花ざかり平安料理絵巻 桜花姫のおいしい身の上
来栖千依/ビーズログ文庫
序章 かくして姫君は台盤所に立つ
その1
「そろそろいい頃合いかな」
じっと食材の変化を見守っていた少女、
白い湯気がぽっかりと浮き上がり、ほっとする
なめらかな
桜子は、
鍋にくぐらせて一口分を
高鳴る心を落ち着かせて、そうっと口元に運ぶ。
料理をしていて、最も
「その一口、もらった」
後ろから
あっと思った矢先、匙は桜子の口ではなく、
「おいしい! やはり桜子の料理は格別だね。あれ、なぜ
「口に入れる寸前で食べ物をくすねられたら、
じーっと
「味見しなくても、桜子の料理はおいしいに決まっているよ。
「また調子のいいことを言って──っ!」
そろりと
「俺は君の料理がないと生きていけない。君が許してくれるなら、歌に
「絶対に
ばたばたと暴れれば、青年は「
「来るのが
「もう完成間近だから
「ええ?
「じゃあ、庭にあるしだれ桜に
「それも
不満げな視線を送られて、桜子はどきりとした。
「料理は熱々で出すから安心して。さあ、母屋へ戻って!」
体の向きを変えさせて、
「さて、最後の仕上げをしないとね」
「完成だわ!」
この庭が好きな青年は、いったいどんな顔をして待っているのだろう。
桜子が母屋に足を
その表情がどんなものなのかは、桜子しか知らない──。
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