75話.油断と慢心の結果
クロムの発言によりこの場は荒れていた。
クロムの突然の宣言とそれを素直に受け入れるわけにはいかないディアナたち。
その話し合いは平行線であり、落とし所を見失っていたのである。
「とりあえずディアナさんたちの気持ちは理解できるけどさ、いまやこれは俺の個人的な理由によるものになってるんだよね。
ただ……
カルロたちが戻るまではこのままこの集落で休んでいてもいいかな?」
「それは構わぬが……」
この場でこれ以上語り合うことの無意味さを理解している面々は、ただ口を閉ざすことしかできなかった。
そしてこの場に居心地の悪さを感じたクロムは、ディアナたちに一言告げて割り当てられている部屋でカルロたちを待たせてもらうこととした。
クロムとアキナはいつも通り何気ない優しくゆっくりと流れる時を満喫しながらカルロたちの帰還を待っていた。
そして数時間後、まったく予想もしない方法でその静寂は破られることとなる。
なんと、カルロがルーム内から飛び出てきたのである。
非常時のためにクロムが滞在する部屋にはルームの出入口を設置することにしていたが、まさかそこから偵察中のカルロが一人で飛び出してくるとは思いもよらなかったのである。
「カルロ!! どうしたんだ!!?
大怪我してるじゃないか!!!」
カルロの突然の登場に動揺していたクロムであったが、カルロが抱えている異変が一気に冷静さを取り戻させていた。
カルロの左腕の肘より先がないのだ。
そしてさらにルーム内よりビネガが飛び出してきた。
「主…… カルロ……
すまない、あの二人は……」
それだけを言い残すとビネガは気を失った。
立て続けに変化する状況にクロムは必死で冷静さを保ち、動揺をひた隠しにしながらも二人の回復に全力を尽くすのであった。
クロムとアキナは回復の終えた二人をルーム内に移動させてベットに寝かせた。
未だに意識を取り戻さないビネガと左腕の肘より先が無いカルロ……
クロムは何度もカルロの左腕の蘇生を試みていたのだった。
しかし部位欠損の蘇生に成功することはなかったのである、一度は成功したように見えても次の瞬間には魔力が拡散してしまい新しい左腕として維持させることができなかったのであった。
『以前に部位欠損を治せる魔術は存在しないって言ったでしょ!!』
「くそぉ……、カルロすまない……
いつか絶対に蘇生するからな……」
「兄貴……
これは俺が慢心しすぎていたことへの罰だと思っている。
だから、自分を責めないでくれ……」
クロムの
そして、今まで黙って状況を見守っていたアキナがついに口を開いた。
「カルロさん、何があったんですか?
それに…… ソルトさんとソイソさんは??」
クロムもそこは気になっていた。
なっていたが、尋ねることができずにいたのである。
カルロはバツが悪そうにアキナから顔を
この集落から北上を始めて2時間ほど経過したころ、カルロたちは半壊している砦を発見した。
その砦がミツルの拠点であろうと判断したカルロたちは砦の正面から潜入することとした。
そしてこの無策のまま正面突破をするということがカルロたちの慢心の始まりでもあると
砦に接近したカルロたちは砦の壁上より見下ろす男の存在に気づく。
その男がおそらくミツルであろうと推測したカルロが声をかけようと足を踏み出した時、カルロの背後で何かが落下したような音が響いた。
不思議に思ったカルロが振り向くとそこには背中に数本の剣が突き刺さった状態でうつ伏せに倒れているソルトの姿があったのである。
唐突すぎるその状況にカルロが呆気にとられていると、ソルトの隣に同じ状態のソイソが並びその背後に先ほどみかけた男が立っていた。
その男が何か言いかけた瞬間、カルロの横にいたビネガの右手より巨大な火球がいくつも発射されその男に着弾した。
と思われたのだが、カルロは自分の左手が空中に浮いている光景を他人事のように眺めながら、男の声を聞くこととなったのである。
「やっぱりてめーらは敵なんだな」
自身の攻撃も通じずに一方的にやられているこの状況に全滅の危機を悟ったビネガは
「このままでは全滅する、カルロはこのことを主に……」
カルロは覚悟を固めたビネガの声を聞きながらクロムの元に急ぐのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます