第128話 新たな護衛の人達


俺は我が新居に足を踏み入れる。

新居は一般住宅よりも少しだけ大きい造りだけど、前まで住んでいた家と比べるとかなり小さい。


「ふぉぉーっ。」


でも、初めに出た感想は良いものだった。


なんだろう。転生する前の……鈴木和也だったころに住んでいた家にそっくりな雰囲気で、なんだか懐かしくて嬉しい気持ちになる。


ここなら俺はすぐ好きになれそうだなと確信し、ここにどのくらい住むかは分からないけど充実した生活を送れそうだと思った。


俺は荷物をリビングになる予定の場所に置く。

まだ家具とかはほとんど買っていなく、必要最低限の物しかこの家には無いけど今週中には皆で一緒に買いに行くつもりだ。予め用意されている家具より、皆で意見を出し合って買った方が愛着が湧くし間違い無いだろうしな。


「じゃあ、護衛の人達が来る前までに色々と決めようか。」

「……そうね。」

「はい!!」

「ええ。」


雫、葵、夜依の順に答える。


「じゃあまずは無難に部屋決めでもしますか!」


俺の提案に3人共了承したので初めに部屋決めをする事になった。


一応、新居の1階は共同スペースにして、2階は個人スペースにすると決まっている。


1階はリビングやキッチン、トイレや風呂など広めの部屋が多いが、2階は部屋が多数ある。


「決め方をどうしようか?ジャンケン?」


俺の提案に3人は納得すると、3人共かなり真剣な目になりじゃんけんの体勢に構えた。


なんだろう、軽くやるジャンケンなんかじゃなくて、命をかけてるみたいにガチなんだけど……


「じゃあ行くよ。」

「「「「じゃんけーん……ポンッ……………ポンッ、ポンッ……!!」」」」


声を揃えてジャンケンをする。4人でのジャンケンのため中々勝敗は決まらず数回ジャンケンをし、ようやく決まった。


一番最初にたまたま勝った俺は階段から1番近くの部屋に決め、2番目に勝った葵は喜んで俺の隣の部屋に。3番目の夜依は残念そうに西日の方の部屋に決めた。最後の雫は夜依よりも落ち込みながら、夜依と葵の隣の部屋にした。


まだ2階の部屋は数部屋残っていてその部屋は物置部屋として使われる事になった。


次は家事の担当だ。

料理や掃除などの家事が普通に得意な3人に任せ切りになるかもだけど、ちゃんと俺も手伝うつもりだ。1人だけ何もしないなんて、働かざる者食うべからず…だしな。


それに、俺は力はあるので家の修繕や日曜大工などの力仕事は任せてもらいたい。


それから細かい事はまた今度改めて決める事とし、俺と夜依は持ってきた荷物をいまさっき決まった部屋で整頓する作業を行い、雫と葵はまだ荷物を持って来ていないので1階で掃除と護衛の人達をおもてなしする用意を頼んだ。


俺は1人で部屋に入り荷物を床に置く。


「さて、早速やりますか。」


俺はタオルを首に掛け、部屋の整理整頓を開始する。

俺の荷物は制服や教科書などの本当に必要最低限の物しか無く、あまり物に頓着しない性格の俺だけど、リラックス出来る愛用の家具は早々に持って来たい又は買いたいと思った。


荷物は少なく整理整頓は思ったよりも早く終わり、余った時間で男会の影響で休んでいた授業の自習をしておこうと思い教科書を開いた。


☆☆☆


1時間後…


──テレテレテレーン、テレレレレーン


独特な家のチャイム音を聞き、来訪者が来た事を確認する。


恐らく新たな護衛の人達だな。


俺は国から正式に、かすみさんに変わる新たな護衛の人達が来ると皇さんを通して聞いているけど、細かい内容は聞いていなかった。


なので、どんな人が来るのかずっと考えていた。


俺的には今の事情をよく理解してくれてかすみさんのように気が使えるのがいいと思う。もちろん仕事も完璧にこなしてが必須条件だ。


葵が率先して対応してくれて護衛の人達を部屋に招き入れてくれる。


「「「「「「お邪魔します!」」」」」」


声を揃え、ゾロゾロと足並みを揃えてリビングまで歩いて来る。


声と足音的に大体4~6人くらいかな。

んーでもどこかで聞いた事のある声が混ざっているような気がする。…気のせいか?


