第192話 土下座はおやめください!

「ふう…どうしても名乗れなかった……。」


酔いが覚めて愕然とした。

まさか隣国で、酔って暴れて破壊活動までしてしまうとは…。

自分が行方不明で連絡もつかず…母国はさぞかし混乱していることだろう。



黙秘を続ける容疑者が苦悩しているころ…。


「獣人国からお返事が来ました!」

隣国からのメールに最初に気づいたのはデイモンだった。


「それにしても随分早かったな!」

「こちらからの照会に即答ではないか?」

「間違って返信ボタンをクリックしてしまった可能性が高いですね。」

「そうだな!気づいたら慌てるだろうな。」


全員が隣国である獣人国からの返信メールを開封した。


「……。」

「……。」

「……。」

「……。」

「……。」


全員が黙った。

間違っていなかった。

間違って返信していなかった。


「すぐに来ると言っているな…。」

「出迎えの準備を!」

「間に合わんぞ!」

「とにかく転移ゲートに急げ!」

フェンリル化して四つ足で走るカールとデイモン。後を追うモテないトリオ。


「出迎えだけは間に合ったようですね…。」

転移ゲートがキラキラと光り、稼働を知らせる。

隣国の使者達が姿を表した。

「魔界ランドへようこそ。」

人形に戻るのを忘れたカールフェンリルが威厳を取り繕いながら歓迎の言葉を述べる。



「この度は、たいへん…大変、申し訳ございませんでしたーーっ!!」

使者達が一斉にジャンピング土下座した。

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