第138話 きょうだい水入らず
「サアたんのセーター、すごい柄でしたね。」
「子供の頃のいろんなこと、思い出しちゃったわ・・・。」
サタンのアグリー・クリスマス・セーターにドン引きな3人に対し、サタンとルーシーが
「このセーターを楽しめないなんて、まだまだ子供ね。」
とドヤ顔だったのも、地味にイラッときた。
注:アグリー・クリスマス・セーター(Ugly Christmas Sweater)とは英語圏の習慣で、クリスマスに特有の柄をデカデカと編み込んだセーターのこと。色は緑か赤。悪趣味であればあるほどよいとされる。子供にとっては恐怖の対象だが大人は楽しんで着ている。
「私、大きなトナカイが編み込まれたサマーセーターを貰った時、ありがとうって言ったけど着るのが嫌で仕方なかったわ…。」
「僕のは『わりいごはいねぇが(悪い子はいないか)』ってロゴと出刃包丁を振りかぶった“なまはげ”がデカデカと編み込まれていたっけ……。クリスマス関係無いし……。」
「エンマのは雪だるまでした。」
「エマちゃんは可愛かったわね。」
「そうだねエマに似合っていたよ。」
「………。」
アグリー・クリスマス・セーターが似合うというのは褒め言葉ではない。しかし全面的に子供なエマには残念ながら似合っていた。
逆に子供ながら大人っぽい危うい美貌をのぞかせるニナはアンバランスさが目立ってしまって似合わなかったのだ。
むっすー!
なんとなく当時から二人よりも子供じみていたと指摘されたようでエマの機嫌が急降下した。ふくれっ面も可愛らしいが、このままではクリスマスが台無しだ。
「エマちゃん、今年のクリスマスケーキはテオがクリスマスプディングじゃないものを用意してくれたんですって!」
楽しみよね!とニナが話題を変える。
「本当ですか!?」
エマがコロリと機嫌を変える。
いつまでも怒っていないところがエマの長所だ。
「2人ともクリスマスプディングは好きじゃないみたいだし、クリスマスのご馳走の後では重たいからね。イタリア風にパネットーネを用意したよ。素朴な菓子パンだけどね。」
いよいよクリスマスディナー、主役はロースト・ターキーだ。もちろん色とりどりの野菜も美味しい。ジャガイモ、ニンジン、インゲン、芽キャベツ、パースニップ。
こんな日は苦手な野菜も好き嫌いを言わずに食べてしまう。雰囲気、大事!
グレービーソースも特別美味しいものじゃないけど、こんな日に食べると美味しく感じる。
「美味しかったです!」
「ごちそうさま、テオさん!」
「美味かったんだぜ!」
「綺麗に食べたね、嬉しいよ。」
デイモンに厳しいテオだが、エマやジジ&マリーには甘い。
「テオ君!クリスマスのケーキください!」
「はいはい、緩めに泡だてたホイップとフルーツを添えて…さあどうぞ。」
「わあ!」
ドライフルーツ入りの黄色い生地に白いクリーム、色鮮やかなフレッシュフルーツが映える。
「美味しいです!」
「私もクリスマスプディングより、これが好きだわ。」
妹たちが喜ぶなら来年もまた作ろう。
いや来年だけじゃない、永遠にだ。エマが嫁に行く日など来なければいい。
「ワフッ! U^ェ^U エンマー 💕」
デイモンの能天気な顔が浮かんだが、頭を振って打ち消した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます