに口が少し悪くて、また今日みたいに恐ろしい行動も多少あります。

昔、女暴走族のリーダーでしたって言われても納得してしまうと思います。

また、とても親バカとも感じます。

去年の母さんの誕生日にケーキを作ったら抱きついて更には頬にキス迄する始末です。ね、親バカでしょ。


「もぐもぐ…は?」


「あの子なら明日が始業式だからまだ寝てるよ」


「そっか」


と思った矢先です。ドタドタと階段を降りる音がしました。

けど、「きゃあああ!」という声と共にダンダンダンと落ちる音に変わりました。


「いったー!始業式遅刻だよ」


「何いってるの始業式明日でしょ」


「え?……なんだぁ」


始業式が明日と知って床にペタッと座り込むのが妹の春咲鈴奈はるさきすずな

僕は鈴って呼んでます。

ちょっとおっちょこちょいなところがあり真っ直ぐな性格の自慢の妹です。ただ異常なブラコン。

その妹はデザインと白の制服の制服でそこそこ有名な女子中の今年から三年生。


そのおっちょこちょいな妹なんですけど、前に父さんはADしながらゲームプログラムのデスマーチ化のフォロー、母さんも実家に一時帰宅で三者面談に行けなかった時に代わりに僕が行った時に担任の先生から鈴の事を聞いたときは驚きました。

成績、授業態度共に良く学校では凛とした立ち振舞いだそう。

先生からも校内の後輩~先輩の女子からも人気の的なんだそうだ。家での鈴を見てる僕としては想像できない。


「…まあいいや。お母さん私も朝ごはん食べる」


「わかった、ちょっと待っててね」


鈴はスタスタとテーブルの方へと向かい、僕の隣に座りました。


「お兄ちゃんおはよう」


妹はいつもニコッと笑って挨拶する。よく母さんに「太陽みたいだね」って言われてますが、まさにその通りです。


「おはよう、鈴」


「う、うん」


「あっ!ご、ごめん」


つい、頭を撫でながら挨拶してしまいました。まあでもこれをやってしまった後はいつも


「ん、もっと」


「はいはい」


「えヘヘへ」


悪い気はしない。むしろ兄としては距離をとられるよりは嬉しい。

でも最近は撫でてしまう前にねだるようになってきました。自重しよう。


◇◇◇


私は春咲鈴奈。今年で中学三年生です。

よく足を引っ掻けたりします。

今日もさっき始業式の日を間違えて慌てて階段から一段、一段落ちて行きました。

でもある意味間違ってない。だって今日はお兄ちゃんの実乃鐘高校みのかねこうこうの入学式。


しかも朝から頭撫でてもらった。私みたいなのをブラコン?っていうみたいだけど、そんなの関係ない。

お兄ちゃんが嫌いならともかくブラコンを止める理由はないから。

でも、だからこそお兄ちゃんやお父さん、お母さんに迷惑はかけられない。お兄ちゃんにそういうのが一回あったんだけど。


とにかく私は外ではしっかりとすることにした。

でもなぜか同じ中学の同級生の皆や後輩の子達しかも卒業した先輩たちにまで注目を浴びていた。


「じゃあ、そろそろ行くよ」


「父さん、僕も行くよ」


「え!?もう行くの?」


「うん、電車でも30分くらいかかるから」


残念、今日はまだ休みだから余計に残念!

