朝蜘蛛を殺さない

雨宮r

春 蜘蛛

 春に入りだんだんと暖かくなってきた今日の朝、僕は一匹の小蜘蛛を見つけた。僕は虫が嫌いだ。見るだけで吐き気がするし叩き潰したくなる。が、朝蜘蛛は別だ。奴らは縁起がいいとされている。ジンクスの一種なのだが僕はそれを信じている。虫が嫌いになる前におじいちゃんから何度も聞かされたからだ。だから僕はこの子蜘蛛も逃してやることにした。もちろん毒蜘蛛ではないことを確認してからだが。この子蜘蛛は運が良かったと言える。たとえ同じ蜘蛛だったとしても夜に現れていたら容赦はしなかった。運が良かっただけなのだ。朝っぱらから虫なんかを見てしまって運が良くない気もするが僕は中学校に向かった。

 しかしどうしてあれほどまでに虫という生き物はおぞましいのだろう。ヒトは自分とかけ離れている者には嫌悪を感じるというが逆に考えると虫が好きな人間はどちらかというと虫に近いのだろうか?そうなると僕の親友である中居くんを嫌わなければいけなくなる。········それはいやだな。となると、かけ離れていようと嫌いになったりはしないのかもしれない。

「おはよう」

件の中居くんだ。体はだいぶ小さい。そのことを気にしているみたいだけど僕は可愛らしくていいと思う。中居くんは気づいてないかもだけど彼は結構モテる。その小さな体でみんなからも人気がある。

「何を考えてるんだい?石野くん」

「中居くんは小さいなと」

「いきなり悪口かい??」

「いやいや、まさか。褒め言葉だよ。もちろん」

「それは僕にとっては褒め言葉にならないんだよ。気にしてるんだから。」

 僕らは軽口を叩きながら登校する。彼とのこの時間が僕は好きだ。朝が来たといった感覚になる。

「新しい朝が来た。」

「いきなりラジオ体操かな?どうしたの?」

当然中居くんは驚く。自分も支離滅裂だと思う。うん。だがこの戸惑った反応が好きなのだ。僕は中居くんと話しているとたびたび支離滅裂になる。最初はわざとだったが最近はすんなりと支離滅裂な発言ができるようになった。できるようになったと言うのもおかしな話だけど。

「おかしな話だよ。まったく」

「??」

「いや、こっちの話だし中居くんは気にしないで。」

「どっちの話??ぼくと君とではなしてるよね?」

「ラジオ体操第一はできても第二ができる人は少ないよねって話」

「そんな話じゃないよね?」

 そうこう話しているうちに学校についてしまう。本当は彼に学校に通ってほしくはない。彼は僕らにとってなのだから。モテるとかいう言い方をしたが本当は違う。彼は人間と呼ばれる種族で僕ら巨人族ジャイアントの食料だ。僕らの世界に迷い込んだらしかった。僕は彼に命を救われた。だから、彼がもとの世界に戻れるまで僕は彼を守るつもりだ。だが、学校に行くのは危険だからやめてほしいと本当に思っている···。

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