メインストーリー

第1話 開戦

どこか見慣れた景色、そこには慣れたような軍服を着た、だがどこか違う男女が何かを書いている。

 

北方歴5689年5月3日 アドル草原...

 「早く起きろ」

 草原に響き渡るほどの大声で僕は叩き起こされた。正確には移動する車内なので外に音が漏れる心配はなないのだがまあいい。またいつもの夢を見ていた。このところこの夢ばかりを見ているような気がする。

 「もうじき一年になる・・・」

 ボソッと呟いた

 「正確にはまだ14ヶ月と12日だろ」

 向かいに座っている同僚が口を開いた。

 「なんだよ、聴いてたのか・・・。それに相変わらず細かいねえ狙撃兵さんは」

 嫌味を込めてそういうと狙撃兵と呼ばれた彼はムスッとして黙り込む

 「あーあ、まただんまりかよ」

 「ちょっと、大地、うるさい」

 今度は狙撃兵の隣に座っている女が口を開いた

 「なんだよアリン、お前は狙撃の肩を持つのかよ、俺と同じ突撃兵ラッシュのくせに」

 「今 所属は関係ないでしょ、それに狙撃ってのはフィンぐらい細かくないと務まらないのよ。だれだったかしら、10枚全部1点に当てた無能さんは」

 「それとこれとは話が別だろ、だったらアリンお前だって結局は5点以上には当たってないじゃないかよ」

 「あれは整備不良だったのよ、前のやつが詰まらせてたからでしょ。そのあとのではちゃんと10点にも当てましたから、一緒にしないでよダイチ」

 「またその話か、だっt」

 「うるせえ」

 先ほどと同じかそれ以上の声量で怒鳴られる。

  その一声で場が静まり返った。

 「・・・で何が一年だっての・・・」

 アリンが小声で話しかける。

 「クーデターが水面下で始まってからだよ」

 アリンはハッっとした。確かに訓練半年も続けば時間感覚もおかしくなるだろう


 今から一年(正確には14ヶ月と12日らしい)前にクーデターが始まった。この惑星の中心にあるコルマと呼ばれる惑星を縦貫している謎の構造物にエネルギーパネルを貼り付けて世界中に電気を送れるようにしようとするプロジェクトがかつてあった。それだけ見ると聞こえがいいが、やはり人間。そうは問屋が卸さない。この国の大馬鹿政治家がコルマの上層部にレーザー兵器を搭載しようとしていたのだ。これが搭載されてしまえば惑星の南半球に属している国は常に脅威に晒され続けることになる。はじめのうちは異を唱えた政治家を他の罪などで処刑し、表沙汰にならないようにしていたが同じ大馬鹿が

 「彼らはその意見によってその身を滅ぼした、つまり彼らは異端者だ」

 といった、テレビ放送で世界中に向けて。それを言ったが運の尽き、国民たちは反乱の日に燃え、さらには軍までも動かすような一大事件に発展してしまった。軍の中にも国家の強制併合政策を疑問に思っていた派閥があったのであろうクーデターが起きた。それだけならまだ一国の内乱で済むのだろうがその後に国際平和軍IFUの方針転換、国民への福利厚生の低迷などが重なり、瞬く間に大陸戦争の形相を出してきたのだ。そしてちょうど一年前 俺たち連合軍は正規軍に宣戦布告をしたってわけなのさ


 「そういえばアリン、お前さんは志願者デジールじゃないんだっけなぁ」

 「ええ、私は売人クェスよ。でも忠誠は誓ってる、何か問題でも?」

 「いんやぁ、やっぱりクェスは無知なんだなあって改めて知っただけさ」

 「何よ、またその話」

 「結局は階級なんじゃいのかアリン」

 「そんなことを言ったら僕だってクェスだよ」

 フィンがそんなことを言った

 「へぇお前もクェスなのか、そいっつぁ初耳だな」

 「だから言ったでしょクェスとデジールでの差別はないって入団式の時にも師団長が言っていたはずだけど」

 「うんなことぁとっくのとおに忘れたよ」


 「あと五分で目的地だ準備しろぉ」

 そうこう話しているとそんな声が聞こえてくる。

「いよいよ初陣ね ダイチ、フィン。死なないでよ」

 「うわ、いきなり死亡フラグ立てるなよアリン」

  「何よ、別に励ましただけじゃないの」

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