でも仕方ない事。それに今日は入学式だけの筈。

だから私は全力でお兄ちゃんとお父さんの安全を祈ります。って考えてるうちに玄関に行ってる。


「二人とも、気をつけて行くのよ」


「「はーい」」


「お父さん、お兄ちゃん、いってらしゃい」


「行って来るよ」


「行ってきます、鈴」


お兄ちゃん、制服似合ってるよぉぉ。


送ったのはいいのですが、何か胸騒ぎがします。


◇◇◇


自宅から駅まで歩いて10分、電車で20分程掛けた先にある鈴丘中学校理事長が掛け持っている実乃鐘高校に向かう為にホームで電車を待っている所です。

朝早い為にホームにいるのはスーツ姿の会社員と学生が十数人。

そこに一人の気配が近づいてくる。間違いなく僕の方へと近づいてくるその気配の人物はポンッと肩に手を乗せて声をかけてきた。


「おはよう、蓮地。早いね」


「おはよう、いつき。君もでしょ」


「まあね。距離が距離だからね」


凉衣樹すずごろもいつき。僕の昔からの友人いわゆる幼馴染み。

身長も170近くあり、中学では陸上100メートルで活躍をしていた。因みに僕も陸上してました。

勉強もできる、特に理数系が 。しかも顔も良い。こいつはラブコメやハーレム系ラノベでよくでてくるイケメン幼馴染みです。


そして、幼馴染は今もホームの女性達の注目を浴びています。妬みとかは無い。只ここにいづらいという事だけです。早く電車来てほしい。


「どうかした?」


「何でもないですよ


「ひどいなぁ他人行儀なんて。何かあれば言いなよ。特に好きな人ができたら全力で力なるから」


「いいよ。


「まだ、好きな人がいないだけかもしれないじゃないか⁉」


「興味持てないのに好きな人なんかできなよ!」


「……それもそうだ。ごめん」


なぜ謝るの?樹は悪くないのに。

だから始めから許してます。まあ元々許す許さないなんて無いですけど。

でも悪いと思うなら、


「それに、恋愛相談に関しては僕の方が上だし」


「これには愚の音もでないな」


ちょっと意地悪に言ってみた。これでさっきのは帳消し。

ごめん。でも、事実だから。


『7時10分発○○快速○○行きの電車が到着します……』


シュー ピンポン ガコン


「行こうか」


「…え?うん」


「蓮地、どうした?」


「何でもない。行こ樹」


両手と顔をふって否定したけど、何か一瞬視線が向けられた気がしました。

でも見た限り誰も見ていなかったし、知り合いもいなかった。気のせい、かな?



「もしもし。……はい、かしこまりました」


◇◇◇


「うわぁ、凄いな」


「うん、そうだね」


実乃鐘高校に着いて見た光景はまだ入学式まで時間がある為部活勧誘の熱気と新入生の活気で賑わっていて桜が霞んで見えてしまいます。

因みに新入生の募集総数は320人でした。ここにはその合格した新入生120人の殆んどと部活勧誘の先輩達によって正門広場は埋め尽くされています。


「ど、どうする蓮地?」


「とりあえずクラスが発表されているかもしれないし靴箱の玄関口前に行ってみる?」


「だね」


僕達二人は今は勧誘を避けながら玄関口前に

向かった。


「つ、着いたぁ」


「はぁ、はぁ。人、密集し過ぎだろ⁉」


口調荒っぽくなってるけど同感。

さてクラス発表の張り出しは


「…あった、樹行こう」


「待って」


という訳でクラスの張り出しを見てみます。

勧誘の方に集まっている生徒もいれば僕達みたいに自分のクラスを探している人もとうぜんながら多くいました。

「ねぇあの人かっこよくない」

「クラスどこかなぁ?一緒だったらラッキー」

「それは私よ」


徐々に自分のクラスを見つけた生徒。

女子限定で樹への視線と会話が増えてきました。また樹に向く女子の好奇心等視線がそこらじゅうから感じる。

男子の妬みとか。


「蓮地は何組?」


「えっと、………二組」


「それじゃあよろしく」


同じクラスみたいだけど一応見てみます。

樹はサ行だから


「…あ、ホントだ。どうする教室行く?」


「行こ行こ。俺はここの空間のプレッシャーに押し潰され兼ねないよ」


それは女性からの向けられてる視線がもう嫌だと言っているようにしか聞こえないよ。が聞いたらどうなるか。

でも、確かにここにいるのは僕もきついので一年二組の教室に向かうことにしました。

教室は三階。正面入り口の突き当たりの階段を上がって右に曲がった先に一年二組とかかれたプレートがあった。

外に殆ど新入生がいて教室はまだそんなに人はいなかった。


「あ!


