魔界ランドで暮らしています!

第17話 遊園地デート

「ヘルランド?」

デイモンが週末にお出かけしようと言い出した。

ヘルランドは、スカンディナビア神話に登場する地獄がモチーフのテーマパークだ。

もちろん行きます!


待望の週末、デイモンとエンマはヘルランドにやってきた。

今日のお洋服もデイモンの手作りだ。

珍しい子供のお客様とあって、スタッフが超親切だ。天界ほどではないが、魔界でも子供は滅多に生まれない。今日ヘルランドを訪れている子供はエマ一人だった。エマがトイレに行きたそうにすると、近くにいる女性たちが競うように付き添ってくれるし、行列に並んでいると、アトラクションを楽しむ裏技などを教えてくれる。


ぐう~。

はしゃぎ過ぎてお腹が空きました。


レストランに入ると、ここでも子供様がご来店!とばかりに歓迎された。

注文通り小さめに作ってくれた上に、可愛らしくデコレーションまでしてくれている。

「ダモ、写真に撮ってください。あとでオシャスタグラムにアップしましょう。」

もちろんルーシーやニナ、テオと相互フォローしている。


こぼさないようデイモンがバーガーを紙に包んで渡してくれた。がぶっと噛り付くと肉汁が溢れる、美味しい!デイモンが頬についたソースを拭ってくれた。


ランチの後は園内の芝生で一休み。フェンリル化したデイモンが抱っこして背中をポンポンしてくれる。

むう、ダメです。背中ポンポンは眠くなってしまうからいけませ・・・、すうすうすう。


予定通りお昼寝してくれたエマを自らの毛皮で包み込む。

これで夜のパレードまで持ちそうですね。

2時間ほどで起きたエマに水を飲ませて背中をポンポンしていると、元気を取り戻してきたので、次のアトラクションに誘う。


「ふう、楽しかったですね!また来ましょうね!」

「そうですね、また来ましょうね。エンマはお腹空いていませんか?夜のパレードの前に少し休憩しましょうね。」

「少し空いてます、でもあんまり沢山は入らないと思うの。」

アトラクションの合間にチュロスやアイスを食べているのです。

えへへ今日は特別です。


「では軽く食べましょうね。おすすめがあるのですよ。」

抱っこでレストランに移動、注文はデイモンに任せた。

「ふおおおお!これがドラゴンの火炎スープとヴァルハラのパン!」

「赤いのは炎ではなくトマトですけどね、ピリ辛でエンマの好きな味だと思いますよ。」

「いただきます!・・・うん、美味しいです!具が山盛りだけど美味しいから全部食べちゃう!パンも美味しいですね!」

あっさりとした野菜ときのこのトマトスープは量も加減してもらったのでちょうど良い。


ゆっくりと食べ終わると、パレードの時間が迫ってきたので移動すると、「抱っこでも見えにくいだろう、前においで」と誰からともなく言い出し、どんどん前に押し出されてしまった。

「いえ、後から来たのにそれはいけません!」と2人で固辞すれば、「ガキが生意気言うな」「そうだそうだ」「ほら始まるぞ」「パレードに集中しろ」と黙らされた。

「ほら、お嬢ちゃん、手を振って!」「お嬢ちゃん、花火だよ!」次々と声を掛けられ、言われるままに手を振っているうちにパレードが終わった。

「みなさん、ありがとうございます!エンマ、とっても楽しかったです!」

頬を染めてお礼を言うと、「いやあ、あんなに楽しそうにされちゃあな!」「小さなお手手を一生懸命振るのはいいな!」「一緒に見物できて楽しかったよ」と声をかけられた。名残惜しかったが、小さい子を遅くまで引き留めちゃいけないねと背中を押された。



「さ、エンマ、最後にエンマに熊さんを買って帰りましょうね。」

「熊さん?」

「デートの記念のプレゼントですよ。」

テーマパーク公認テディベアの大きなぬいぐるみ売り場に抱っこで移動する。自分よりも大きなぬいぐるみが一面にディスプレイされた様子に声も出ない。

「さ、エンマのお友達を連れて帰りましょうね。」

「いいの?」

「もちろんですよ。」

「ありがとうダモ!」


最大サイズのぬいぐるみを購入する客が他にいなかったため、ゆっくりと選ぶことができた。

「この子です!」

エマの選んだトッフィー(公認ベアの名前)を購入してゆっくりと帰る。

ヘルランドの出口に繋がる通路はだんだんと暗くなり、人が少なくなる。

「このトッフィーは今日からエンマの親友ですね、今日がトッフィーのお誕生日ですよ。」

「ありがとうダモ、大切にしますね。」

余韻を引きずりながら出口通路を進み、程よいタイミングで転移で帰る。


「おかえりエマちゃん、モンたん。」

「ただいま!じいじ」

「楽しかったかい?」

「うん!」

「疲れたじゃろう、今日はお風呂に入って休みなさい。明日ゆっくりお話を聞かせておくれ。」


翌日、お土産を配って回った。もちろんトッフィーも一緒だ。

デイモンが扉の影に隠れて覗いている。

「お土産ありがとう。」

「大きな熊さんねえ。」

「トッフィーです!ダモが買ってくれました!」

テディベアの後ろから両手で脇の下を持って「見て!」と見せてまわる。

「良かったわね、エマちゃん。」

そわそわとこちらを覗くデイモンに気づいたルシファーがエンマに問いかけた。

「デイモン君とのお出かけは楽しかったようね?」

それまで元気いっぱいだったエマが急に赤くなってモジモジし始めたので、「あらあら?」と皆が前のめりになった。みんな恋バナが大好きなのだ。

隠れているデイモンの耳が巨大化する。


「・・・あのね、・・・ダモがね、・・・・・ママみたいだったの。」


静かにデイモンが崩れ落ちた。

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