第94話 ダイアナのふるさとグルメ

「ヴィネグレット!嬉しいわ、スビョークラが食べたかったの!!」

※ スビョークラはビーツのこと。


ダイアナの言うヴィネグレットはフランス料理のサラダソースとしてのヴィネグレットソースではなく、ロシアのヴィネグレットサラダだ。スビョークラ、じゃがいも、ニンジン、玉ねぎ、ピクルスなどをサイコロ状にカットして、全部を混ぜて塩コショウで味を調え、味がなじむまで休ませて出来上がり…というカットするのが、ちょっと面倒なサラダだ。嬉しいことに缶詰ではなくフレッシュなスビョークラで作ってくれたようだ。

「ビーフストロガノフとカーシャもどうぞ。」

もちろん、ウオトカもぐいぐい飲んだ。



――――――― その頃カールは・・・。

めそめそしながらトンカツを食べていた。

「ダイアナさんには内緒で・・」と唄子さんが300g用意してくれたことにも気づいていないようだが、「気づかなくていいんだよ、食欲がなくなるよりもずっと良いよ。」と唄子さんが優しい。



翌日は窓や壁の隙間を塞ぎ、保存食を作った。

実家の保存食は酢漬けと塩漬けが基本で、今日はキャベツ、人参、キュウリ、トマト、大根、玉ねぎ、ナス、キノコ類などを漬けた。材料の野菜は別荘ダーチャで採れたものだ。


まずは保存用の瓶を大量に煮沸消毒する。

殺菌済の瓶に野菜を詰めて、塩と砂糖、ローリエ、胡椒を粒ごと、にんにくを入れたお酢のマリネ液をひたひたに注いで蓋をして冷暗所で保存。好みの漬かり具合でインベントリに収納すれば、いつでも美味しく食べることができる。

もちろんザワークラウトもたっぷり漬けた。


「あとはリンゴの塩漬けを作って今日は終わりにしよう。」

リンゴの塩漬けはこの地域で伝統的な発酵食品だ。

青くて酸味の強い実とクロスグリの葉桜の葉ミントの葉を瓶の中で重ね、重しを乗せて殻、塩とはちみつを加えたマリネ液を注ぎ入れて涼しい場所で発酵させる。

たくさん作って親戚におすそ分けしたりするので、今年も大量に仕込んだ。

中には唄子さんやヒカルが無表情になりそうなものもあるがダイアナの好物ばかりなので、ウオトカと一緒に持ち帰るつもりだ。


「嬉しいわ!オリヴィエ・サラダね!」

オリヴィエサラダは、肉と野菜をさいころ状にカットしてサワークリームやマヨネーズ、ハーブで和えたロシアのポテサラだ。

「うん、みんな大好きだから沢山作ったよ。」

「ボルシチも美味しい!」

もちろんサワークリームたっぷりだ。

「それに一仕事終えた後のウオトカは美味しいわね!」



――――――― その頃カールは・・・。

めそめそしながら“なべ焼きうどん”を食べていた。

エマの好きな海老天、カールの好きな鶏肉、デイモンの好きな半熟卵、ジジ&マリーの好きな蒲鉾入りだ。

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