二組の教室から栗色のロングヘアをポニーテールに纏めた見覚えのある女の子が僕らに気づいて声をかけながら近づいて来る。


「おはようゆき。もしかしてこのクラス?」


「そうだよ。おはよう蓮」


「おはよう。それにしても随分早いね」


「まぁ早かったのは5時くらいに起きちゃったから」


早朝のバイトか!じゃなくて。


「これも縁かな?」


「そ、そうかもね」


「顔赤いよ?」


「ああ、何でもない」


小羽織雪こばおりゆき

もう一人の幼馴染みの女子。

雪は中学でテニス部に入っていたので体引き締まっていてスタイル良く。女のある部分が大きい。更に愛らしい少年顔で何かと中学では人気でした。

けど雪は言いたい事は言う性格をしている。

まあその性格のお陰で女子テニのテニスウェア姿目当てで来ていた男子達が来なくなった。新入生が来ても同じ事。

何を言われたかは僕は知りません。


「とりあえず一年よろしく」


「うん、樹もよろしく。…あ、そろそろ時間。体育館行こ、男子二人」


雪がスマホで時間を確認して教えてくれました。もう少し三人で話したかったけど、いつでも話せるしいいですよね。

僕らは入学式会場の体育館に向かった。


◇◇◇


入学式。

席は自由だった樹、蓮地ぼく、雪という座り順で好きな座席に座り。暫くして始まり、現在、校長先生の挨拶が終わったところです。


「続いて理事長からの挨拶です。」


理事長か。そういえば中学では見たことなかったかも。

気になったので小声で樹に尋ねてみました。


「ねぇ樹。樹は中学で理事長見たことある?」


「そういえば、ここの理事長も兼任してるんだっか?確かに俺も見たことないかも。雪は」


「私もないなぁ。どんな人なんだろね」


誰も見たことないんだ。

これは鈴中の生徒からしたらレアカードを手に入れたのと同じかもしれない。


「新入生の皆さん初めてまして。私が実乃鐘高校理事長の佐野と申します―」


そうして壇上に現れた理事長は温和な感じの少し小柄で白髪混じりの人でした。少し以外でした。

だって


「以外だね。理事長ってもっと『威厳』、が強い感じの人だと思ってた」


「それイメージに過ぎないよね雪」


「そ、そうだよね」


ごめん。僕もそのイメージだった!


