ひっくり返して進むだけ?
通行人A
第1話
「ここはどこなんだろう?」
原っぱの中にポツンとただ一人たたずんでいる田中一(36)。
「あ、そうだばあちゃん家の畳をひっくり返して…で、なんだっけ?」
田中一は記憶力がない。ちなみに若年性認知症ではなく、興味のないことは忘れてしまう体質だ。
「うーん、考えても無駄か~。」
しょうもない男である。
ここで彼に起こったことを一ミリの興味はないが、説明するとしよう。
サラリーマンであった彼は(奇特な会社もあったもんです)久しぶり(入社から一度も使ってない)の有給休暇を使い祖母の家に帰って来ていた。
今は亡くなってしまった祖母の家をリフォームするためである。
「うわっ…腐ってる…この畳!急いで剥がさないと周りも腐る~。」
彼はもちろん持ち上げた。しかし彼が思っている以上にこの家は老朽化していたのだ。
ミシッ。バキッ…。
「嫌な感じはするけどいっかあ。次々はずしてこー。
あっ。」
二枚目を外した瞬間、畳でバランスを保っていた家はついに崩れ落ちた。
崩壊前の家に潰されて圧死これが彼の前世の死因である。
だが、潰されて死んだ彼はその事に一分の興味のすらないので忘れていた。
「あー、それよりも腹減った!!」
これである。
とりあえず、食べ物探しに行こうと立ち上がり進もうとした瞬間。
「いてっ。」
見えない壁に阻まれた。
どこに向かおうが見えない壁に阻まれ、動けなかった。
「俺がうごける分って一畳分しかない!!」
途方にくれているとスマホの着信音が鳴る。
「メールだ。久しぶりだな。誰だろう。」
"件名 神だよーん"
「ん、消そ」
メールは消去された。
また、着信音が鳴る。
"件名 神ですが何か?"
「神様詐欺でも流行ってんのかな。」
また、着信音が鳴る
"件名 神だ"
メールは消去された。
この行為が五十回ほど繰り返され、田中一はようやく本文を読む気になった。
"件名 本当に神なんだってば…はあー"
"君の死因があんまりにもアホらしいので異世界に転生してもらうことになったよ。
君とは会ってるはずなんだけど…忘れられてるかもね。
本題に入るけど…君には現在一畳しか行動範囲はないよ
君、今五歳に若返ってるから寝るには困らないはずだよ。
君にいくら聞いても安全でゆっくり寝れる場所としか言わないんだもんしょうがないよね~アハハ。
とりあえず、今後はメールに従って行動してね。
ある程度したら外に出れるから頑張ってね。じゃあね。"
「なんだこれ。転生…わからん。確かに手と足は短くなってる」
田中一は転生しても田中一のままだった。
着信音が鳴る。
"件名 クエスト
本文 腹筋を50回しよう。"
「これやんのかあ、出れないしやることないからやるしかないかな…。」
興味が起きれば彼の行動範囲は速い。
「47…48…49…50…はあ、終わったあ。」
着信音が鳴る。
"件名 クエスト達成しました。
本文 クエスト達成報酬
クエストアプリ、パン、水、畳一畳分のエリア解放"
「パンに、水かあ。後は畳一畳のエリアって…え、」
四方に、畳が見える。
着信音が鳴る。
"件名 チュートリアル
四方いずれかの畳をひっくり返すと自分のエリアになります触れた瞬間ひっくり返るので注意しよう"
「とりあえず、横かな。えい!!」
四方の畳はなくなった。
「広くなったかな。進めるかな…痛っ。でもさっきより広くなったかな…まあ、いっか。寝返り打てるし」
そんなこんなで田中一の物語は始まる。
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