125話.空間術を極めるということ

 クロムは自分の推論を1つずつ検証するために、目の前に大きな氷柱を作り出した。

そして、他の全ての次元においても氷柱が作り出されていることの確認までを行った。


「さてと、まずは……」


 クロムは、今いる次元以外にある氷柱のうち、1つだけを破壊してみた。

そして、そのことが他の次元に反映するのかを確認するが――


「氷柱を壊した次元以外の氷柱は全てそのまま残っているわけか」


 続いて、クロムは少しづつ氷柱を破壊する次元を増やしていった。

始めのうちは、やはり他の次元に反映しなかったのだが、ある本数破壊した時に全ての次元から氷柱が消え去ったのだった。

そこでクロムは最後に氷柱を壊した次元に一つに氷柱を作り出したが、他の次元に氷柱が作られることはなかった。


「なんとなくわかってきたな」


 クロムが様々な検証をしてわかったことは次の内容だった。

①この世界には全部で100個の並列世界が存在して、それが空間術で干渉できる次元であること。

②100個のうち、今クロムたちが存在している次元がメインの次元であり、この次元で起こったことは無条件で他の次元にも反映される。

③メイン以外の次元で起こったことは基本的には他の次元に影響しない、ただし過半数以上の次元で発生したことは全ての次元に反映される。


「これが空間術の極意ってことなのか……??

 でもそう考えると、あの時……

 消し去ったはずの創造神の攻撃が俺の肩を切り裂いた理由はこれか」


 クロムは創造神と対峙したときのことを思い出しながらそう呟いた。

あの時のクロムにとっては理解不能であったが、今のクロムには何が起こっていたのかを正確に想像することができていた。

クロムがこのメインの次元で創造神の風の刃を消し去った時、創造神はその裏で過半数以上の次元で風の刃を復活させていたのであろうと。


「空間術の使い手同士の戦いはいかにして過半数以上の次元を自分の管理下におけるか…… が最重要ということか」


 クロムがそう結論づけると、嬉しそうな声が頭の中で響く。


「さすがだね♪ そこまで自分で検証と分析をしちゃうとは思ってなかったよ」


「そりゃどうも。

 でもまだわかってないこともあるからな」


「何がだい??」


「さっきカオスも言ってたが、この次元牢や俺のルームで作る空間が今いるこの次元以外には存在していなかった。

 それがどういう理屈でそうなっているかは知っていないといけない気がしてる」


「ここまで自分で考えて到れたいたれた君には特別に教えてあげるよ、おそらくそれは考えても確証を得れないものではあるからね」


 そういうとカオスは楽しそうに語り始めた。

まずこの世界に存在する100の並列世界は、創造神がこの世界を創った時に併せて創ったものであること。

そして、この次元牢は今クロムたちがいるメインの次元とそれ以外の次元の間にある<次元の狭間>に無理やりに専用の空間を作り出したものであること。

ルームで作った空間も同様であること。

なので、<並列世界間での事象改変の法則>の外側にある特別な空間であること。


「さらにこの専用空間には1つ特別な特徴があるんだ♪」


「勿体ぶらずに早く教えろよ……」


「ひどいなぁ、きみは。

 この特別な空間は空間神のみ創りだすことができる、例え上位神である創造神であってもこのルールの中にある」


「??

 そうは言うけど、神にすらなっていない頃の俺でもルームが使えてたぞ?」


「それは僕が与えた<空間神の加護>の恩恵の一つだよ。

 だから、僕にいっぱい感謝をしてもいいんだよ??」


「はいはい、ありがとな」


「イケズ……

 <並列世界間での事象改変の法則>を理解することが空間術を極めるということ。

 そして、創造神を上回るための切り札が<ルーム>による特殊空間を使いこなすこと。

 特殊空間を作ることもその空間への出入り口を作ることもどちらもクロム、きみにしかできないことだよ」


 カオスは自分のことを軽く流すクロムの態度に若干拗ねながらも適切なアドバイスをするのであった。

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