女神達が俺のお嫁さんになりたいそうです。
さとうはるき
序章 女神が恋に落ちるまで
第1話 死にました
……くそっ……が……。
道路沿いの歩道の壁を背に横たわる俺、獅子王拓海。黒髪のショートヘア、黒目、生粋の日本人。
高校二年生の思春期全開の十六歳。
顔はそこそこ良いほうだと思う。最近一年に告られたからね。好きな子がいるからって断った。
告白してきた女の子は、二つおさげ黒縁眼鏡の地味子さんだった。
……ふむ、一年生からの告白を思い出すとか走馬灯か?
俺は学校帰りのたった今、軽自動車に跳ねられ飛ばされて壁にぶつかったんだよ。死ぬよこれ。体の色々な所が痛い。
歩道を歩いていたら靴ひもがほどけているのに気がついて、結び直している最中に軽自動車が突っ込んで来るとか、避けられる訳ないじゃん。
ジャンプして避けようとしたけど無理でした。だって俺は運動音痴の帰宅部だもの。
田んぼだらけの田舎で人は少ない方とは思うけどすでに沢山の野次馬が集まってるよ。
グッバイ、我が人生。こんな事なら一年の告白断るんじゃなかった。
あんな事やこんな事出来たかもしれないのに。チックショー!
俺はキスをしたこと無いんだ! もちろんアレの経験もない! ……夢の中ではいっぱい経験したけどさっ……ふっ、虚しい……
遠くから救急車のサイレン音が聞こえてきた。
や……ばっ、意識が遠……くなって……来た……
……あ……れ? ……なんか……意識がある……
俺、多分死んだよね? ここは救急車の中? サイレンの音とか聞こえないけど?
事故で鼓膜破れてるのかな。さっきまで聞こえていたから破れていないよな。
体の色々な所が痛かったのに、全身どこも痛くないのですが?
真っ暗だし……あっ、目を閉じていた。ちょっと怖いが開けてみるか。
あおむけで寝ている俺はゆっくりと目を開けてみた。
「ここはどこだ」
俺の見た光景は天井や壁や床は認識できるが、全面真っ白な広い空間だった。
蛍光灯などは一つも無いのに明るい。まぶしいわけでもなく、暗くも無い。昼間の快晴の時と同じくらいの明るさだ。しかも無風。
こっ、これはもしかして、よく小説とかにある女神様が出て来て、貴方を異世界にご招待。と言うやつでは?
そしてチート能力貰ったりとかして、可愛い女子と出会って恋に落ちるとか。
いや、もしかしてグロくて気持ち悪い生物が大量に出て来るかもしれない。そういうキモいのは遠慮願いたい。
俺は混乱しながらも色々と考えていた。
まて、こういう時こそ落ち着くんだ。この異様な状況で俺は何を考えてるんだ。
おかしいだろ。さっきまで壁を背に横たわって意識がなくなったんだぞ。たぶん死んだぞ。
寝ていた俺はとりあえず起きて座ってみる。
そうだな……まずは体の確認からだな。何か起きた時の為にもな。
体の痛みは無し。外傷も……なさそうだな。体が透けているとかもないな。普通に触れるな。
機械の体……では無いと思う。体を動かしても金属音がしない。
ところで、何も起きないのですが? 目を開けてからそこそこの時間が経ったよね。
持っていたはずのカバンやスマホも無いし。何故か学校の制服は着てるけど、もし制服も無くて素っ裸だったら一人でも恥ずかしかったぞ。
俺は立ち上がった。
「誰かいませんか! こんにちは! こんばんは!」
何も起きる気がしなかったのでとりあえず叫んでみた。
何も起きないじゃないですか。ここに来てから結構時間たつよ。まさかこのままイベント起こらないでずっとこのままってことはないよな。
俺は少し怖くなっていた。そう思っていたら俺の三メートル先に人が一人入れそうな黒い四角い立体物が現れた。
「なっ、何だ?」
俺が驚いていると黒い四角い立体物は粉々に割れた。
そして中からフリフリのお伽話に出て来そうな可愛い服を着た女の子が出てきた。
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