第132話 テオ君のバカ!

「おみやげ、ありがとうエマちゃん。」

「とっても楽しかったです!」

ストロガノフの里への小旅行から帰り、テオとニナの家におみやげを渡しにきた。

「楽しかったけど寒かったんだぜえ。」

「デイモンさんの服に入れてもらえて助かったわ~。」

寒さを思い出したジジ&マリーのヒゲが下を向く。

「デイモン君は優しいわね、一緒に旅行に行くには最高のパートナーね。」

ジジ&マリーとエマがうなずく。


「もし僕が一緒なら、僕だって同じようにするさ。」

テオがちょっと不機嫌だ。

「そうよね!テオも頼もしいわよね!演奏旅行に付いてきてくれた時も、いつも私のわがままに付き合ってくれるし、アクシデントは私が気づかないうちにテオが解決してた…って後から知ったことも一度や二度じゃなかったわ。」

ニナがうっとりと愛情を込めてテオを見つめる。

「さすがテオ君ですね!」

「ニナのためなら当然だよ。もちろんエマのためにだって惜しみなく行動するよ。」

妹たちの賞賛が誇らしい。

もちろんエマへのフォローも忘れない。


「…それよりエマ。」

テオが真剣な顔でエマに語りかける。

「な、なんですか?」

テオの鬼気迫る様子にキョドるエマ。

「…みたよ、カールさんたちのオシャスタグラム。」

なーんだ、そんなことかと気の抜けるエマとニナ。

「私も見たわ!ジジ君とマリーちゃんを胸元に入れたデイモン君に寄り添うエマちゃんが可愛くて💛」

「それだよ!」

びくっ!

いつもより声の大きなテオにエマが強張る。

「ちょっとベタベタしすぎだろう?いくらデイモンが番だ番だと主張しても、エマは番の習慣のない天使族なんだよ。エマの将来を縛るようなデイモンの主張は認められない。これ以上誤解を与えないように、一緒に行動するのは控えた方がいい。」


ニナとエマの顔がくもる。

「テオはエマちゃんとデイモン君が仲良くすることに反対なの?」

「まあ、ぶっちゃけ反対だな。」

「エマちゃんの将来はエマちゃんのものよ。」

「もちろん分かってる。でも、このままでは勘違いされてしまう。少し距離を置いた方がいい。なんなら今日からでもここに住めば良いさ。」


テオとニナのやり取りを黙ってきいていたエマの怒りが爆発した。

「…楽しい気分が台無しです!テオ君のバカ!」

ジジ&マリーを引き連れたエマがテオとニナの家を飛び出した。

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