第70話 コン様も拓海君のお嫁さんになりたい?

 コン様は着衣の乱れをなおしている。その姿がとってもエロい。


 俺が見とれていると目が合い、ほほ笑んでくれた。俺も脱ぎ捨てた甚平を着た。


「さて、もう少し話をするのじゃ……じゃが少し疲れたのじゃ。拓海、膝枕をするのじゃ」


「俺も疲れたので膝枕はお断りします」


「なっ、なんじゃと! われをあんなに堪能したのに、お主は膝枕もしてくれない……悲しいのじゃ」


 俺は布団に寝転がり、コン様を見ながら布団を手のひらでポンポンと叩いた。


「ここ、空いていますよー」


「う……うぬ……仕方がないのじゃ。お主も疲れているのじゃ。そこで我慢してやるのじゃ」


 コン様は俺に近づいて手を取り、腕枕にして寝転んだ。コン様の顔が近い。


「膝枕がダメなら腕枕なのじゃ。これならお主も楽なのじゃ」


「コン様。俺、ずっとこのままでも良いですよ」


「ずっと良いのか? ——だだっ、ダメなのじゃ。お主は人間界に帰るのじゃ。ずっとはダメなのじゃ」


 俺は慌てているコン様を見て笑ってしまった。


「冗談ですよ。それにしてもコン様はこの世界を作った人物とは思えませんね。かわいいです」


「むぅぅぅ。われがこの世界を作ったのは本当なのじゃ。寂しかったから作ったのじゃ」


「寂しかった?」


「……そうなのじゃ。寂しかったのじゃ。われは目が覚めると何も無い真っ暗な空間にいたのじゃ。目覚める前の記憶もなく、何者かも分からないのじゃ。ただ、無から何でも作れる事だけは知っていたのじゃ」


 コン様は俺と目を合わせず、俺の胸を見ながら話をしている


「その空間に……神世界を作ったのじゃ……」


 コン様の声が悲しい声に聞こえた。


「えっと……コン様、俺がそばにいます。これかもずっと一緒にいます。英雄王ではないけど、魂の寿命は永遠ですよね?」


 俺がずっとそばにいると伝えると、コン様は胸から俺の顔に視線を移した。


「確かにお主は英雄王の能力がなくなっても、魂の寿命はないのじゃ。お主の申し出は嬉しいのじゃ」


 コン様は目線を俺の胸に移した。


「だけどダメなのじゃ。ルナたちがいるのじゃ……今はまだダメなのじゃ……」


 コン様は何かを考えているようだ。視線が俺の顔と胸を行ったり来たりしている。しばらくして俺を見つめてきた。


「……二千年後、お主が一人になった時……転生せずにわれをお嫁さんにして、ずっとそばにいてくれると嬉しいのじゃ……」


 二千年後……英雄王として生まれた俺の魂に寿命はない。だけど普通の魂の寿命は二千年。それと同じくルナたちの寿命も二千年……


「コン様はそれで良いのですか? 二千年も待てるのですか?」


われは創造主。悠久の時の流れを生きてきたのじゃ。お主たちとは根本的に考え方が違うのじゃ。二千年くらい待てるのじゃ」


「……分かりました。俺で良ければ二千年後、俺のお嫁さんになって下さい」


「はい。なのじゃ」


 コン様は俺の目を真っ直ぐに見つめて返事をした。そしてコン様は俺を抱きしめ、顔を胸に埋めてきた。


「……ところで、俺の英雄王の能力は何故なくなったのですか?」


 俺がコン様に尋ねると、コン様は抱きしめるのをやめて起きがった。


われがお主から英雄王の全ての能力を消去したのじゃ」


「へっ⁉︎ コン様が消去した? 何故ですか?」


 俺も起きてコン様のすぐ近くに座った。


「お主の魂はわれが治さずに、自然治癒で治したのじゃ。五百年の時間を要したのじゃが、その間に寝ぼけて英雄王の奇跡を使ったら、お主は消滅するのじゃ」


「だから英雄王の能力を消したと……何故、自然治癒なのですか? コン様が治した方が早いのに」


「それはいい質問なのじゃ」


 コン様から褒められた。わーい。——って何処のテレビ番組だ!


「お主の魂は消滅寸前だったのじゃ。それをじっくりと自然治癒する事により、更に強い魂になるのじゃ」


「強い魂ってどのくらい強くなったのですか?」


「完全に魂が修復した今のお主は、英雄王の時の十倍の強さなのじゃ。それでも我より弱いのじゃ」


 コン様はドヤ顔をした。ドヤ顔もかわいい。


「じゅ、十倍⁉︎ 十倍は異常ですよね!」


「そうなのじゃ。そこまで強くなるとは思っていなかったのじゃ。せいぜい二倍と思っていたのじゃ。いろいろな偶然が重なったのじゃ。奇跡なのじゃ」


 ヤバイぞ。チートを超えるチートになってしまった。俺はどこぞの戦闘民族かよ!


 でもコン様は更にその上をいくチート……二千年後、コン様をお嫁さんにしても大丈夫なのか?


 いやいや、コン様をお嫁さんにしても大丈夫だ! ……大丈夫……だよ……な?








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