第41話 メイの三つ子

「いいお天気ですね!」

デイモンと手を繋ぎ弾むように歩くエマ。

今日はカールとダイアナ、テオとニナと一緒にメイの赤ちゃんに会いに行くのだ。

産休で休んでいるメイは三つ子を生んだ。男の子、女の子、女の子の三つ子でエマ達と同じ組み合わせである。

「エンマ、メイちゃんの赤ちゃん達を可愛がりますよ!だってエンマはお姉さんですからね!」

エマの鼻息が荒い。

滅多に子供生まれない世界で、いつまでも一番のチビであることが不満だったが、もう一番のチビではないのだ。


「メイちゃん!久しぶりです、会いたかったです!」

メイに懐いていたエマがメイに抱き着く。

「エマちゃん!私も会えて嬉しいわ、ゆっくりしていってね。」

「ありがとうです。あのね、メイちゃんにお土産です。エンマとヒース君のドライフルーツとかナッツとかで唄子ちゃんがグラノーラを作ってくれました。」

どうぞとメイに手渡す。

「産後の栄養補給に良いそうですよ。これは僕の作ったおくるみとスタイです。」

三つ子なのでスタイなどはいくらあっても良いだろう。

カールたちもお土産を渡したところで子供たちが起きたようだ。

「かわいい鳴き声がします!」

エマが羽をパタパタさせ、落ち着かない。デイモンも尻尾をぶん回しているし、カールとダイアナ、テオとニナもそわそわしている。

「カナとリンでーす。」

おおーっ!

キュウ!キュウ!と泣く子犬を抱いたメイの登場に歓声があがる。

「わあ、かわいいです!」

ばくっ!

子犬たちに向けて伸ばしたエマの手を焼きもち顔のデイモンが咥えた。

「モンたん!」

「こ、こら!そんな小さな子に焼きもちは止めなさい!」

テオ方面から漂う冷気にダイアナとカールが慌てて反応する間に、テオが水球でエマの手を洗う。


「私が柴族で才蔵さんがニホンオオカミ族だから子供たちは狼犬族になるみたい。見た目には似たようなものだけどねー。こちらの赤茶の子が末っ子のカナ、3人の中で一番身体が小さくておっとりしているの。」

「ぷふ。エマちゃんみたいね!」

ニナが揶揄う。

「こちらの茶金の子がリン、気が強いけど泣き虫なの。」

「ぷぷ。ニナちゃんみたいです。」

エマもやり返す。


子供たちを抱き寄せたエマとニナの顔がゆるむ。

「よかったねー、ニナお姉ちゃんとエマお姉ちゃんに抱っこしてもらってー!」

ピクン。

エマの羽が反応した。

「カナちゃん!エマお姉ちゃんですよ!」

きゅう。

「かわいい~!」

メイと才蔵の子供達はメイに似て激カワだった。魔界ランドのアイドル間違いなしの可愛らしさだ。

エマとニナが優しく撫でるとカナとリンが気持ちよさそうに目を細める。

「ねえねえ、メイちゃん。」

「なあに、エマちゃん?」

「三つ子だからもう一人いるのでしょう?今は寝ていますか?」

「そうなの、小太郎は眠っていたから起こさなかったの。いまは才蔵さんが側について・・・。」


くう。

声の聞こえた襖の方をみると、才蔵の足元で険しい顔の子犬が仁王立ちしていた。

「・・・・そっくり。」

「そうなの!小太郎ったら才蔵さんに似ているでしょう!みて!あの眉間の縦皺!」

小さいのに才蔵さんにそっくりで可愛いの!とはしゃぐメイ。

ヨタヨタと近づいてくる渋すぎる幼児をテオが掬い上げる。

「やあ、君もお兄さんなのか。可愛い妹二人に恵まれるなんて僕たちは幸せ者だね。」

テオが無理やりいい感じにまとめたが、子供の頃からあの顔・・・とエマ達は心配そうに顔を見合わせた。


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