第55話 殺意が芽生える

 リンの言った三人仲良くお風呂に入る……それはお風呂に入るだけでは終わらないことは、思春期の俺は分かっている。


「なぁ、二人共。ちょっと落ち着かないか? 俺は落ち込んでいないからさっ」


 俺は席を立ち、二人から距離を取るために、後ずさりをした。


「ねぇリンちゃん。拓海君の初めてはどちらが貰う?」


「そうだな。やはりルナだろうな。第一夫人だからな」


「いいの? ありがと。じゃあ、拓海君の一番搾りはリンちゃんにあげる」


 俺の言葉を無視して、二人は話し合いをしている。


 ルナとリンは、なんてエロエロな話をしているんだ。二人共、見た目は美少女なのに……


 俺は改めて二人を観察した。


 ルナの身長は百六十センチくらい。 二百四歳だけど同じくらいの年齢の女の子にしか見えない。


 マジでかわいい。学園一の美少女ってレベルじゃない。テレビで見るアイドルより可愛いと思う。


 胸も大きくてスタイル抜群。さっき触ったけど、超柔らかい。マシュマロおっぱいだった。


 ルナの目は濁りのない澄んだ青色。髪は茶色、赤色のリボンでツインテールをしている。胸のあたりまで髪はあるので、ほどいたらかなり長いだろう。


 そしてリン。かわいいと言うよりは美人。おそらくリンを見たら、大抵の男は見とれてしまうだろう。


 髪は銀色。長さは胸あたりまであるストレート。目はエメラルドのような鮮やかな緑色。


 身長は俺と同じ百七十センチくらい。雑誌でよく見るモデルのようなバランスの良い体形。胸は膨らみがわかる程度の小ぶり。


 ルナとリンが二人一緒にいると、誰も敵わない無敵感がある。そんな二人が俺の恋人で、将来は俺のお嫁さんになってくれる。


 これは夢か、もしくは今日死ぬんじゃないかと思ってしまう。今から三人でお風呂に入って、大人の階段を二段飛びしそうな勢い。嬉しすぎる。


「あのさっ、二人共お腹は空かない? 今は十一時半だしね。食べてからでもお風呂は良いんじゃないかな? お風呂もお湯をためた方が良いよな?」


 さっさとお風呂に行きたいが、俺も性欲丸出しで話をすると、ルナとリンがドン引きして気が変わるかもしれない。


「ちっ、もうそんな時間か」


「あー。時間見てなかったね。残念」


 二人も掛け時計を見て時刻を確認した。なんだか雲行きが怪しい。


「ん? どうした?」


「残念だが、一緒に風呂に入るのは中止だ」


 えっ、ええっ! 何故だ! どうしてだ! 大人の階段を登れないじゃないかぁ!


「へっ、へぇ。どうして中止なんだ? べっ、別に、どうしてもお風呂に入りたい訳ではないけど、理由を聞きたい」


「拓海君。ごめんね。お昼頃にパパ達がここに来ることになっているの」


「父上達が来た時に、三人で風呂に入って、アレの真っ最中を見られたら流石に恥ずかしいからな」


「そっ、そうだな。恥ずかしいな。ところでルナとリンの母親は来るの?」


「来ないよ。パパ達二人だけだよ。拓海君と三人で話をしたいだって」


 ルナとリンの父親が来る……ついに来てしまった。俺の人生最大のピンチが。だけど準備は万端。俺は英雄王になっている。


 それよりも、それよりもだ! ルナとリンと一緒にお風呂に入れなかったことが悔しい。


 ちくしょう、軽く殺意が芽生えるじゃないか!


 そして俺! バガバカバカー! さっさとお風呂に行けよ! 普段はしない、爽やかイケメン的行動をしたのが間違いだった!


 爽やかイケメン的行動なんて二度とするもんかぁ! コンチクショー! 行為を見られて上等じゃー!


 ……いや、流石に見られるのはダメだな。うん、ダメだよ。


「だからね、お風呂はなしでお話しましょ。まだ拓海君に聞きたいことがあるしね」


「そうだな。父上達が来るまで話でもしようか。拓海、また今度だな」


「……分かった」


 ルナとリンはダイニングテーブルの椅子に座った。俺は渋々ルナとリンの正面に座った。


 まっ、まぁ、これから先もお風呂に入る機会はあるはずだし、いつになるかは分からないが、二人とアレもできるはず。


 俺は目の前の美少女二人を見て、ものすごく残念な気持ちでいっぱいになった。


 残念感が顔に出ないように必死に笑顔を作った。









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