「――ですので、皆さんもより良い新しい学生生活を過ごしてください。」


「き、聞いてなかったね」

「だね」

「あは、あはは」


◇◇◇


入学式も終了後はクラスでのオリエンテーション。

といっても注意事項のかかれたプリントを先生が読み上げただけだったので帰るには少し時間が余りすぎていました。


「んんー!この後どうしようか」


「そうだね、入学式も以外と早く終わったしね」


「うーん、そうだ!蓮地、雪。近くに昔ながらの良い喫茶店あるみたいなんだ。お昼兼ねて行ってみる?」


「うん行く。いや、行こう!」


「僕もいいよ」


「よし決まり。じゃあ行こう」


「「おー!」」


というわけで学校近くの喫茶店に行くことにしました。


カランカラン


「いらっしゃい、三名だね。好きな席に座りなさい」


「「「はい」」」


好きな席ということで、人の心理なのか窓際端っこのテーブルに僕達は座ることにしました。


「良い感じの内装。落ち着く」


「うん。店長さんも優しい感じ」


「樹。そこは、マスターでしょ」


「そうだね」


雪そこ指摘して正解。いかにもマスターって感じの男性。

そして、本当にいい店。

珈琲の香りに多すぎず少なすぎないテーブル席とカウンター席。

流れるヒーリング曲が心を更に落ち着かせます。


キュウウ


「ご、ごめん。お腹空いちゃった」


雪、台無しだよ。でも、確かにお腹は空いた。


「先にお昼のメニュー頼もっか」


「はいはーい。私はナポリタンとオリジナルブレンド!」


「俺は…やっぱりオムライス、かな。蓮地は?うぉ!」


どうする、Aランチセットはカレーにナポリタンのついてる。しかし!デミグラスソースのオムライスというのも捨てがたい。

どうすれば。


「…ねぇ、蓮もしよかったら私の、その、ナ、ナポリタン少し食べる?」


「なら俺はオムライス頼むから一口あげるよ」


「…なんで分かったの?というか良いの?」


「あはは。だって蓮、二つのメニューを凄い顔で凝視してた感じだったから。その代わり…」


「僕が頼む物と少し交換ね」


「うん!」


良い笑顔するな雪。


「樹もそれで良い?」


「良いけど、頼む時はカレーライスじゃなくてで」


「了解」


とまあ仲睦まじくメニューを頼み待っていると雪のが先に来た。


「お待たせしました。こちらがナポリタンとオリジナルブレンドです」


「美味しそうだよ」


ケチャップとの赤色具合が絶妙なバランスで仕上がっています。


「こちらがデミグラスソースのオムライスです」


「うん、良い香り」


うんうん。卵とバターの濃厚な香りをよく煮込まれたのがよくわかるデミグラスソースが包み込んでいる。


「最後がカレーナンとブルーマウンテンです」


スパイスの良い香りで食欲が引き立てられます。そして、酸味のあるブルーマウンテン。では早速


「「「いただきます」」」


「う~ん、美味ひぃ。ケチャップがちょうどいいよ」


「こっちのデミグラスは濃厚!」


「スパイシーなところに子供でも大丈夫な味付け」


「「「すごいです、マスター!」」」


「恐れ入ります」


三人共共感して大声で誉めてしまいました。

マスターは少し困った顔にはなっていましたが、丁寧に言葉を返してくれました。


「じゃあ皆、交換しよ」


「では、僕のカレーから。雪、あーん」


「えっ、え!?」


「何?もしかして、の、『あーん』をされるのが恥ずかしい」


「そ、そんな事ないよ!というか何でそんなランキング知ってるの!?」


「わかってるでしょ。で、食べるの?食べないの?」


「……」


ちょっといじり過ぎたかな顔から耳まで茹でダコみたいに真っ赤になって黙り混んじゃった。


「ごめん。じゃあ、ナンをカレーに付けて自分で食って」


「まっ!……あ、あーんで、良いよ」


「良いの?本当に?」


聞き返すと雪はコクンコクンと小さく頷きました。

まあこれは自分でも恥ずかしいのですが。

もしあーんがきたら拒否せずにやろうと心に決めました。


「じゃあ、あーん」


「あー、ん。!美味しいこれ」


「「…………」」


雪が味わっているなか僕と樹はただ無言を貫き通して見つめ合っています。


「さすがに男同士では、ね。樹」


「俺は良いよ」


え?嘘!?樹があーんをこれはレアケース。いや幼馴染みという立場でしか今は見れないプレミアかも。


「冗談だよ、蓮地。カレーとナンを頂こう」


「あ、うん」


おい、脅かさないでよ。でも何故かちょっと

だけ残念な気持ちになりました。


「…じゃあ次は」


「はい、次私のナポリタン」


「う、うん」


雪が何かナポリタン持ってこっち見てるんですけど、良からぬ予感が。


「さあ、蓮。食べたかったナポリタンだよ。はい、あーん」


「ゆ、雪さん?か、顔。かおかおかお、顔が怖い」


「あーーーん」


だから顔怖いよ。しかも何でちょっと顔赤いの!?恥ずかしいの?

もし恥ずかしいなら変なテンションでやらないで。

女の子に失礼だけど危険度上昇だよ。


「ほらほら蓮、あーん」


……えーい、ままよ


「あーん…っ!うまーい!」


何かが浄化されました。ケチャップの丁度良い味付けにへたりきっていない野菜がアルデンテより少し柔らめのパスタ麺と絡んで上手い。


「ん?どうしたの、雪?」


「な、何も無いよ。次、樹。あーん」


「あーん。……美味しい」


確かにこの二人のツーショットは美味しい。ゴチです。


「最後は俺のだね。では春咲様お待たせいたしました」


「うむ、有り難くいただくとしよう」


茶番をしつつ樹からオムライス皿を受け取り一口分掬って口の中へ運ぶと


「おお!、卵の香りが口に広がりつつデミグラスソースの濃厚さが爆弾となってうまい!」


「うん本当に美味しい」


「え?あー!何かめちゃくちゃ減ってる」


「ごめんね、樹。美味しかったよ」


「よ、じゃねぇ!」


また荒くなってます。樹の素が僕ら以外の人の世に漏れないことを願います。


「「「ごちそうさまでした」」」


「…そういえば蓮地」


「何?」


「恋愛の助っ人またやるの?」


「あっ、私も気になってた。どうするの?」


雪は気になるとグイグイと前に来る。それがたまに男子に誤解されるかもしれない部分です。


「うーん、どうだろう。中学で知ってる人がいすぎたから。もし中学で知ってる人がいて高校で好きな人ができた子に教えてて助力してほしいっていうならするけど」


「けど?」


「僕がここに入学するなんてことわからないよね」


「そっか」


樹のその一言は何故か僕には納得と同時に安堵したように感じた。何故?

まあ今じゃ出会い系サイトとかで恋愛する人もいるしね。


「でも、気づいたとして、最初の人は靴箱探しからだけど」


「確かにそうよね。その人は苦労しそう。食べ終わったしそろそろ帰る?」


「そうしようか」


「帰ろう」


◇◇◇


カチャ


「ただいま」


「おかえりなさい」


扉を開けたら妹が上がりかまちの近くくらいの床板の所に立って待っていました。

一体、いつからいたんでしょうか。


「お迎え、ありがとう鈴。嬉しいよ」


笑顔でお礼を言うと鈴はとても嬉しそうな表情を浮かべた。

こういう顔をするから頭を撫でたくなってしまうんです。

でも、今は我慢。

とりあえず靴脱ごう。


ピンポーン


「誰だろう?」


「郵便かな?僕出るよ」


カチャ


「はい、どちら…」


僕の今日一日の出来事が夢だったのかと考えさせられました。

白ブレザーの制服に膝迄しっかり下げられた白黒のチェックスカート。

髪はふんわりとした綺麗な黒髪ストレートロングヘア、小顔で美顔。清楚な雰囲気がある女の子がニッコリと笑いかけてきました。


「恐れ入ります。初めまして春咲蓮地様。やっとお会いできました。わたくしと結婚してください」


これが僕と彼女のいきなりプロポーズの出会いでした。

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