57話.博打

 クロムは、人払いを徹底した上でサラカ・ダン・ケイン・カルートの4名に急遽集まってくれるように伝えた。


「急に呼び出してすまない」


「まったくじゃ、どうしたというのじゃ。

 しかも人払いまでして……」


「とりあえず、最後まで聞いてほしい。

 実は……」


 クロムは今回の会合の主要メンバーの4人に打ち明けることにした。

自分には特別な力があって屈服させた相手を従属させることができることを。

そして、その力を使って魔物の軍団を作ったことを。

 その目的はスタンピードの数の暴力に敗れて、数に対抗するには数が必要であると悟ったためであることを。

今回の王都奪還作戦の最大の懸念事項である敵が操るスタンピードには、自分の魔物の軍団で対抗できることを。


 クロムが全てを告げたのち、その場は異様なまでの静けさに包まれていた。


「こんな時に冗談を言うのはやめてください!

 何故クロムさんがそのようなウソをこの場で言うのか、意図がわかりませんよ……」


「サラカよ、たぶんこれは真実じゃぞ……

 こやつは無駄な嘘を言うタイプではない」


「俺に重症を負わせたあいつを配下にしていると……

 それってつまりは敵さんと同じくスタンピードを自在に起こせるってことだよな?」


「する気はないけど、やろうと思えばできる」


「「「「!!!!」」」」


「クロム殿……

 我が王国の王都奪還の助力を願っている立場で言えることではないのですが……

 魔物の軍勢を使って王都を奪還する…… という作戦は許容しかねます。

 また、その軍団のあるじを王都奪還メンバーに含めるということを<勇者>という肩書が許してくれません……」


「だろうな、それは理解できる。

 だから俺にとってこの告白は、大博打なんだよ。

 全世界を敵に回す可能性がある告白ではあるけど、俺が俺らしくいるためには王都奪還に関しての最善手を提案しないのはなしだと思い至ったんだ。

 みんなにそれぞれの想いや立場があるのはわかっているから……

 ……受け入れてくれるなら全力を尽くして王都奪還をする。

 ……無理ならここを去る」


 クロムがそう告げると皆の反応はそれぞれであった。


 サラカは戸惑いつつもクロムを受け入れると。

ダンはサラカと個人的には同じではあるが、ギルドマスターとしては受け入れがたいと。

ケインはクロムを人類の敵と認定すべきだと。

カルートは気持ちには感謝するが受け入れることはできないので、出国してほしいと。


「わかった、この展開になる可能性が一番高いことは覚悟してたさ。

 ダン、今まで世話になったな。

 とりあえず俺たちはこの国を出てダイン獣王国に向かうことにする、そして俺たちから敵対行動をとることはしないことだけは誓う…… 

 だが、降りかかる火の粉は払わせてもらうからそのつもりでな」


「「「「……」」」」


 クロムは複雑な表情を浮かべる4人を残してその場を去った。

そして、アキナとカルロに合流したクロムは人目のつかない場所まで移動後にルームへと向かうのであった。

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