第50話 林間学校の説明
色々と大変だった1日から数日後……俺はいつもの充実した日々を過ごしていた。部活もマネージャー業をしっかりと行い、勉強も怠らず取り組み、雫とのイチャイチャも忘れず過ごした。
──そして今日は林間学校の説明などが授業で行われる。
「では、本日は林間学校の説明と林間学校の実行委員1人をクラスから決めたいと思います。」
奈緒先生は続けて言う。
「それでは先に説明からしておきますね。
来週に行く林間学校では、クラスや学級での団結や結束力などを深める大切な行事です。多くのイベントを用意しているので皆さん全力で楽しみ、思い出に残る行事にして下さいね。」
奈緒先生がそう言うと、クラスの皆は盛り上がった。俺もすごく楽しみにしていた学年行事なので、今からワクワクが止まらない。
「それでは早速、実行委員を決めたいと思います。
やりたいと希望する人は挙手をして下さい。」
うーむ。どうしよう……本音ではやってみたい。だけど実行委員は1人で責任重大だし、最近は色々な仕事を任されているので流石に今回は遠慮しておこう。俺はぐっと上がりそうになった右手を左手で抑え込む。
周りの女の子達も手を上げる様子は無かった。皆、好き好んで実行委員はやりたくないのだろう。
「──あ、言い忘れていました。生徒会に所属している2人は実行委員の皆さんと共に一緒に仕事を行ってもらうとの事です。」
「「はぁ!!??」」
なっ!?嘘だろ?
俺と同じ生徒会に所属する夜依は驚きの声を同時に上げた。
「あの!それっておかしいと思います。生徒会は林間学校には関係ないですよね?何かの間違いでは無いですか?もう一度確認してみて下さい。」
一瞬、顔が引つる夜依だったが、すぐにいつもの冷静さを取り戻し、審議を始める。
だが──
「──ちょっと待ったー!」
教室外からの大声で夜依の審議の声は打ち消されるのであった。
クラスの全員が状況を理解出来ない中、圧倒的強者のオーラを全開に放ちながら……1人の女性がクラスに入って来る。
ま、マジかよ……どうなってんだよ。
そう、その人物とは……現生徒会長の空先輩だった。
「どうしたんですか生徒会長?今は授業中ですよ?」
誰も一言も喋れない中、奈緒先生が空気を読んで空先輩に聞いた。
「それは、すみません。生徒会で林間学校についてのちょっとした説明がありまして……」
「そう、ですか……まぁ構いませんよ。でも次からはしっかりと許可を取ってくださいね。あなたも生徒なんですから。」
「はいはい、分かりましたよ。次からはちゃんと気を付けますよ。」
どういう繋がりかは分からないが……奈緒先生と空先輩は仲が良さそうに見えた。
俺は奈緒先生と空先輩の一通りの会話が終わるまで待ち、状況を見計らって声を出した。
「あのーすいません、ちょっといいですか?」
「なんだ優馬?」
空先輩が俺の席までわざわざ近づいて来る。
先輩が後輩を威圧しているかのような雰囲気だが、俺は頑張って声を出す。
「──その、生徒会からの林間学校の説明って何なんですか?それに、生徒会が林間学校を手伝うのは流石に激務だと思うのですが……?」
俺の意見に夜依もうんうんと相槌をうつ。
だが……パワハラ先輩は、
「お前達の仕事の大半は私が代わりにやってやってるだろう?」
「ま、まぁ、そうですけど。でも事務作業とか1年生のみの仕事とか……色々とやってるんですよ?それに部活にも入ったばっかりでまだまだ慣れないですし……」
案外1年生とは大変なのである。だから正直、仕事は増やさないで欲しい。そうじゃないと……心の底から林間学校を楽しめなくなる可能性があるのだ。
「そんなの分かってるぞ。」
「だったら!」
ついつい言葉が強くなってしまう。
「──だがな……この林間学校はとても大切な行事なんだぞ?だから我が生徒会が実行委員と協力し、より良い林間学校にさせるのだ。」
「は、はぁ……」
「だがな、今回1年の生徒会に連絡が無かったのは、前回林間学校を行った2年の生徒会のヤツらのミスのようでな。だからその尻拭いの為にわざわざ説明をしに来てやったと言う訳だ。」
……なるほどな。という事は元から俺達生徒会は林間学校を手伝わなきゃならない運命だったようだ。
俺の中で考えていた林間学校を全力でより良く楽しむプランが音を立てて崩れ落ちた。
「分かりましたよ……」
俺は渋々了承する。夜依も項垂れてはいたが……異論は無いようだ。生徒会を選択した時点で決まっていた運命なのだ。抗いようがない。
「「はぁ……」」
俺と夜依のため息が重なった……ような気がした。
「それではな、私はこれから違うクラスの生徒会にも同じ説明をしなければならないからな。」
そう空先輩は言い颯爽と立ち去るのであった。
本当に嵐みたいに豪快で男勝りな人だ。
絶対に口には出さないが、そう思う俺なのであった。
☆☆☆
「──さぁ、皆さん気を取り直して、授業を続けますよ。」
空先輩が去り、静まり返ったクラスの中、奈緒先生は普通に話し始める。
「では、林間学校の実行委員を1人決めたいと思います。」
そう奈緒先生がもう一度言うと、クラスのほぼ全員が挙手をした。その光景は圧巻であった。
さっきまではやる気すら感じられなかったのに、今では目に闘志が宿る程に、やる気に満ち溢れていた。
どうやら、林間学校の実行委員になれば、俺と話せる機会が増えるかもしれない……かららしい。
俺や夜依が項垂れる中、ジャンケンでの壮絶なバトルの末に実行委員が決まっていた。
「では、明日は実行委員が集まっての実行委員会があるので忘れずに行ってくださいね。もちろん、生徒会の2人も忘れずに。」
そう奈緒先生が言ったのを流し聞きしつつ、憂鬱な気持ちの俺であった。
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