そんな事を思いながら俺は広めのリビングで座布団に座って待つ。

さっきまで何も無かったリビングに雫と葵は掃除とテーブルや座布団、飲み物などを用意してくれた。


「「「「「「失礼します!」」」」」」


声を揃えて部屋にゾロゾロ入ってくる。


「「「!?!?」」」


俺はもちろん、雫と夜依も入って来た人物達を見て驚愕の表情を浮かべる──


なぜなら…………入って来た新たな護衛の人達は、同じクラスメイトの藤林 智佳と尾関 仁奈、榊原 真希、近藤 舞、吉田 心、高橋 紗奈の6人だったからだ。


6人は私服姿で、学校とは大分雰囲気が違うけど緊張しているのか顔が少しだけ引きっているようだ。


「え!?え?なんで?」


俺の疑問は隣にいる雫と夜依も思っているはずだ。


「どうも、優馬くん。」


藤森さんが、代表して口を開く。

この6人とは同じクラスメイトではあるけどそこまで積極的に話した事がなかった。


ただ、全員は頭が良いという事は知っている。クラス順位トップ10付近に常にいるしね。


「え?もしかして、国からの俺の護衛って……」


一応聞く。答えは分かっているけど…


「はい。特別男護衛官の私達です。」


やっぱり……そうだったか……

ん……


「特別男護衛官?なにそれ?」


見た事も聞いた事もない単語だったのでついつい口に出してしまった。


「では私から説明しますね。」


藤森さんの隣にいた尾関さんが言う。


「特別男護衛官は秘密裏に作られた対象の男性を護衛するための役職で、仕事内容はシンプルで男性を影から見守り迫り来る危険から守る事です。」


へぇ…そんなのがあったんだ……

……待てよ。という事は俺が外にいる時のほとんどは彼女達は裏で見てたって事か!?


そう思うと少しだけ恥ずかしいな。

これからは外にいる時は常に誰かに見られていると思う事にしよう……


それと……


「それって俺にバラしちゃダメなんじゃないの?…極秘だったんでしょ……?」

「優馬様は特別男護衛官よりも極秘の男会をテレビ放送し、男会の事、男性の事を全国民が知るきっかけになりました。なら、特別男護衛官も別にバラしていいんじゃないかという国の判断です。」


あ…そうすか。

まぁ、男会や男の事を世間がもう知ってるんだったら別に特別男護衛官の事もバラしたとしても国的にはさほどのダメージにもならないしね。


「では、これからよろしくお願いします。」

「「「「「お願いします!」」」」」


藤森さんの挨拶の後に残りの5人が声を揃えて頭を下げた。


別に構わないんだけどさ。知り合いが守ってくれるっていうのなら多少は勝手が聞くと思うし、連携とかもすぐに取れると思う。


だけど気になる事がある。


「藤森さん達はどこに住むの?」


この家には流石に6人追加はキツイぞ。

誰かが2人部屋になってしまうのが確定してしまう。


「その事でしたら大丈夫です。常に私達全員が優馬くんの事を護衛している訳じゃなくて、交代制で護衛しているので休みの人は自宅に帰りますから。」

「なるほど、6人である利点を活かしているな。分かった。よろしくお願いするよ。」


俺は立ち上がり一人一人と握手をした。


握手をし終わり、藤森さんが何かを思い出したようだ。


「そうでした、優馬くんにと学校から言伝があります。」

「学校から?なんだろう?」


俺的には身に覚えのない事だと思うけど?


「優馬くんと先輩の大地さんはしばらく学校に来ないで下さいという事です。」

「え!?な、なんで?」

「優馬くんは顔や家族、更に学校まで特定されてしまい、学校には毎日多くの電話、学校に押し掛けてくる人が大勢いてその対応にかなり困っているそうです。そこで事の発端である優馬くんが学校に来てしまったらもっと、事は大きくなってしまいます。ですので、しばらく休学中と言う事になるそうです。学校から出される課題をきちんとこなせば出席という事にするそうです。」


う……まじか……


「男会の事だったら何も言えないや…それで、雫と葵と夜依は大丈夫なの?俺と一緒の特別休学っていうやつになるの?」

「3人は優馬くんほど情報は流れておらず、女性ですので大丈夫なはずです。それに、何があってもいいようにしばらくは私達も護衛しますので。」


大丈夫と言われても……やはり心配なのだ。

俺は3人の事を見て大丈夫か訴える。


「……優馬、あまり心配しないで大丈夫よ。」

「そうですよ!!私なんか狙う人なんていませんから。」

「大丈夫よ。」


3人はそう言う。


「分かった。だけどもし何かあったら、ちゃんと守ってください。お願いします。」


俺は敬語で6人に頭を下げた。


「こちらこそよろしくお願いします。」


藤森さんは答えた。

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