第191話 橋の破損の犯人は?

「さぞかし業務が溜まっているかと思えば…。」

「我々の存在意義が疑われますね…。」


業務が滞っているだろうな…という憂鬱な気持ちで出勤してみたら、いつも以上にスッキリと片付いていた。


「いつも無理させておるからな!頑張ったのじゃぞ!」

「病み上がりで無理させられませんからね。」

……不審である。

フェンリル達が妙に艶々でウキウキしている。


「エマに応援されてな!頑張らざるをえないよな!」

ウキウキなモレクの一言で謎が解けた。

張り切る訳だ。



「それで、すべての原因ともいえる橋の破壊の件ですが…。」


悪魔族と獣人族の若者たちが意気投合し、橋のたもとの酒場で酒盛りを始め、無茶苦茶に酔っ払って良い気持ちで暴れたことが原因で、隣国である獣人国との国境にかかる橋が崩壊しそうになった。


モレクの活躍で崩壊する前に修復が完了したが、間に合わなければ大災害となるところだった。

橋の破損に関わった者たちは魔王軍付属病院に収容され、アルコールが抜け次第、事情聴取が始まった。


「聴取は進んでいるのでしょうか?」

「それが1人だけ黙秘を貫いていて……持ち物も個人を特定するものを所持していなくて……。」

「悪気は無かった、反省しているというばかりで…。仕方ないので顔認証や声紋、指紋などから身元を特定しようとしています。」

「黙秘していますが、身元が判明するのも時間の問題ですよ。」

「そちらは、まだ動きは無さそうなので、通常通りの業務を頑張りましょうね。」



「国内の照会結果がでました!」


しかし国内の人物で一致する者は居なかった。

居なかったので橋の向こう側にある隣国に照会した。すでに身元の判明している者の数人は隣国である獣人国の者だったので、残る1人も獣人国の出身である可能性は高い。



「身元判明まで 、もうしばらくかかりそうですね。」

「仕方ありません。」

「身元判明した者達は、すでに処分が決定しています。罰金と3年で100時間の社会奉仕です。」

「黙秘している者の処分は、さらに重いものになるでしょうね。」



魔界ランドの社会奉仕は、3連休の真ん中など、ダメージの大きい日程が必ず潰れるようにスケジューリングされるため、厳しい罰として有名だった。

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