第152話 初詣に行きます!

「エマちゃんの着物、良い色ねえ。」

からし色の着物がエマの赤毛にぴったり合っている。寒いので、その上から紺色のケープも羽織っている。

「ケープと手袋もデイモン君の手編みなの?」

「はい、源氏の里の冬はけっこう寒いですから。足元は足袋に草履ではなくてムートンのブーツです。」

「あら可愛い、ハイカラね。」

「ちよ子さんの着こなしは流石ですね、朱雀さんやキース君のスタイリングもちよ子さんですか?」

「そうなの、着物は好きだから。」

結局カールとダイアナとヒース以外の全員が和服だ。


「じいじとダイちゃん、とっても素敵です!」

「ありがとうエマちゃん。」

文化的にカールやダイアナの故郷の民族衣装はロシアのサラファンやサーミのコルトのようなものかな……と想像するが、カールの衣装はジョージア(グルジア)のチョハっぽい。ダイアナの衣装もジョージア(グルジア)のアークリグっぽい。寒さに対応しているうちに、こうなったらしい。


「ヒース君の衣装はエルフの民族衣装ですか?」

「うん、ポンチョというんだ。防寒に優れているんだよ。」

「とっても似合います、かっこいいですね。」


「エマちゃん、パパもカッコいいだろう?」

「はい!パパも朱雀すざくおじちゃんもカッコいいです。」

「父さん、カッコいいを強要するのはどうかと思うよ…。」

かおるが呆れ顔でひかるを窘める。


「ママも綺麗です!」

エマがぼふっ!とレティに抱き着くとレティの尻尾が嬉しそうに揺れる。レティに撫でられてエマも嬉しそうだ。


それをみたひかるが壊れた。

「エマちゃん!」

カモン!と言いながら、ひかるがエマに向かって両手を広げる。

「義姉さん、悪いんだけど父さんにも抱き着いてあげて。」

かおるに促されて抱き着くと、ひかるがエマを抱き上げてくるくる回る。

ひかるにこんな一面があったとは…知らなかったよ。」

「私も朱雀すざくが猫好きだったなんて知らなかったわ。」

ジジ&マリーの可愛らしさに陥落した朱雀すざくが二匹を抱いて離さなかった。


「冷たいです!」

参拝前の手水でエマが震えた。

「参拝の作法ですから我慢してくださいね。賽銭箱にお賽銭を入れて、二礼二拍手一礼の作法で拝礼し、会釈をしてから退きますよ。」

デイモンに教えられた通りに拝礼する。

両手をきちんと合わせながら心を込めて祈る。


――― 皆のおかげで16年ぶりに起きました。魔界ランドでの生活は楽しいです。たくさん植物を育てて早く大きくなりたいです。


目いっぱい欲張ってお祈りしたらエマに加護を与えてくれた神々が権現した。

「エマ!」

久久能智くくのち様!」

久久能智くくのちがエマを抱き上げる。

「元気そうだね。」

「はい!久久能智くくのち様も元気でしたか?それにニンサル様も!会えて嬉しいです!」

「久しぶりね、エマ。とても可愛らしいわ。タレイアも一緒に権現できたら良かったんだけど…あの子、冬はだめみたい。」

「開花の女神だからね、春になれば起きると思うよ。」

「それよりエマ、たくさん植物を育てたいと祈るとは感心ね。」

「さすが僕たちのエマだね。」


「ニンサル様、宗派?宗教?が違いますけど、ここで権現しても良いのですか?」

「細かいことはいいのよ!大切なのは祈る気持ち。宗派の違いなんて些細なことよ。」

久久能智くくのちとニンサルは、さんざんエマを撫で回し、エマに山ほど青野菜を渡して帰っていった。


「ニンサル様は青野菜の貴婦人て呼ばれているのです。今夜はお鍋ですね。」

ニンサルの青野菜は美味だった。

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