20話.やはり……

 無事にチームを結成し終えてギルドを出た2人の元に予想通りの災難が降りかかることになった。


「よぉ、にーちゃんや。

 アキナちゃんとチーム組んだって聞いたがのぉ、どんな弱み握って脅したんや?」


「はい? 脅すも何も俺はアキナに誘われた側ですけど?

 …… それに初対面でその絡み方は失礼ですよ?」


(クロム!! そんなに煽らないあおらないで……)


 クロムの背中に向けてアキナがそう呟くが、クロムはあえてそれを無視をした。

そしてあえてより丁寧な口調を使って煽り続けるのだった。


「あ、申し遅れました。 

 先日ギルドに登録しましたクロムと申します、お見知りおきを。

 どなたかは存じませんが、所用がありますので失礼させて頂きますね?」


「あ!?? てめー舐めてんか!!!??

 あんま舐めてるとぶち殺すぞ!!」


 クロムの目論見通りに激高し今にも殴りかかってきそうになった時、その騒ぎを聞きつけたスズが駆け付けた。


「ラムダさん!!!! 

 またケンカですか!!??

 はぁ…… いい加減にしてください!!!」


「スズちゃんそれはとんだ言いがかりだぜ?

 今回は俺がケンカ売られたんだぞ」


 周りに集まっていたガヤたちが騒めいている。

  --あれをケンカ売られたっていうのか?

  --あいつ相手にあんな煽りをしたらそういうことになるんじゃない?

  --あの新人もわざわざ煽らなきゃいいのに……


 しかし、そんな騒ぎをあえて起こした張本人はいたって冷静だった。


「スズさん、ギルド前で騒がしくしてしまってすいません。

 すみませんが……

 地下の闘技場をお借りできませんか?」


「クロム?」

「クロムさん??」


 クロムの申し出の意図を理解できなかったアキナとスズが呆気にとられていた。

その様子を見たクロムは、ケンカではなく決闘にすれば問題はないですよね? と言うことでさらに二人が呆気にとられることとなるのだった。

そしてスズがその判断を迷っていると、騒ぎを聞きつけたダンがギルド2Fの窓より声をかけてきた。


「お前らうるさいぞ!

 ラムダ! 

 お前も新人イビリはいい加減辞めるんじゃな、そんなことばかりしてるからいつまでもBランクのままなんじゃぞ?」


「う、うるせー!」


「クロム…… 

 お前は少しは慎みつつしみを覚えるんじゃな……

 …… ただ元気なのは嫌いじゃないからな、今回だけ特別にワシが立会い人になってやるから闘技場で好きなだけ暴れよ」


 ラムダとクロムへの説教であったはずのダンの言葉は、徐々にその様子を変化させて最後には決闘の許可をするものになっていた。

その展開に驚いたアキナとスズであったが、ギルド長の言葉を受けた当人たちはやる気になっていた。


「へっ、ダンのダンナからの許可もでたわけだし、ぶち殺してやるよ」


「そのねじ曲がった高い鼻を折ってやるから、せいぜい死なないでくれよ?」


 互いに煽りあい、一触即発の緊張感を漂わせた二人は地下の闘技場に向かうこととなった。

そして主役の一人であるクロムは、闘技場への道すがらみちすがらアキナに説教され続けていた。


「クロム! なんでこんなことするの!?」


「アキナとチームを組めば遅かれ早かれ誰かに絡まれるのは分かってたし……

 なら早めにハデに牽制しておくのがいいかなって思ってね」


 クロムはが覚悟していたこの展開を実はアキナは想定していなかったのである。

ゆえにクロムをこのような状況に巻き込んでしまったことを申し訳なく思い、クロムとチームを結成したことを少しだけ後悔するのだった。

自分のワガママのせいで…… と。

塞ぎこむアキナからそのことを察したクロムは……。


「俺はアキナとチーム組めて嬉しいよ

 今はあの暴れん坊さんにお灸を据えてくるからさ、応援よろしくね!」


 クロムは笑ってそういうと、闘技場の中央に歩を進めた。

そして、闘技場で対峙する二人に向けてダンが宣言した。


「好きなだけ暴ればいいが、殺しだけはするなよ?

 危険と判断すれば躊躇なく止める。

 では…… 始めじゃ!」


 ダンの宣言が終わるのが早いか、ラムダの突撃開始が早いのかというタイミングでラムダはクロムに向けて突撃を開始した。

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