3話.ロマン溢れる!??サバイバル生活開始
これからの生活に想いを馳せテンションの上がっていたクロムは、無警戒に森の中に足を踏み入れてしまった。
森の中は得物を待ち構える狩人で溢れているのである。
無警戒に森に踏み入れたクロムの足は、横の茂みより飛び出してきた蔦に巻き付かれることになった。
「ぎゃぁぁおぉぉぉ!!!」
凄まじい叫び声と共に現れたそれは……
大きな口を開いた巨大な花であった。
『レッドセラセニア!!
蔦で引っ張り込まれたら終わりよ!』
突然の出来事に呆気にとられていたクロムはナビの声で気を取り直し、切断のイメージを込めた手刀を足に巻き付いた蔦に放った。
蔦に向かって放たれたクロムの手刀は淡い緑色の光に包まれ、蔦などなかったかのごとく全く抵抗なく切断された。
自慢の蔦を足に巻き付け自分の優位を疑っていなかったレッドセラセニアは、何が起きたのか理解できずに混乱するしかなかった。
「この化け物花め! 今度はこっちのターンだからな!!」
クロムは威勢よく啖呵を切ったのだが……
どう攻めていいものかを決めかねていた。
最初に燃やし尽くすことを思いついたのだが森の中である、森の中で火はマズイと思いとどまることとなる。
しかし、どんな奥の手を隠しているかもわからない相手に手刀で切り込むのは躊躇われたため、先ほどの手刀を飛ぶ斬撃としてぶつけてやることを思いついたのであった。
(しかし、飛ぶ斬撃なんてできるんかね……??)
成功するのかを疑問に思いつつも、クロムは先ほどの手刀の時に手を包んだ淡い緑色の光を相手に向かって飛ばし、ザックリと切断をするイメージも込めながら右手の手刀を振り切ることにした。
すると、クロムの右腕から淡い緑色の斬撃が放出され、レッドセラセニアの周りに漂う蔦のうちの1本を切断したのであった。
「お、できるもんだね♪」
自分のイメージ通りの現象が目の前に起こったことに機嫌をよくしたクロムは、レッドセラセニアをみじん切りにするべき両手を振りまくった。
クロムの腕から放たれた無数の緑の斬撃は、レッドセラセニアを原型を留めないほど粉微塵に切り裂いたのである。
『あんたねぇ……』
ナビは呆れた口調でクロムに周囲を見渡すように告げると……
前方3メートルくらい先の場所まで一切の木も草もなくなっていた。
『加減ってものをしなさい!!!』
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
ナビに軽く説教されたクロムは若干納得できないと思いながらも、自らが切り開いた方向に歩いていく。
すると、眼前の大きな岩山から川が流れ出て溜まったのであろう大きな湖を発見した。
周りは多くの魔物たちが闊歩する森であることを忘れてしまうくらいの絶景に感動し、クロムのテンションは上がる一方であった。
「俺、ここを拠点にする♪♪」
『はぁ? この魔物だらけの森の中で住む気なの??』
「こんな絶景だぜ??
あの岩山の麓あたりに横穴を開けて住居にすればいけるでしょ♪♪」
『あんた、魔物の餌にでもなりたいわけ…… ??』
呆れ切った口調のナビにクロムは、さも当たり前のように言い放った。
「ここは異世界であり、目の前にはこの世のものとは思えないほどの絶景が広がっている。
ここでのロマンに満ちたサバイバル生活に憧れない男の子はいないでしょ!!」
『ロマンじゃお腹膨れないし、身を守れないわよ……?』
「男はロマンに生きるもんなんだよ♪」
『……
はぁ……』
異常なほどのハイテンションのクロムとは対照的に、ナビはもう何を言っても無駄であるということを悟り、呆れつつも無言となるのであった。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
せっかくの拠点建築である。
どうせなら少しでも見栄えの良い立派なものを……
と考えたのだが、材料となるものすらまともにないのが現状である。
さらに早く寝床を作らなければ、この森の中で野宿という自殺行為をすることにもなる。
ここは基本に忠実にと目の前の岩山に横穴式住居を作ることにした。
「立地的にはこのあたりがいいかな」
湖からも森からも少しだけ距離を置いた場所に存在する岩山の麓を発見したクロムは、その場所を横穴を掘る場所とした。
しかしツルハシすらない状況……
クロムはファンタジーらしく魔術で掘ることを決意するのであった。
掘るための器具としてクロムは最初に杭を思い浮かべた。
高密度に圧縮して固めた土、岩よりも遥かに硬度の高い高圧縮した土を杭状に生成し、それを岩山にぶつける……
大き目のサイズの杭にドリル状の切込みを入れたものを複数生成したクロムは、それに回転を加えて次々と放出して岩山にぶつけたのである。
ドッッッカーーーーーン!!!!
ガッガガガガガッガガ!!!!
ドーーーン!!!
ものすごい爆音とともに凄まじい土煙が立ち上った。
少しして土煙が収まった頃に岩山を確認してみると……
『……
…… だから、手加減をしなさいってば!!!!!!!!』
直径2メートルほどの穴が、この場所からでは行き止まりが見えない深さまで空いているのであった。
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