35話.お告げ
「仲間探しのアテがあるって昨日言ってたけどさ、クロムって私たち以外に知り合いっているんだっけ??」
「うん、知り合いはいないね。
それに強そうな魔物を従属させるというのは、街で暮らす以上現実的ではないだろうね。
だから、ナビに頼ろうかなってね」
『は!!?? なんで僕なのさ??』
「カオスの眷属なんだろ?
ちょっとカオスと話がしたいんだが会ったりできないか?」
『お声をかけることはできるけど……
お返事を頂けるかどうかはカオス様次第……』
ナビが自信なさげに返事をしているとクロムの体が光で包まれる。
――『ナビ、ちょっとクロムを借りるね』
そして、その光が収まる頃にはクロムの姿はなかった。
『久しぶりだねクロム、毎日楽しそうで何よりだよ♪』
「ここは…… お前の部屋か?
はぁ…… いきなり召喚するなよ。
あっちに残されたアキナが心配するだろうが!!」
『ごめんごめん、でもナビ経由で説明はしておいたから許してね♪
そんなことよりさ、クロムが僕に話したいことがあるなんて初めてじゃないか』
「不本意ではあるんだが、お前に聞くのが一番だと思ったからな」
『へぇ~、なんだろ??』
「はぁ、どうせわかっているくせに……
あの世界は創造神が好き放題に創造した世界である、その片鱗は既にいくつか体験したよ。
そして、創造神の
だから少数精鋭でとても強いが非常に不遇な境遇むしろ、呪いともいうべき設定を背負わされた種族…… みたいなネタ感満載のやつらがいるんじゃねーのか? って思ったのさ」
『あははは、それは確かに神に聞くしかない質問だね♪
それにいい勘してるね、さすが僕が
それまでいつも通りのふざけた言動をしていたカオスが急に真面目な顔つきで語り始めた。
『……いるよ
この世界の
「はぁ、マジでいるのかよ……」
『君に加護を与えてる神として、いくつかの助言をしよう。
その不遇の種族は竜人族。
この世界のいかなる者たちの記憶にも記録にも残っていない悲しき種族。
竜人族が背負う掟は2つある、【自らの
「……」
『そして、この掟を呪いにしてしまう理由が2つ存在するんだ。
①竜人族の隠れ里は次元の狭間に存在しており、竜人族と対等以上の力を持つもののみが入口を見つけることができること。
②竜人族はこの世界の生物で最強に近い力を持つ種族であること』
「悪ふざけが過ぎてるだろ……、胸糞悪い……」
『僕もそう思うよ。
そしてその隠れ里は君が最初に生活していたあの森の中にある。
今の君なら気配や違和感を感じられるんじゃないかな♪
僕に言えるのはここまでだよ♪』
気分の悪くなる内容、そして伝えるべきことは伝え終わったとでもいうかの如く普段通りのふざけた口調に戻るカオス。
クロムは不機嫌を隠すことなく、でも一応のお礼を言う。
「……ありがとな」
『君にお礼を言われるなら助言してよかったよ♪
じゃぁ、がんばってね♪』
カオスが一方的に別れを告げるとクロムは再び光に包まれ、元の場所に戻っていった。
(呼ぶときも帰すときもいきなりかよ……)
「クロム! おかえり!!」
「ただいまアキナ。
ったく、カオスの奴は何もかもが急すぎるんだよな……」
「クスクス、でも何かいいヒントは貰えたって顔してるよ?」
「非常に不愉快なことではあるし、気分の悪くなる話ではあったが……
あいつの助言で行くべき場所は見えた…… かな。
数日は出掛けることになると思うから数日分の非常食を用意したら出掛けようか」
「うん!!」
クロムとの旅立ちを純粋に楽しそうにするアキナ。
カオスが話した気分の悪くなる話、その鬱々とする気持ちをアキナの存在が癒してゆく。
クロムはアキナに心よりの感謝をしつつも、まだ見ぬ竜人族への思いを巡らせるのであった。
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