第84話 ふたりはケモミミ

 今は二十時ちょうど。五人大戦は終わった。俺は力尽きてベッドに横たわっている。女子四人は脱ぎ捨てた服を着て雑談をしている。


「楽しかったねー」


 ルナは元気だ。あれだけの運動量だったのに、まだまだ体力が有り余っているようだ。


「まだまだ時間が欲しかったな」


 リンは物足りないみたいだ。お肌がツヤツヤしているのは気のせいか?


「私は満足かなー」


 レイナさんは嬉しそうだ。爽やかな笑顔だ。


「僕は恥ずかしかったよぉ。皆すごすごだったよぉ」


 ソラは顔が赤い。でも満足しているようだ。


「お腹空いたねー。帰ろっか?」


 ルナがそう言って立ち上がった。それにつられて他の三人も立ち上がった。


「拓海君、また明日」


「拓海、体を鍛えるんだ」


「拓ちゃんまたねー」


「拓海君、僕の事、何回も可愛いって言ってくれてありがと」


 俺は起き上がった。


「みんなありがとう。これからもよろしくです」


 俺は心からお礼を言った。四人は部屋を去っていった。


 つ、疲れた……最後は内臓ごと持っていかれそうな感覚だった……体、鍛えようかな……


 俺はまたベッドに横になった。体力を使い果たしたせいなのか眠気に襲われ目を瞑った……






「……様……マスター様……ちゃんと発動出来ました」


 聞いた事のない誰かの美しい声が聞こえる。何故か頭がふわふわする。


「うぬ。それは良かったのじゃ。英雄王の奇跡に新しく追加した《夢見心地ゆめみごこちの境地》はちゃんと発動したのじゃな。この奇跡は対象者を夢の中にいると錯覚させるのじゃ。更に発動中の間の事は忘れてしまう便利な奇跡なのじゃ」


 何か訳の分からない事を言っている。誰だ? これは夢なのか?


「マスター様。夢見心地の境地を作らなくとも、直接会うと良いではありませんか?」


「それはそうなのじゃが、記憶を封印しておる此奴に会ってもつまらぬのじゃ。夢で会った方が何かと便利なのじゃ」


「イムカは生まれたばかりなのでマスター様のお考えがよく分かりません」


「そのうちお主にも分かる時が来るのじゃ」


 俺の近くに二人居るのか? 眠気が酷くて目を開けるのが辛い。眠気? 夢の中なのに? 頭がふわふわして考えがまとまらない。やっぱり夢なのか?


「それにしてもじゃ。英雄王のお主を創造してすぐココに来たら、五人で仲良くお楽しみ中とはの……出るに出れなかったのじゃ。心配して損したのじゃ」


「マスター様はこのお方に会いたくてソワソワしてましたからね。大好きなのですね」


「ちっ、違うのじゃ。別に拓海に会いたくて来た訳ではないのじゃ。お主の英雄王の奇跡の発動練習の為に仕方なく来たのじゃ」


「フフ、大好きは否定しないのですね。イムカの練習ですか? そういう事にしておきましょう」


 俺は頑張って目を開けた。目の前に二人いた。頭がふわふわするし目の焦点が合わない。本当に夢の中か?


 俺の目の前にいる二人。一人は青を基調としたスカート丈の短いコスプレ着物を着ている。狐のケモミミで銀髪の幼女。髪の長さはお腹付近まである。お人形さんと思ってしまうほどの整った顔立ち。めっちゃ可愛い。


 もう一人は白髪で猫のケモミミの美少女。髪は首の後ろ付近で一つ結びにしているっぽい。髪の先端がチラチラ見えるが膝くらいの長さがある。


 服は白を基調としたスカート丈の短いコスプレ着物。同じ学年というよりは学校の先輩って感じだ。


 身長も高い。俺と同じくらいか? 体もナイスバディすぎる。顔も小さい。八頭身か? くびれも最高だ。ルナでも顔、体どちらも負けそうだ。


 ここまで完璧な美少女は見た事がない。本当にこれほどの美少女が存在するのか?


「あら、マスター様。拓海様が目を開けてこちらを見てますよ」


「ぬっ。われではなくイムカを見ているとは……まぁ、仕方ないのじゃ。最高傑作なのじゃからな」


 俺は起き上がりベッドに座った。目を開け二人の会話を聞いて幼女がマスター様。白髪の美少女がイムカという事が分かった。


「お二人はどちら様ですか?」


「ふむ。我らが何者かは気にするな。お主は夢を見ているのじゃ」


「そうですよ。深く考えてはいけませんよ。目が覚めて夢が終わりますよ」


 俺は白髪の美少女の言うように深く考えるのをやめた。夢から目覚めると可愛いケモミミ幼女と素敵すぎるケモミミ美少女とは二度と会えない。もったいない。俺! 起きるなよ!

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