121話.創造神

 クロムは氷の杭アイスランスが消えてゆくのを不愉快そうな表情で眺める。


「このタイミングでの創造神様のご登場、その理由を聞かせてもらえるんだよな?」


『カオスの企みたくらみとお前の成長を面白おかしく見ていたが…… まさか半神である精霊王を倒せるとはな。

 目障りめざわりだから消すことにした、それだけだ』


「今なら消し去るのは容易いたやすいと言いたげだな!!!」


『無論だ』


 クロムという存在への不快感は一切隠すことなく、しかしクロムを脆弱な存在として見下す創造神。

クロムは創造神から感じる<存在力そんざいりょく>のようなものがあまりにも巨大であり、絶望的なほどの力の差があるであろうことを感じるのだった。

そしてクロムはアキナに頼む、仲間のみんなと共にルーム内に避難してほしいと。


「クロム……」


 クロムは創造神から視線を外すことなく、アキナにお願いをする。

その願いを受け入れたくないアキナであったが、この場に残ることはクロムの足を引っ張るだけであることを理解できるがゆえに、仕方なく受け入れてルームに退避することにした。


『話は終わったか?

 最後の会話だ、少しぐらいなら時間を作ってやるぞ』


「お前を排除したあとにゆっくり時間を作るからいいよ」


 クロムのわかりやすい煽りに、創造神は不敵な笑みで応えるのだった。

そして、二人ともが声を上げて笑い始めた。

創造神の隙を窺ううかがうクロム、しかし高笑いを続ける創造神からは一切の隙を見つけることができずにいた。


『何もしてこぬのか?

 ならばこちらからやらせてもらうぞ』


 クロムが行動を起こせずにいると、創造神は退屈そう表情を浮かべながら右手を前にかざす。

すると、創造神の右手から巨大な氷の塊が発射される。

クロムはそれを棒立ちのまま蒸発させると、反撃を開始する。


 創造神が放った氷の塊より一回り大きい氷の塊を創造神の正面に放ちつつ、創造神の左右より土の杭アースランスを放つ。

しかし、それらは創造神に当たる前に全てが消滅した。


「やはり空間術で防ぐか……」


『あの程度の攻撃は常時展開している次元壁で十分だからな。

 せめて―――』


 創造神の言葉を遮るように、創造神の全方位より全力の雷魔術を放つクロム。

轟音と激しい発光を伴ったその攻撃は創造神の言葉をかき消すことには成功したが、傷をつけることは叶わなかった。


『神の言葉は最後までちゃんと聞くべきだと思うのだがな』


「お前の言葉に価値なんざ感じないからな、隙があれば色々試すさ」


『弱者らしい言い訳だな。

 カオスもこの程度のやつに何を見出したのやら』


『お父様にはきっとわかりませんよ、自分以外の存在は自分の娯楽のためのみに存在していると考えているあなたではね』


『力なき者の言葉は我には届かぬよ』


「示してみせさ、生き残るためにもな!!!」


 クロムはその場から姿を消す。

そして、ある場所に姿を現すと同時に巨大な火球を放ち姿を再び消す。

別の場所に姿を現しては無数の氷の杭を放ち姿を再び消す。

そんな攻撃を高速のうちに繰り返したクロム。

 しかし、クロムのあらゆる攻撃は創造神をその場から一歩として動かすことができなかった。

クロムのあらゆる攻撃は全て創造神に届くことなく、全てが別次元にかき消された。


『はぁぁ……、興ざめだな』


 創造神は退屈そうに左手を払うように振る。

それによって発生した風の刃がクロムを襲う。

クロムは創造神への対抗心も込めてあえて回避することなく、次元の壁を作って防ぐことにした。

創造神の放った風の刃がクロムの次元の壁に触れて消え――


……クロムの右肩から血が噴き出した。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る