7話.出立準備

『いつまで森の中で原始生活をするつもりよ!!!!!!!』


「ナビよ、何を怒っておるのじゃ?

 サバイバル生活にもすっかり慣れて、満喫しておるというのに?」


『少しだけ仙人っぽい口調で何ふざけたこと言ってるのよ!!

 もう一か月よ!??

 あんた…… この森で寿命迎える気なの??』


 サバイバル生活もすっかり板についたクロムは、悠々自適なサバイバル生活をなんと一か月も続けていた。


『あんた昨日、レベルが30になったって言ってたわよね?

 そろそろ他のこともしたくならないの?』


「想像以上にこの生活楽しくてさ……

 ただまぁ…… 

 せっかく異世界に来たのに異世界人の一人にすら会わずに死ぬってのはさすがにカオスに悪いか……」


『そ、そうよ!! カオス様を少しは楽しませなさいよ!

 カオス様は絶対に今頃飽きて傍観もしなくなってるわよ……』


「別に覗かれたいわけじゃないから、それはそのままでいいけどさ

 でも、そろそろ異世界人とのふれあいを楽しむのもいいかもな♪

 たださぁ…… 

 こいつらを町には連れていけなくね?」


 クロムが指指すゆびさす方向にいたものは……

 ゴブリン10匹と狼3匹であった。


「レベル20になったころに魔眼のレベルあがって覚えた従属眼じゅうぞくがんで従属契約したこいつらをここに放置はできないでしょ?」


 クロムが新しく開眼した魔眼は<従属眼>と言って、屈服させたものを自らの奴隷にできる魔眼であった。


『あんた…… レベル25になったときに、新しい空間術覚えたわよね?』


「あぁ…… ルームだっけ?」


『確か……

 あんたが許可したものだけが出入りできる無制限の規模の亜空間を作れる空間術って言ってたわよね?

 そこにゴブリンと狼の部屋作って住ませれば問題解決じゃないの?』


「!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

 ナビって頭弱い子じゃなかったのか……」


『!!!!!!

 失礼な!!!!!!!!!!!!!!!!!』


 ナビの的確な指摘によって解決策を見つけたクロムは、さっそくルームにゴブリンたちの部屋を生成し始めた。

 亜空間の中はクロムの意思通りの形状に生成できるようだったので、最初に広大な広場を生成し、その中に巨大なマンションのような建物を作り上げた。


「よし、できた!

 ゴブリンたち中に入って~」


 ゴブリンたちが続々とルーム内に移動している中、ナビがクロムにふと疑問を投げかけるのであった。


『ねね? この子たちって名前ないの? 

 個体の識別ができないってのは不便じゃないのかな??』


「ん~、こいつらの中では区別できてはいるみたいだけど……

 まぁ、リーダーっぽいこいつだけでも名前があると便利かもな」


 クロムはゴブリンたちのリーダーを呼び止めて、こちらを向かせた。


「お前の名前は…… ゴブ太 だ」


 すると、クロムはわずかではあるが魔力が吸い出される感覚を味わうこととなり、それと同時にゴブ太の身体が淡い光に包まれた。


「主様、ありがとうございます!

 まさか、お名前を賜れるとは思いませんでした!」


「!!!!

 お前喋れたのか!??」


「主様にお名前を賜りましたので、ネームド持ちとなり進化することができました。

 その結果、人族様の言語を操ることができるようになりました」


「そ、そうか…… 魔物に名前つけるとこういう展開になるわけか」


『そういえば言ってなかったわね?

 従属した魔物に自分の魔力を分け与えつつ名前をつけると、進化してネームド持ちになるのよ。

 でも分け与える魔力量は相手の魔物の強さに比例して大きくなるから注意してね?

 最悪の場合、魔力を吸い尽くされて廃人になることもあるから!!』


「お、おい!!!!

 そんな大事なことを今言うのか!!???」


『魔力バカのアンタがゴブリン程度でそんなことになるわけないじゃん……』


「まぁ、実際そうだったわけだけどさぁ……」


『こんなことでイチイチ拗ねてるんじゃないわよ。

 そんなことより、これでここから旅立てる準備完了じゃない?』


「ん~……、まぁいいや。

 家具をストレージに片づけるかな」


 一ヶ月も住みつくと仮の住居にもそれなりの家具が揃っていた。

 しかし無制限に物質を収納できるストレージを使えるクロムは、淡々と収納を続けていった。


「あとはこのベットだけだな」


 お気に入りとなっていたベットをストレージに収納したときにクロムは違和感を覚えた。


「なんか…… この床だけ材質が違わね?」


『言われてみれば…… 掘ってみたら?

 お宝が出てくるかもよ?』


「そんな都合よく……

 でも気になるし、掘ってみるか」


 ナビの軽いノリに乗ってみることにしたクロムは軽い気持ちでアイスランスと名付けた氷の杭を材質の違う床に向けて放つのであった。


 この軽率な行動がどんな結果に結びつくのか……

 今のクロムたちに知るすべはなかったのである。


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