27話.冒険者活動再開

 少しゆっくり目の時間にギルドに到着した二人であったが、二人がギルドに入るとギルドの中にいた人たちがザワつき始めた。

予想通りの反応ではあったが、昨日のような奴が奇襲をしてくる可能性を考慮したクロムは警戒を強めるのだった。

そんな様子をカウンターの中から見ていたスズは苦笑しつつ二人をカウンターまで呼んだのであった。


「二人とも、おはようございます。

 クロムさん……

 警戒するのはわかりますけど…… 殺気は抑えてくださいね……」


「あははは、おはようございますスズさん。

 抑えてたつもりだったんですけど、すいません……」


「ほどほどでお願いしますね?

 で、今日は依頼探しですか?」


「はい、チームのデビュー用の依頼を探しにきました」


 本来なら冒険者自身が依頼書を選んでカウンターに持ってくるものなのだが、今回だけは特別よとスズは二人の前に2枚の依頼書を並べた。

Dランク依頼のオークの集落の探索、Dランク依頼の洞くつにて銀鉱石の採掘 の2種類であった。


「できればどっちかをやってもらえると嬉しいかなぁ…… と」


「銀鉱石のほうは私にリベンジをしておいでってことかな?

 もう一つは……」


 先日オークに殺されかけたアキナとしてはオークにトラウマがあり苦手のようだった。


「その通りですよ、アキナ。

 オークの探索のほうは…… オーク関係の依頼で比較的に危険性の低いものでトラウマの解消してもらいたいな…… とね。

 クロムさんが一緒なら万が一にも危険はないでしょうし……」


「スズさん、オークの集落は洞くつからは遠いんですか?」


「いえ、むしろ洞くつ内ですよ。

 あの洞くつがオークの巣穴化してるのではないか? という噂がありましてその調査が依頼の内容になります」


(ボスの熊を俺が倒した影響もあるのかもしれないな……)


「ならば、両方受注ってできますか?」


「クロム??

 両方って本気なの??」


「同じ場所でできるならそのほうが効率いいじゃん?」


「あははは、クロムさんはやはり大胆なお方のようですね。

 むしろ、同時受注はありがたいですよ。

 銀鉱石の採掘を受けたがる冒険者さんはオーク群れの相手をできない方である可能性が高いですしね……」


 スズとクロムの利害が一致したことにより、クロムたちは2つの依頼を同時受注することになった。

クロムは不安そうにしているアキナの頭を撫でて安心させると、そのままの足で洞くつに向かうことにしたのだった。


 洞くつに向かう途中でクロムとアキナは互いの役割分担について話し合う。

オーク探索については洞くつ内を一周してみるしかないので警戒だけして後回しにして、銀鉱石の採掘を先にすること。

採掘作業そのものはクロムの魔術を使えば容易にできるため、鉱脈を砕くのはクロムが行い、アキナは砕かれた鉱石を回収してストレージに入れていくこと。

昨日ナビを共有化したときに合わせてストレージも共有させておいたためにできる分担であった。


「なんか…… クロムにばかり働かせるみたいで心苦しいんだけど……」


「そんなことないって! 俺からしたらむしろ鉱石を回収することのほうが面倒で大変だぞ……」


「そ、そっかぁ~…… これも適材適所って言えるものなのかもね」


 二人は役割分担をしつつ楽しく話をしているうちに目的の洞くつの前に到着した。


「そういえば…… 私ってこの洞くつの中で2回も死にそうになってるのよね……」


「確かに…… この洞くつに苦手意識持つなっていうのが無茶なのはわかるけど……

 必ずアキナは俺が守るから安心してほしい!」


「クスクス、確かに苦手意識はあるけど、クロムがいるから安心してるよ。

 クロムのこと信頼してるからね!」


 クロムはアキナの信頼がすごく嬉しく、改めてアキナを守り抜くことを心に誓い、洞くつの中に歩を進めたのであった。


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